讃観世音菩薩頌和釈・・4/20
風浪破舩
「海潮風浪出音聲 摩竭巨魚皆震激 若人船破誤落中 念彼觀音獲安隱」
大海の潮さす音すさまじく悪風吹いて浪あがる音の荒ければ摩竭巨魚皆震ひ激る。若し人あり船にて渡るに舟の破れて誤って海中に落ちたとする時に観音を念ずれば安穏なることを得と。
洛の建仁寺の東鋭といふ僧は産所の薩摩へ往んとて摂津より舩にて西海へ出でしが忽ちに逆風の吹いて舩は走て岩に當り砕けて散々になり乗り合いの人々は浪間に溺れて死にけり。東鋭は心に観音を念じ口に名を唱て砕けたる船板に捉付(とりつき)て浪にゆられ浮かんで漸くに讃岐の浦に漂ひ流ゆくを小舟の舩人が見つけ助けけるとなん。