妙法蓮華経秘略要妙・観世音菩薩普門品第二十五(浄厳)・・23
四には大自在天身
「應以大自在天身得度者。即現大自在天身而爲説法。」
「大自在天」とは色界頂の摩醯首羅(まけいしゅら)なり。新譯には摩醯湿伐羅(まけいしつばら)、此には大自在と云。樓炭經には阿迦尼吒( あかにだ)と云(大樓炭經卷第一閻浮利品第一「過是已有須陀尸天。過是已有阿迦尼吒天。」)。此には質礙究竟(しつげくきょう)と云(質礙とは色を云なり)。華厳経には色究竟と云(大方廣佛華嚴經如來光明覺品第五「・・百億梵天。百億光音天。百億遍淨天。百億果實天。百億色究竟天。此世界所有一切悉現。」)。真言經には是を毘舎遮摩醯首羅と云(大日經疏演奧鈔第十四「又五那含之上。十地菩薩之下。有毘舍遮摩醯首羅」)。此の天は軍荼利明王の教化を受けて佛道に入れりと云へり(理趣釈經)。義疏に大論の第二を引いて曰、白牛に騎って八臂三眼なり。是諸天の将なりと云へり(大智度初品中婆伽婆釋論第四「餘人亦知一切諸法。如摩醯首羅天秦言大自在 八臂三眼騎白牛・・・皆是諸天大將。」)。又一義には他化自在天を指して大自在天と云へり。是は先の樂変化天の自化せる境界を娯しむに対して、今此の天は他の變化せる境界を娯しむが故に大の字を加へて、大自在と云ふ意なり。但し大論の第九には、浄居天を過ぎて十住の菩薩の住處あり、大自在天と號すと云ひ(大智度論卷第八大智度初品中放光釋論之餘卷第九「第四禪有八種。五種是阿那含住處。是名淨居。三種凡夫聖人共住。過是八處。有十住菩薩住處。亦名淨居。號大自在天王。」)、十住經には、大自在天の光明は一切衆生に勝れたりと云ふが故に、初の義是宜し。
「而為説法」とは、世出世に渡り四教に通ずべし。