福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

西大寺光明真言会願文

2019-10-02 | 諸経
西大寺光明真言会願文
「南部州大日本国西大寺臥雲の沙門叡尊等至心合掌して異口同音に一切の仏宝に帰依し、一切の法寶に帰依し、一切の僧寶に帰依して而言さく。夫れ不空羂索毘盧遮那大灌頂光明真言は、我本師釈迦如来因位の昔、持念の時、無量無数の光明を放って三千大千の世界を照らし一切の魔軍を降伏し、一切の衆生を済度し、茲に神呪の力を藉りてもっぱら仏果の位を証す。かくのごとくならば則ち 法界智の所依となる也。月大円鏡の輝きに添え、平等性の無垢を得る也。露摩尼珠の色を瑩く。大悲観自在尊はこの真言を説いて以て白毫を眉間に耀かし毘盧遮那如来、又この真言を説て以て宝光を頂上に灌ぐ。なんぞ況や衆罪悉除す。朝日の霜露を消すに相同、巨富満足、還って暁雲の虚空に浮かぶを咲ふ。凡そ厥の利益勝て図るべからざるなり。是を以て青丘元暁大師(新羅の華厳僧)の問答肝に銘じ西方須摩題國(極楽のこと)の往生憑あり。十悪五逆の群類、三途八難の衆生、悉く土砂加持の徳を蒙って宜しく金刹安養の境に託すべし。寔(まこと)に是れ菩薩普賢の願海、如来清浄の法輪なり。茲これに因って七日七夜の光陰を卜し瑜伽瑜祇の壇場を賁(かざ)る。一結衆をして不退行を勤めしめ、去歳より始めて未来際を限る。その意云何となれば、律法中興より以降、勤修内衆の徒を若干の亡霊仏道に増進し兼ねて復かって共に一途に遊び同じく一室に禅せし所、近年の際、策然として已盡きぬ。凡そこの真門に入るの人更に名利を抛つ。この貧道に伴の彙(たぐひ)豈財宝を蓄えんや。没後の追福においては衆中の救助を恃む。中陰一廻の間、懇篤に似たりと雖も、下世累歳の後、頗る以て等閑なり。仍(しきりに)この別行を営んで永代作善と為す。出家の五衆(比丘 ・比丘尼・式叉摩那・沙弥・沙弥尼)八齋戒(不殺生・不倫盗・不淫・不妄語・不飲酒・不聴歌舞・不坐広床・非時食)の輩、幷に此衆等の恩、所當寺の大檀那、再会を期せんが為に浄佛土において名字を過去帳に載する所なり。これに加えて六道四生は皆是劫々の父母、鉄囲沙界世々の朋友にあらざるはなし。彼を思へば楚痛し、我為に慇憂(大いに憂)す。昭々乎(すみずみまであきらか)として六度の舟を艤ひ、遊々焉として三覚(自覚・覚他・覚行円満)の岸に登る。廻施ふたごころなく、出離疑ひなし。まさに今季秋四朝を以て開白の初日と為す。本願聖霊上生の忌辰(本願称徳女帝の御忌9月4日を開白日とした)なり。仏身の相好を資く。釈提桓因(帝釈天)南嚮(南に向く)の良曜(めでたい天体)なり。天眼の照鑒を仰ぎ、于(この)時地形奇絶清涼地を踏むが如し。天時晃朗(あきらか)都率天に昇ること省かなり。霜葉の禅窓に飄るなり。自ら麟喩独覚(キリンの角のように一人で修行する独覚)の観に叶ひ、風松の佛閣を繞る也。遥かに龍葩三会(龍華三会)の期を契る。ここにして善を修するそれ悦ばしからずや。勤行の次第、道場の荘厳、種々の法式、一々瓶録す。その雅趣を守って永く失墜すること勿れ。彼の栴檀林に入る者は花の粧に身を薫ず。崑崙嶺の者は(西山経には 崑崙嶺には西王母がいて宝玉の頭飾を戴く、とする)玉の色歩に随ふ。法の染着またかくばかりなり。弟子等、慧苑の凡藂(ぼんそう・凡人の集まり)禅樹の枯株也。
佛日西にかくれて而も二千餘廻、律炬の消えんと欲するをかかげて、法水東に漸ていくばかりの歳ぞ。戒流の涸んと欲するを本朝に於いて廃失するといえども我寺において聊か興隆す。正法茲に繇(したが)って弥弥繁盛なり。仏法厥(それ)がために専ら恢弘する歟。弟子等上求下化之外、何の慮りか有る。自を忘れ他を救ふ之餘、他の念なし。於戯一日持斉、六十萬載之資量(舊雜譬喩經に「一日持齋。有六十萬歳糧」)矧(いわんや)一生を限るに於いてをや。五戒の功能、二十五神の擁護あり。(秘密曼荼羅十住心論及び佛説灌頂七萬二千神王護比丘呪經にあり。佛説灌頂七萬二千神王護比丘呪經には「世尊説言若持五戒者。有二十五善神。衞護人身在人左右。守於宮宅門戸之上。使萬事吉祥」)矧(いわんや)諸戒を全ふするにおいておや。斯の禁戒律儀を守って光明真言を称念す。誰か随喜せざらんや。誰か慇懃ならざらんや。惣べて而之を言は、仏道の為、法界の為に而て修す。身の為にして修せず。世尊若し納受したまはば、衆生悉く解脱せん。仰ぎ願はくは當寺本尊伏して乞ふ、十方諸仏哀愍聴許し、智見証明したまへ。昔釈苑公七日七夜之齋会、仙鶴忽ちその庭に化現す。今仏弟子七日七夜の慧薫、仏陀定んで影向したまふらん。此の砌に于(おい)て精誠惟同じくとも玄應猶ほ勝らん而己。
乃至發因起縁、成順成逆皆な七朝の善根を以て、将に未世の張本と為す。我等衆生と皆共に仏道を成ぜん。敬白。
文永二年九月四日  西大寺沙門等敬白」

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