「run for money 逃走中」は2004年からフジテレビ系列で不定期に放送されているサスペンス・ゲームバラエティ番組です。早い話がテーマパークやショッピングセンターなどの施設を舞台にして壮大な鬼ごっこです。
さて、10月6日にエクアドル共和国の首都キトで行われたワールドカップ南米予選エクアドル vs. チリ戦の試合会場で前代未聞の鬼ごっこがが行われました。
その中心になったのが、エクアドル代表FWエネル・バレンシア選手(エヴァートン・フットボール・クラブ)です。実はE・バレンシア選手は別れた元妻へ、1万7000ドル(約175万円)の扶養料を支払っておらず、逮捕状が発行され、スタジアムまで警察が逮捕にやってきていたのです。
警察は試合前にスタジアムに到着したエクアドルのチームバスを待ち構えていましたが、チームメートが上手く匿い、E・バレンシア選手はまんまとスタジアム入りすることに成功しました。試合が始まるとA・バレンシア選手の先制ゴールをアシストするなど活躍。しかし、今度こそはと警察はピッチのすぐ外まで詰め掛け、試合終了と同時に連行されるのは間違いないかにみられました。しかし、試合終了10分前。E・バレンシア選手は呼吸が苦しいとピッチに倒れ込んでしまいます。今回の試合会場は標高2850mのキトで行われ、E・バレンシア選手はチームドクターに高山病だと訴え、ピッチで治療を受け、さらに駆け付けた救急車に運ばれて、スタジアムを後にしてしまいました。警察はまたしてもE・バレンシア選手を取り逃してしまいました。ロイター通信によると、その後のE・バレンシア選手の所在は一時不明になっていたそうです。
結局、その後にE・バレンシア選手への逮捕状は取り下げられており、逮捕されることはなかったのですが、一部報道ではE・バレンシア選手の年俸は176万ポンド(約2億3700万円)だそうです。それだけもらっておきながら、「なぜアレだけ稼いでいて養育費が払えない?」と批判が集まることにもなったため、彼は自身のInstagramに詳細な声明を発表しています。
1. 現在、相手の個人的な利益のためだけと思われる訴訟に直面している
2. 娘の母親は養育費を3万ドル(約309万円)に上げるよう要求している。彼女はそれを車や宝石に使ってきた
3. 娘の親権はE・バレンシア側に認められているが、元妻は彼との面会を制限している
4. 元妻は娘の写真を使用してアダルトサイトを提供しているほか、休暇として娘から長期的に離れている
これらの主張が正しいかどうかはともかく、この問題はただE・バレンシア選手がエクアドル警察に追われているだけの騒ぎではないようです。
さて、逃走中と言えば今年の8月20日のこと。読売ジャイアンツを退団したホセ・ガルシア選手が、日本から母国キューバへの帰国の際、の経由地フランスで行方不明になっているそうです。米国ラテン系メディア「エル・ヌエボ・エラルド」は「失踪したガルシアは米MLB入りを目指して、亡命を目論んでいる可能性が高い」と報道しています。
キューバと米国は歴史的背景が原因で国交を断絶しており、現在、国交正常化交渉が始まっているところです。ですから、キューバ国内リーグからのMLBへの移籍はまだ禁じられている状態です。それでもMLBに行きたい場合には、一度、米国以外の他国に亡命し、そこからMLBを目指すという選択肢しかありません。NPBで今年からプレーしている中日ドラゴンズのダヤン・ビシエド選手もそうです。そうまでしてMLBに行きたい理由は、多くの場合キューバ国内リーグの報酬が安く、そしてMLBの報酬が高いからの一言です。
つまり、ガルシア選手の場合、このまま欧州のどこかに亡命し、そこからMLBを目指す可能性が高いというのです。キューバ国内リーグの最多安打に打点王として、今年の4月に鳴り物入りでジャイアンツに入団したガルシア選手はまだ23歳という若さであり、いずれジャイアンツ打線の中核を担っていく存在として期待されていましたが、たった4カ月というスピード退団です。このガルシア選手獲得時点で所属外国人が9人であり、それでも獲得しているのですから、珍しく、育てる展望があったと思われます。そうでなくても、無駄遣いの一言で片づけられるのですが、今回の場合どうやら元々計画的なものだったようです。
入団当所は真面目だったガルシア選手でしたが、食生活に対しては日本の食文化にまったく馴染めず、好き嫌いを繰り返し、事あるごとに「故郷の料理が食べたい。この国の料理はどうかしている」とわがままを漏らしていたそうです。いくら食生活が合わないとはいえ、あまりにも子ども染みていたガルシア選手の言動の数々が、いち早く他国へ亡命するために、そしてジャイアンツを退団するように仕向けていたとすれば合点がいくそうです。
キューバ球界最高の若手外野手と称されていたガルシア選手なら、自分が活躍する舞台はMLBこそが相応しいと考えても何ら不思議ではないですし、実兄アドニス・ガルシア選手も5年前に亡命し、MLBのアトランタ・ブレーブスでプレーしているのも影響があると思えます。
10月6日には同じくジャイアンツのキューバ出身選手、エクトル・メンドーサ選手が3日に羽田発のエールフランス機に搭乗し、日本を離れた後に行方不明になっています。同じくMLBと契約するために、ドミニカ共和国やハイチといった国の市民権取得を目指すものとみられているそうです。メンドーサ選手は2014年途中に入団し、通算5試合に登板したものの、今シーズン限りでの退団が濃厚となっています。
キューバ出身選手にとって、亡命中継点のような感じでいいように使われてしまったジャイアンツ。今後のキューバ国内リーグ出身選手の獲得は思わぬところから難しくなってしまい、完全に被害者のようになってしまいました。
野球大国キューバの亡命問題はもう何10年も前から問題視されているものですが、キューバと米国の間だけではなく、日本球界も巻き込まれたような感じです。
なお、ガルシア選手とメンドーサ選手は現在も逃走中のようです。