囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

舞妓の脱走

2019年07月23日 | ●○●○雑観の森

 




「企業のココロ」なかりせば、すなわち、そこは「ヤミ営業の温床」にの巻】


■二十数年前、京舞妓が「修業・生活の場」から“脱走する事件”が起きた。


■いわゆる「平成の舞妓脱走劇」の一幕。300年の伝統と格式に対する反旗か? 京都五花街で最も格式の高い「祇園甲部」の街を震撼させた珍事である。


■十代後半の舞妓3人が、住み込んで修業する「置き屋」から、それぞれ逃げ出した。彼女たちは、あるマンションの一室で「舞妓派遣会社・舞妓の館」を作り、営業を始めた。当初は半年先までの予約が入る大盛況。だが、長続きせず、やがて立ち行かなくなった。

■仕掛け人は反社会的勢力に近い人物。その後、失意のまま「病死」した。


         ◇


■元舞妓「豆育」ことTさん。山口県の中学を卒業後、京都にやってきた。舞妓は「仕込み」と呼ばれる見習い期間を含む6年ほどの厳しい修業を終えると、置き屋生活を離れ、独立した芸妓になる。それが花街の習わし。

■だが、途中で置き屋を抜け出した。

■「我慢できない仕打ち」に「舞妓も労働者」と裁判所に訴えた。「『着物を汚したのに気付かへんとは』とか言われ、顔を張られたり、体をけられたり、ひきずり回されたり」「月2回の公休日も仕事。お正月以外は休みはなし」「昼は掃除や洗濯、夜はお座敷で深夜まで。それでも月5万円が渡されるだけ」「手紙は必ず開封される」「テレビ、音楽、本などが一切禁止。持ち物を捨てられたこともある」。そう訴えた。



■置き屋側を相手取り、京都地裁に起こした訴訟の内容は「慰謝料」と「お客さんから預かっているはずの祝儀金など計千百万円」の損害賠償請求である。置き屋は、舞妓を家族のように住み込ませ、立ち居振る舞いや京ことばを教えて一人前に育て、お茶屋の座敷などに派遣する場。当時、祇園甲部に11軒あった。しかし、裁判は途中で取り下げられ、判決に至らなかった。


         ◇


■芸能人(俳優、タレント、歌手、声優、芸人ら)は、芸能事務所と契約した個人事業主である。従って労働基準法など労働法規に規定された労働者ではないとされる。法律上、双務契約の観点から対等の関係のはずだが、実態は事務所主導の片務契約が大半なので、どうしたって不満は募る。

■今回の「よしもと問題」は、元上場企業という高い社会的評価の外面を持つ一方で、「口頭契約」という前近代的な約束事で契約行為を済ませている古い体質の内面が引き起こしたことがベースにある。

■この会社については、むかしから所属芸人が「ギャラが安すぎる」をネタにしてきた。笑いでは済まされないことを、あえて笑いにしてきた。むろんカネが全てではない。少数の成功者を除き、とてもファミリー扱いではなかったことが今回の騒動で分かってきた。その肝心な部分を、大きくなり経営が右肩上がりになった会社が放置したのはなぜか?

■「興行」という独特の世界のビジネスモデルは、それぞれの分野ごとに歴史的経緯があって今に至っている。とは言え、芸人(個人事業主)たちが口々に会社批判を始めたからには、もはや待ったなし。「タレント・ファースト」に立ち返る最後のチャンスである。

 



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2 コメント

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Unknown (舞妓産業は偽装請負。)
2020-03-10 18:39:08
個人事業主は時間が自由、働く場所が自由。指揮命令を受けてないことで初めて成立する職業です。これらに反すると「偽装請負」という犯罪行為になり逮捕されることもあります。
舞妓の生活についての動画を見たこともありますが、寮生活をさせ、完全な管理拘束を受けていました、この時点で偽装請負に当たることが証明できます。
また、仕事、私生活においても母と呼ばれる雇い主から指揮命令をされていたことがわかります。
未成年者はこうした法的知識に疎いため、こうした違法労働に巻き込まれていることがわかりません。電話も禁止されているためその犯罪労働の実態が伝わりづらく長らく放置されているのが現状です。
芸人、舞妓に関わらずこうした可能性はいくらでもあります。場合によってはタレントであっても労働者になる可能性はいくらでもあります。
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Unknown (fumi-bow1956)
2020-03-10 19:17:34
ご指摘、ありがとうございます。
当時、なぜ係争がうやむやになったのか分かりません。京都弁護士会には300人ほどの登録がありましたが、司法の場で最後まで争われなかったことに疑問を持っていた弁護士もいたはずです。当事者の死や行方不明によって闇となりました。
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