第六十五首
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恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋にくちなむ 名こそ惜しけれ
相模
(生没年不詳) 源頼光の娘との説も。夫・大江公資の任地から相模と呼ばれた。離婚して脩子内親王に仕えた。
部位 恋 出典 後拾遺集
主題
恋の浮き名に朽ちてしまいそうな自分を惜しむ心
歌意
つれない人を恨み悲しんで流す涙で、乾くときもないこの袖さえ朽ちずに残っているのに、恋の噂で朽ちてしまう私の名が惜しいことですよ。
永承六年五月五日のいわゆる内裏根合の歌。即興の歌と違って、恨み嘆く女の恋の心を、ねりあげた技巧の粋をつくしてよみあげている。
この歌、古来二・三句の解釈に両説がある。一つは「袖だに朽ちずあるを」ととる説。一つは「袖だに朽ちてあるを」ととる説。
『後拾遺』以下に百八首。中古三十六歌仙の一