不思議活性

輪廻転生について 2

 

   安東民著 『高等考試験失敗』
  
 ある日、私(安東民)の研究院に、中学に勤めているという女教師が訪ねて来ました。彼女の夫は、保険会社の中堅社員で課長にまで昇進し、彼らの家庭は比較的裕福な生活をしているのでした。ところが、生活にゆとりが生じたとたん、夫は断念していた夢を取り戻したいというのです。即ち高等考試験に合格して、判事か検事になりたいというのでした。
 結局、彼女は夫の夢を応援することになったのですが。一年が過ぎて試験を受ける日、夫はその日に限って朝遅く起きたのです。あわてふためいてタクシーを拾い駆けつけたけれども、すでに試験場の門は固く閉じられたあとであった。一年間、夜もろくにねむらずに一生懸命に勉強したのが、まったく無駄になったわけである。
 ところが、次の年の試験のときも、午前時間の試験をすませて外にでて弁当を食べた彼女の夫は、そのまま芝生の上で寝込んでしまい、気がついてみると、あたりはすでに暗くなってい、結果はいうまでもありませんでした。二度あることは三度あるではないですが、三年目も、試験問題はみな、彼が暗記していたものばかりでしたが、とんでもない答えを書いて不合格となったのです。
 そこで、私はなぜ彼が三度にわたって不思議な失敗をしたのか、彼女の夫が写った写真を霊査をしてみることになったのです。

       * * * * * *

 中宗の時代ではなかったかと思う。ある大家の息子が若干十七歳にして暗行御使になったことがあった。彼は本来、過激な性格でもあったし、また年があまりにも若かったせいもあって、群の代官達の非行をあばくのに少しの容赦もなかった。死刑に処するまでもない場合も重罪人として処刑したのである。この時、処刑されて死んでいった人たちは、怨魂となって再生をしたのであった。この時の暗行御使をした人物が再生したのが、即ち私を訪ねてきた女教師の夫であった。現在、彼女の夫を守ってくださる保護霊の中で、一人が、はるかな昔、暗行御使当時の祖父であった方であり、自分の子孫が法曹界に出て、昔と同じ失敗をして、前世からの悪い因縁をもった人と会い、その結果、非命横死するのを防いであげるため、三度にもわたって不思議な方法を使って試験に落ちるように工作したというのが、私の霊査結果であったのだ。
 
       * * * * * *

「仮に、あなたの夫が高等考試に合格して、本人が願っている通りに検事になったとしましょう。検事というのは本来の職責自体もそうであるけれども、あなたの夫は、罪人の罪を裁くのに少しの人情にもとらえられることなく、情状酌量は全くしない怖い検事になるのは火を見るよりも明らかなんですよ。あなたの夫が裁いた罪人達の中に、前世で重罰を受けた人があり、彼の深層心理の中に、あなたの夫に対しては生理的な嫌悪をもっていたのに加えて、自分の罪をあまりにも重い刑罰で裁かれてたので大きな恨みをもち、この囚人が刑務所から出たあとに、短刀であなたの夫を刺し殺す可能性が非常に多いという話ですよ」
「本当に、安先生のお話しが事実であるとすれば、高等考試験勉強はすぐに止めなければなりませんね」
「それが、そう簡単な問題じゃないのです。第一、あなたの夫が自分に前世があるという心理学的知識を受け入れるかというのが大きな問題でありますし、また自分のこれからの運命がそのように定められているとしても、それをさけて通る方法とふみ越える方法があるというのを認めるか。それが問題です」
「定められた運命をさけて通る方法が本当にあるのでしょうか?そのお話しをどうぞしてくださいまし」

「あなたの夫が法曹界と縁を結ばなければ、いくら前世において悪い原因を自分からつくったとしても、その結果は出ないんです。だから、これから世の中を生き抜くには、三つの方法があるのでは。第一の方法は自分に与えられた運命通りに生きていくこと。第二の方法は、法曹界に出て出世しようという考えをすてて、他の職業を選ぶこと。それから最後の方法は、与えられた運命を自らの心がけによって変える方法です」
「そのような方法が本当にあるのでしょうか?」
 と聞く女教師の目は希望に輝いたのであった。
「確かにありますね。それは即ち、愛の精神に充満された心で生きていくことです。高等考試の試験を受けて合格した場合、判事とか検事にならないで、初めから弁護士になるコースをたどることです。経済的に貧しい人のためには、時にはほとんど無料と同じ奉仕的な態度で弁護をしてあげ、また正しくないと考えられる、即ち勝つ可能性がない人の事件は、いくらお金を多くくれるといってもあずからないこと。結局、権力とお金の力を前にしいたげられている人たちの側に立って仕事をする、正義感にあふれた弁護士になれということなのです。
 そのように生きる時、たとえ前世からの悪い縁をもった人達と出会うようになっても彼らを助けてあげる立場になるので、彼らから害を受けるようなことはないだろうと思います。ただ、あなたの夫は精一杯、その人達のために働いてあげたけれども、彼らが感謝するようなことはほとんどないでしょう」
「よくわかりました。私が夫を説得してみましょう」
「この三つの道の中でどの道を行くようになるかは、あなたとあなたの夫と、子どもたちの心がけと前世からの種々な原因が複雑に作用してなるものですから、いくら私が説得力があったとしても、成功するか否かはいまのところ、判断はむずかしいのです」
「よくわかりました」
「人はだれでも与えられた瞬間に自分自身で最善をつくして生き抜けば、それでよいのです。人事をつくして天命を待てという言葉もありますからね。あらかじめ教えてもらったといって、必ずしも悪い運命をさけて通ることができるのではありません。本人の心がけ、他人の好意を純粋に受け入れることができるか否かによって、運命は決まるのです」
 女教師はありがたいとお礼をいって帰って行ったが、その後、訪ねて来たことがないので、彼女の夫がどのような運命をたどるようになったのかは不明である。なるべく彼ら夫婦の未来が平坦であれかしと祈るだけである・・・・。

・以上、安東民氏のお話でしたが。宿命は変えることは出来ないが、運命は私達の生き方、心がけ如何によって変えられるということ。与えられた運命を自らの心がけによって変える第三の方法ですが、それを実行するということは、愛の精神に充満された心で生きていくこと。それは、誰もが心を純粋に保ち、正しく行動するときに、たとえあらかじめ定められた運命といえども変えることができるということなのでしょう。まさしく、運命を、この世に生きていくことの不思議なのでしょう・・・・。


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