きょうは、賢治童話の「双子の星」を紹介したいと思います。
『双子の星』
天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精のお宮です。
このすきとほる二つのお宮は、まっすぐに向い合っています。夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんと座り、空の星めぐりの歌に合せて、一晩銀笛を吹くのです。それがこの双子のお星様の役目でした。
このすきとほる二つのお宮は、まっすぐに向い合っています。夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんと座り、空の星めぐりの歌に合せて、一晩銀笛を吹くのです。それがこの双子のお星様の役目でした。
そうです。チュンセ童子とポウセ童子はいつも仲良く、星めぐりの歌を地上のわたしちに、その銀笛の音色を送ってくれているのです。東の空が朝の訪れを告げるまで・・・。
ある朝のことです。お日様がカツカツカツと厳かにお身体をゆすぶって、東から昇っておいでになった時、チュンセ童子は銀笛を下に置いてポウセ童子に申しました。
「ポウセさん。もういいでしょう。お日様もお昇りになったし、雲もまっ白に光っています。今日は西の野原の泉へ行きませんか。」
そうです。その散歩の途中、二人は大がらすの星とさそり星さんの喧嘩に巻き込まれ、その日の夜の星めぐりにまにあわなくなってしまいそうになったのです・・・。大からすは胸をさそりの鉤でさされてしまい・・・、毒がまわってしまっては大変と、チュンセ童子が黙って傷口から六篇ほど毒のある血を吸って吐きだしたのです。
さそりはというと、頭を大からすのくちばしで槍のようにさされ痛手をおってしまい、二人は重たいさそりさんを、やっとのことで家まで必死につれていこうとしたのです・・・。
それが六時間もたっても、なかなかさそりさんの家まで、まだだいぶ時間がかかりそうで、いつのまにか、もうお日様が西の山にお入りになる所でした。
チュンセ童子は背中がまがってまるで潰されそうになりながら云いました。
「さそりさん。もう私らは今夜は時間に遅れました。きっと王様に叱られます。事によったら流されるかも知れません。けれどもあなたがふだんの所に居なかったらそれこそ大変です。」
ポウセ童子が
「私はもう疲れて死にそうです。さそりさん。もっと元気を出して早く帰って行って下さい。」と云いながらとうとうバッタリ倒れてしまいました。さそりは泣いて云いました。
「どうか許して下さい。私は馬鹿です。あなた方の髪の毛一本にも及びません。きっと心を改めてこのおわびは致します。きっといたします。」
この時水色の烈しい光の外套を着た稲妻が、向うからギラッとひらめいて飛んで来ました。そして、童子たちに手をついて申しました。
「王様のご命令でお迎えに参りました。さあご一緒に私のマントへおつかまり下さい。もうすぐお宮へお連れ申します。王様はどう云う訳かさっきからひどくお悦びでございます。それから、さそり。お前は今まで憎まれ者だったな。さあこの薬を王様から下さったんだ。飲め。」
「それではさそりさん。さようなら。早く薬をのんで下さい。それからさっきの約束ですよ。きっとですよ。さようなら。」
そして二人は一緒に稲妻のマントにつかまりました。さそりが沢山の手をついて平伏して薬をのみそれから丁寧にお辞儀をします。
稲妻がぎらぎらっと光ったと思うともういつかさっきの泉のそばに立って居りました。
「さあ、すっかりおからだをお洗いなさい。王様から新しい着物と沓を下さいました。まだ十五分間があります。」
双子のお星様たちは悦んでつめたい水晶のような流れを浴び、匂いのいい青光りのうすももの衣を着け新しい白光りの沓をはきました。するともう身体の痛みもつかれも一遍にとれてすがすがしてしまいました。
「さあ、参りましょう。」と稲妻が申しました。そして二人が又そのマントに取りつきますと紫色の光が一篇ぱっとひらめいて童子たちはもう自分のお宮の前に居ました。稲妻はもう見えません。
「チュンセ童子、それでは支度をしましょう。」
「ポウセ童子、それでは支度をしましょう。」
二人はお宮にのぼり、向き合ってきちんと座り銀笛をとりあげました。
丁度あちこちで星めぐりの歌がはじまりました。
「あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あおいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたひの うへは
そらのめぐりの めあて。」
双子のお星様たちは笛を吹きはじめました。
賢治童話の『双子の星』のお話は、楽しい夢の世界です。
ある朝のことです。お日様がカツカツカツと厳かにお身体をゆすぶって、東から昇っておいでになった時、チュンセ童子は銀笛を下に置いてポウセ童子に申しました。
「ポウセさん。もういいでしょう。お日様もお昇りになったし、雲もまっ白に光っています。今日は西の野原の泉へ行きませんか。」
そうです。その散歩の途中、二人は大がらすの星とさそり星さんの喧嘩に巻き込まれ、その日の夜の星めぐりにまにあわなくなってしまいそうになったのです・・・。大からすは胸をさそりの鉤でさされてしまい・・・、毒がまわってしまっては大変と、チュンセ童子が黙って傷口から六篇ほど毒のある血を吸って吐きだしたのです。
さそりはというと、頭を大からすのくちばしで槍のようにさされ痛手をおってしまい、二人は重たいさそりさんを、やっとのことで家まで必死につれていこうとしたのです・・・。
それが六時間もたっても、なかなかさそりさんの家まで、まだだいぶ時間がかかりそうで、いつのまにか、もうお日様が西の山にお入りになる所でした。
チュンセ童子は背中がまがってまるで潰されそうになりながら云いました。
「さそりさん。もう私らは今夜は時間に遅れました。きっと王様に叱られます。事によったら流されるかも知れません。けれどもあなたがふだんの所に居なかったらそれこそ大変です。」
ポウセ童子が
「私はもう疲れて死にそうです。さそりさん。もっと元気を出して早く帰って行って下さい。」と云いながらとうとうバッタリ倒れてしまいました。さそりは泣いて云いました。
「どうか許して下さい。私は馬鹿です。あなた方の髪の毛一本にも及びません。きっと心を改めてこのおわびは致します。きっといたします。」
この時水色の烈しい光の外套を着た稲妻が、向うからギラッとひらめいて飛んで来ました。そして、童子たちに手をついて申しました。
「王様のご命令でお迎えに参りました。さあご一緒に私のマントへおつかまり下さい。もうすぐお宮へお連れ申します。王様はどう云う訳かさっきからひどくお悦びでございます。それから、さそり。お前は今まで憎まれ者だったな。さあこの薬を王様から下さったんだ。飲め。」
「それではさそりさん。さようなら。早く薬をのんで下さい。それからさっきの約束ですよ。きっとですよ。さようなら。」
そして二人は一緒に稲妻のマントにつかまりました。さそりが沢山の手をついて平伏して薬をのみそれから丁寧にお辞儀をします。
稲妻がぎらぎらっと光ったと思うともういつかさっきの泉のそばに立って居りました。
「さあ、すっかりおからだをお洗いなさい。王様から新しい着物と沓を下さいました。まだ十五分間があります。」
双子のお星様たちは悦んでつめたい水晶のような流れを浴び、匂いのいい青光りのうすももの衣を着け新しい白光りの沓をはきました。するともう身体の痛みもつかれも一遍にとれてすがすがしてしまいました。
「さあ、参りましょう。」と稲妻が申しました。そして二人が又そのマントに取りつきますと紫色の光が一篇ぱっとひらめいて童子たちはもう自分のお宮の前に居ました。稲妻はもう見えません。
「チュンセ童子、それでは支度をしましょう。」
「ポウセ童子、それでは支度をしましょう。」
二人はお宮にのぼり、向き合ってきちんと座り銀笛をとりあげました。
丁度あちこちで星めぐりの歌がはじまりました。
「あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あおいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたひの うへは
そらのめぐりの めあて。」
双子のお星様たちは笛を吹きはじめました。
賢治童話の『双子の星』のお話は、楽しい夢の世界です。
2011年12月2日
・この「双子の星」は、『銀河鉄道の夜』のなかで、銀河鉄道の夜に乗ってきた男の子の口から、「あれきっと双子のお星さまのお宮だよ」と言わしめた、賢治の愛した作品のひとつで、
二人の星童子の無邪気さは、なにものにもかえがたいですね。
ここ私のふるさともようやく福寿草、梅の花、桜の花と咲き春の訪れです。久しぶりに長女の子とのふれあいです。穏やかな天気の日も続き、幼子の屈託のない笑顔と行動は一緒にいて、とても元気をもらいます・・・・。