迷っているときや困っているときに何気ない一言が、迷いを払拭したり困っている事を解決に導くことがあります。
A君が大学2年生の時、ワンダーホーゲルブに所属していた。その年の年末にインフルエンザが流行った。香港A57型というインフルエンザだった。A君はこれに感染し高熱を出した。数日が過ぎて熱が下がったので、大学へ行った。放課後、ワンゲルのアップザイレンの訓練をやるということになり校舎の煙突の上に上がった。そこからロープを伝って地上へ降りるのだ。数人が次々に下へ降り、A君の番になった。A君はロープを教えられたとおりに体に巻き付けて、煙突の頂から地上へ降り始めた。2階部分へきたところで全身が震えてきた。いわゆる悪寒がおそってきたのだ。インフルエンザのぶり返しが来たのだ。途中で止まってしまい、上級生の方に救助された。すぐに家路についたのだが、悪寒と吐き気で電車の中で動く事ができなくなってしまった。這々の体で自宅にたどり着き、そのまま寝込んでしまった。運悪く気管支炎を併発してしまい、2月の後期試験を受けられなくなった。
そのために2年次をもう一度やり直さなければならなくなった。A君は非常に落ち込んでしまい、通学する気分がなくなってしまった。そんな状態をひきずるのがいやになりN教授に相談にいった。A君は実験系の学科に所属していたので、実験室の都合で2年と3年の実験を同時進行することができないといわれた。つまり留年することが決定的になったのである。N教授に大学を退学して別のことをした方がよいのだろうかといったところ、N教授は、
「君、若いときの1年なんて長い人生の間では誤差のようなものだ。この1年を有意義に過ごせば元は取れるだろう」といった。
A君は、N教授のこの一言で人生の考え方が変わったという。その後、A君は大学を卒業して一流企業に入り、現在もその企業で取締役として最後の仕事をしているという。
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