中東では有志連合がシリアの「イスラム国」を必死に空爆中であり、ヨーロッパでは、ギリシャの財政危機、多数のテロと大量の難民流入等で混乱の極みである。11月13日には、パリで「イスラム国」によるテロで130人もの市民が犠牲になったばかりである。
中東とは何処を指すのかも知らなかった私には、此のような混乱の真因はとても理解できなかった。
たまたま、書店で、タイトルと著者に惹かれて、本書の中身を見て、これは今の混乱を理解するのは大いに役立ちそうだと判断し、購入し、世界地図を傍らにして、読み始めた所、内容は斬新で、衝撃的、刺激的で目からうろこの記述が多々有り、中東とヨーロッパの混乱理解に大いに役立ったと思う。テーマが時宜を得、多岐に渡り、内容が重く、濃密であるので、再読、再々読の価値があると思う。
「イスラム国」に代表される中東を中心に発生している混迷とその不可解さは将に「事実は小説よりも奇なり」の権謀術策の世界であり、その理解は本書に出会うまでは初めからギブアップであった。
著者は現在起きている事件、騒乱などは何らかの形で過去-歴史と繫がりがあるので、歴史を学ぶことが現実の人間、社会を理解するための重要な手がかりとなると言っている。
こうした歴史に軸足を置いたスタンスで、今起きているシリアの政情不安、イスラム国によるテロ、中国の南沙諸島進出、ドイツの突出とEU崩壊の危機、トルコのイスラ回帰の動き等々が鋭い視点で分析され、説得力があり、「目からうろこ」の解説が提示されている。
全く初耳で、衝撃的な話題もある。即ち、EUが崩壊してヨーロッパに再び戦火が広がる可能性、「第二イスラム国」の誕生の可能性、スンニ派とシーア派の対立から中東諸国に核拡散する可能性、最も恐ろしいのは超過激的な「イスラム国」が核武装する可能性等があることである。
本書の第一章で言っている。“おそらく我々は、今、そうとも知らずに、「新しい時代を」を生きている。20年、30年後に振り返った時、「あの時が歴史の転換点だった。」と思うだろう。”と。だとすれば、私達は、世界各地、特に中東の動向から目を離さず、注視し続ける必要があろうと痛感した次第である。