ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

イシガキトカゲ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 懐かしの見た目

 「八重山スケッチの旅」で西表島ジャングル探検をした時、縦に白線の入った、尾の青いトカゲを見た。名前は忘れたが子供の頃には何度もお目にかかっているトカゲ、ヤンバル(沖縄島の北部地方の俗称)の親戚の家でも、南風原(那覇市の東隣の町、私が子供の頃は畑の広がる田舎)の親戚の家でも頻繁に見たトカゲ。色模様がきれいなので見間違いなどでは無い。確かに、沖縄島でも昔はどこにでもいたトカゲであった。
  そういえば最近、というか、ここ20年以上も見ていなかったことに気付く。沖縄島のヤンバルに行けばまだたくさんいるかもしれないが、私の住む首里近辺では、あるいは実家のある泊近辺ではもう緑が少なくなって、住み辛くなったのかもしれない。などと思いながら図鑑を開いて名前を調べる。イシガキトカゲであった。

 沖縄島にもたくさんいるというのに名前はイシガキトカゲ、何故か。図鑑にはオオシマトカゲ、オキナワトカゲ、イシガキトカゲと色模様の似たトカゲが3種あった。それぞれ奄美大島近辺、沖縄島近辺、石垣島近辺に生息する亜種なのだそうである。
 オキナワトカゲも縦に白線の入った、尾の青いトカゲであるが、成長するとその色模様は消えるらしい。懐かしの見た目は、オキナワトカゲの子供であったようだ。

 
 イシガキトカゲ(石垣蜥蜴)
 トカゲ科の爬虫類 石垣島、西表島に分布する固有種 方言名:不詳
 石垣島で最初に発見されたのでイシガキと名がつく。沖縄諸島にはオキナワトカゲ、奄美諸島にはオオシマトカゲという種があり、本種と色形が似ている。
 文献に7本の白い縦線があると書かれてあったが、写真のものは5本しかない。それでもイシガキトカゲ。本種は住む場所によって色や模様が微妙に変わるそうで、山地のものは白線が5本になるとのこと。成長によっても色が変わるらしい。
 体長15センチ前後の小型のトカゲ。石垣島、西表島の林内では普通に見られる。

 記:ガジ丸 2005.12.16 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


キノボリトカゲ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 整備された墓地では

 もう20年ほども前のことだったか、ウシーミー(御清明、清明祭のこと)で、伯父の家の墓を訪れた。墓は中城村の国道沿いにあり、国道沿いとはいえ、原野を切り開いてまだ間もないといったような藪の中に、その他の20基ほどの墓と一緒にあった。
 国道に路上駐車して、山道をいくらか登る。その途中、その頃小学校高学年であった従姉の息子が大声をあげた。
 「あっ、カメレオンがいる!」
 彼が指差したところに、なるほどカメレオンそっくりのトカゲがいた。大きな木の幹に数匹がしがみつくようにして、目玉をグルグル動かしていた。

 その頃、私も知識に乏しく、彼が言う通り、それがカメレオンであると思った。近くの民家で飼っていたものが逃げ出して、繁殖したものであろうと思った。
  「違うよ。あれはキノボリトカゲだよ。」と従姉の亭主が教えてくれた。キノボリトカゲは沖縄に普通にいるトカゲで、従姉の亭主などは子供の頃、それを捕まえてはよく遊んだらしい。「何?どうかした?」と言っているみたいな表情が面白いし、歩き方もどこと無くひょうきんなので、子供の良い遊び相手になったそうだ。そんなひょうきん者、私はその時が初対面。那覇の緑の少ないところでは生息できないのかもしれない。

 今年の5月、ウシーミーで同じ場所を訪れた。墓の周辺は当時と比べて、だいぶ整備されてきれいになっていた。墓の数も増えていた。私はその時、キノボリトカゲの写真を撮ろうと意気込んでいた。ガジ丸HPに載せるためである。しかし、キノボリトカゲは1匹も見つからなかった。整備された墓地では、彼らも住みにくいのであろう。

 
 キノボリトカゲ(木登り蜥蜴) 全長25センチ
 アガマ科 奄美、沖縄、先島諸島の固有種 方言名:コーレーグスクェー
 名前の由来、明確に書いてある資料はないが、「樹上性」(広辞苑)であることからキノボリであろう。トカゲについては不明。方言名のコーレーグスクェー、その由来も不明だが、その意味は面白い。コーレーグス(唐辛子)クェー(食う者)となっている。キノボリトカゲが唐辛子を食うかどうかについては、どの文献にも記載がない。
 本種の全長についてもこれまで参考にしていたどの文献にも記載がなく不明だったが、今回新しく参考図書に加えた『ポケット図鑑日本の爬虫両生類157』にあった。
 カメレオンほどではないが体の色模様を変える。地面の上にいることもあるが、木の幹や枝でよくみることができる。樹上で昆虫などを捕食する。
 写真は職場で撮った。職場は那覇市内ではあるが、周りに緑が多い。
 
 これは地面に近い位置にいた。「しまった!見つかったか」といった表情。
 
 キノボリトカゲ(サキシマ)
 先島木登り蜥蜴 アガマ科 方言名:コーレーグスクェー

  記:ガジ丸 2005.8.5 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ガラスヒバァ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 知識があれば怖くは無い

 数年前に中一の少年二人を連れて、ヤンバルの玉辻山をハイキングした。その後、暑い盛りだったのでたっぷり汗をかき、まだ時間に余裕もあったということで、泳ぎに行くこととなった。海では無く川、というより泉。タナガーグムイ(注1)という名。
 子供の頃から海には親しんで、川にも親しんで、泳ぎには不安の無い私であるが、泳ぐことの楽しさを理解できずにいるので、大人になってからは泳ぐ機会が減った。目の前には倭人の羨む沖縄の青い海が広がっているというのに、最近10年間で泳いだのは2、3回あったかどうかとなっている。それも、子供の面倒をみるために仕方なく。

 なわけで、その時も私は泳がず、一人で沢登探検をする。沢登りには危険が伴うということは重々承知している。あの恐ろしいハブが、水を飲みにやってくるからだ。で、慎重に歩く。一つ目の沢ではリュウキュウハグロトンボを発見し、写真を撮る。もう一つの、大きな沢を歩いていて、岩の上から50センチほど下に飛び降りた時、足元を素早く何かが動いていくのが見えた。草むらがあったので、それが何かすぐには判らない。が、長いものであることには気付いた。「ハブ!」と、全身から一瞬にして汗が吹き出、その場から飛び退く。ちょっと落ち着いてから、ゆっくり戻り、確認する。
  長いものは岩陰に隠れていた。ヘビには違いないが、ハブかどうかは不明。沖縄にはハブ以外にアカマタ、アオダイショウなどがいるとは聞いているが、その違いが判らない。私には沖縄のヘビに対する知識がその時は無かった。知識が無いものだから、恐れて、その長いものに近付くことができなかった。離れたところからだが、その長いものの写真を撮って、後日調べる。それはガラスヒバァという無毒のヘビであった。そうであるとの知識さえあれば、何も怖くは無い生き物だったのである。
 以来、沖縄の植物だけでなく、動物も勉強しなくては、と思ったのである。

 注1、タナガーグムイ:タナガーはタナゲーという名のエビを指す。タナゲーは手長ということ。つまりテナガエビのことであるが、川エビ全般も言う。グムイはクムイの濁音化したもので、自然にできた池や沼などのこと。「タナゲーの」と所有を表す意味で「タナガー」と変化して、タナガーグムイは「テナガエビの池」、あるいは「テナガエビのいる沼」とかいったことになる。沖縄本島国頭村にある。

 
 ガラスヒバァ(烏蛇)
 ナミヘビ科 体長100センチ内外の無毒のヘビ 方言名:ガラスヒバァ
 奄美諸島、沖縄諸島に分布。宮古諸島にはミヤコヒバァ、八重山諸島にはヤエヤマヒバァなどの亜種がいるが、見た目も生活形態もほとんど一緒のようだ。胴の背面は黒、または黒褐色の地に黄色の細い横帯がある。細長いスマートな体型。低地の水田や山地の渓流などの水辺に生息し、カエル、オタマジャクシ、イモリ、トカゲなどを捕食する。
 どの文献にも方言名の記述が無かった。しかし、ガラスヒバァの最後の小さなァはいかにもウチナーグチ(沖縄口)のようである。カラオケが世界の共通語になったように、ガラスヒバァは日本の共通語になったのかもしれない。広辞苑にはカラスヘビ(烏蛇)の記載があり、「シマヘビの体色の黒化したもの」の他に、「ガラスヒバアのこと」との記述もあった。カラスのことを方言でガラサーと言う。よって、漢字は烏蛇とした。
 
 2010年9月、座間味島で側溝の中を這っていたもの。

 記:ガジ丸 2005.8.5 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


アオカナヘビ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 子供たちの残酷の犠牲

 私の実家は那覇市の住宅街にあり、周りに緑は少ない。碁盤目に区画整理された土地の個人の所有は小さくて、アメリカ人からウサギ小屋と揶揄されるような家が並ぶ。近所に庭のある大きな家はほとんど無い。私の子供の頃からそうではあったのだが、まだその頃は、今よりは幾分空地もあり、緑も多少あり、その中に自然は多く残っていた。
  隣の家は老夫婦が住んでおり、小さな畑と庭があった。向かいの家にも玄関前に猫の額ほどの庭があった。ちょっと離れたところには1軒分の空地があり、そこは草地となっていた。そういった庭や草地にはたいていジューミーがいた。子供たち、ほぼ男の子に限るが、その悪ガキたちは、ジューミーを捕まえては、たまに、残酷な遊びをした。

 ジューミーとはアオカナヘビのことで、ヘビと名はつくがヘビでは無く、小さなトカゲの一種。子供たちにとってはよく見かけるごく身近な動物。悪ガキたちは捕まえたジューミーを走ってくる車の、そのタ イヤの下に投げ込む。ブチュっという音がする。その音を聞くためだけの残酷な遊び。「いい音だったなあ」と喜ぶのである。
 ジューミーはまた、2Bという爆発する花火を体にくくりつけられたりもした。哀れに爆死するジューミーを見て、子供たちは笑いあったのであった。今思えば、何とも残酷なことをしたものだと思う。殺戮本能が人間のDNAに潜んでいるとしか思えない。

 アパートの庭で、ジューミーを発見した。おそらく10年以上のご無沙汰。写真を撮りはしたのだが、顔が写っていない。近付くと逃げるし、下手に捕まえるとその尾っぽを切ってしまうので、捕まえることもできずに、みすみす逃がしてしまった。

 
 アオカナヘビ(青金蛇) 
 カナヘビ科のトカゲ トカラ、奄美、沖縄、宮古諸島の固有種 方言名:ジューミー
 北海道から九州にはカナヘビが分布している。そのカナヘビの近縁種で、青い(緑)色をしているから青カナヘビ。カナヘビは金色(褐色)をしているので金蛇。四角い三角定規みたいな言い方だが、名前なので、こういうことが矛盾とはならない。アオカナヘビでも環境によっては褐色になっている固体もあるとのこと。体長20~25センチ。
 見た目はトカゲそのものなのにヘビと付くのは、細長いからだろう。尾の部分が全体の4分の3を占めている。尾を掴むと自切して逃げる。尾は再生する。
 追記(8月25日):職場でアオカナヘビを発見。そっと近付いて写真1、2を撮る。
 
 尻尾の部分が長いのでヘビという名がつく。

 記:ガジ丸 2005.8.5 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


シリケンイモリ

2011年04月28日 | 動物:両性・爬虫類

 現実に触れない子供たち

 アメリカ在の義兄がその家族と共に今、沖縄にバカンスで来ている。数日の間車を貸してくれというので快く応じる。月曜日の夕方に取りに来た。で、昨日(木曜日)、返しに来た。返しに来たのはたぶん夜中12時前。休肝日明けの私は、その日ワインを1本飲んで、酔って、11時頃には既に寝ていた。12時前に返しに来たというのは、携帯に着信ありの表示が出ていたので、おおよそ、その頃であろうとの推測。
 義兄は私の車を、元あったところには停めていなかった。そこには別の車が停まるということを想像しなかったのか、幅の広いほうに停めてあった。また、元あったようにバックでの駐車では無かった。そりゃ、広いところに頭から突っ込んだほうが停めやすいではあるだろうが、何とも自分好みを通す人なのである。きっと血液型はB型であろう。

 その息子の一人、次男も今沖縄にいる。次男は父親と違って周りに配慮する性格。数年前に当時中一であったその息子と彼の友人の少年2人を連れて、ヤンバルの玉辻山をハイキン グした。山頂への途中に水溜りがいくつもあり、そこにはたくさんのイモリが泳いでいた。イモリは沖縄では多く生息しているシリケンイモリ。私には珍しいものでは無かったが、少年2人は初めての遭遇だったようで、思いの外気味悪がっていた。
 珍しいものがあると触りたがるのが男の子の習性と思っていたが、彼らはシリケンイモリに触れなかった。危険かどうか判明するまでは迂闊に触らない、という慎重な性格なのかもしれない。きっと血液型はA型なのであろう。あるいは、もしかしたら、テレビゲームなどでいろいろな怪物たちと親しく遊んでいる少年たちではあったが、現実に手の中でゴニョゴニョ動くものは苦手なのかもしれない。バーチャル世代は、ヤンバルの山の中で出会う現実の動物たちとは、なかなか親しくなれないのかもしれない。

 
 シリケンイモリ(尻剣井守)
 イモリ科 体長12cm内外 方言名:ソージムヤー
 奄美大島とその周辺、沖縄島、慶良間諸島に分布。背は黒褐色、喉から腹、尾の裏側にかけては鮮やかな橙色をしている。低地の民家から山頂にまで広く生息する。渡嘉敷島では陸の上をのそのそ歩いていたが、玉辻山では水溜りの中にたくさんのシリケンイモリが泳いでいた。基本的には水の中を好むようである。
 私は今回調べるまでずっとシュリケン(手裏剣)とばかり思っていた。忍者の使う手裏剣で、星型のものでは無く、細いナイフのようなものをイメージして、なるほどこいつは手裏剣だと思っていた。が、正しくは尻剣。メスの尾の先が尖って剣のように見えるのでということらしい。うーむ。シュリケンの方がカッコいい、と私は思うが。
 
 シリケンイモリ
 2012年5月、国頭森林公園で見つける。

 2015年12月 写真追加

 記:ガジ丸 2005.8.5 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行