灰色の灯
ハイイロヒトリのハイイロは灰色の意だが、灰色という日本語はあまり良いイメージがない。広辞苑でみてもその第一義は色の灰色だが、その第二義には「陰気なこと。無味乾燥なこと。」とある。広辞苑にも例があるが「灰色の青春」というと淋しい青春だ。第三義もまた、「主義・主張などのはっきりしないこと。また、犯罪容疑が完全には晴れていないこと。」と良い意味ではない。英語のグレイにするとロマンスグレーとかちょい悪オヤジを連想させる言葉もあって、そう悪いイメージではないのだが・・・。
ハイイロヒトリのヒトリは、それが独りという意なら、「灰色の独り」となって、可哀想な人生みたいになってしまうが、ヒトリは独りではなく「灯」という意。「灰色の灯」は何か幽玄な感じがして私は好き。「灰色の灯」というタイトルの唄も作れそう。その際は「はいいろのひとり」ではなく、「はいいろのひ」と読ませよう。
遠くへ行った君が 街角に見えた気がした
まさかと思いながら 僕はその影を追った
闇の中を揺れながら 灰色の灯がぼやけていた
・・・
なんて始まって、死んだ恋人が幽霊となって現れたというラブストーリー。
ハイイロヒトリのヒトリは「灯」という意だが、それは本種がヒトリガの類で、ヒトリガの類は「灯火によく飛来する」ことからその名がついている。
ハイイロヒトリ(灰色灯):鱗翅目の昆虫
ヒトリガ科 南西諸島、台湾~インドに分布 方言名:ハベル(蝶蛾の総称)
ヒトリガ(灯蛾)とはヒトリガ科のガの総称で、灯火によく飛来するらしい。ということで灯蛾(ヒトリガ)となったものと思われる。成虫の色には色彩型と暗色型の2つの型あって、色彩型の前翅はクリーム色、暗色型の翅は暗色とあり、いずれも灰色とは書かれていないが、暗色が濃い灰色を意味する、ということでハイイロと想像する。
成虫は、私が気付かないだけかもしれないが、なかなかお目にかかれない。しかも、色彩型と暗色型があるとのことで、「これはハイイロヒトリ」と判断できずにいた。が、その幼虫は、毛虫といえば本種を指すといってもいいくらいよく見かける。
幼虫はいわゆる毛虫。毛が長く、体長も終齢幼虫は45ミリほどになる。終齢幼虫は蛹になる前に移動する習性があり、道路を横断するのを見かけるとのこと。私も何度かその光景を見ている。幼虫の食草はフダンソウ、ヤブカラシなど。
上から:成虫は(私は)なかなか出会えない。
幼虫:幼虫は毛虫の代表と言ってもいい位よく見かける。
交尾横から
交尾上から
記:ガジ丸 2018.10.7 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行
『日本産蛾類大図鑑』井上寛、他著、(株)講談社発行
きれいな眼
今年(2018年)5月20日、友人であるO夫妻とTを新居に招いて夕方から飲み会をし、遅く(11時過ぎ)まで飲んで、いつもの晩酌に比べたら2倍位の量(ビール2缶とワインがボトル半分程度)を飲んで、久々に酔っ払って、終わり頃の記憶が途切れ途切れとなり、翌朝は久々の二日酔い。少量で酔うのは経済的だが老化を感じる。
二日酔いの中、家に籠ってあれこれ考え事をし、お昼前にやっと家を出てちょっとした用事を済ませ部屋に戻る。戻る前に玄関ロビーの郵便受けをチェックをする。その時、足元に見覚えのあるガがいることに気付いた。名前もほどなく思い出した。
脳廃る爺の私が何故その名を思い出せたかというと、きれいなガで見た目が覚えやすいということと、近い内に紹介しようとその準備をしていたから。そのガの写真は既に撮っていて、紹介文も途中まで書いていた。その文とは以下、
本種は、『沖縄昆虫野外観察図鑑』によると「昼間は葉の表面に翅を広げて静止しているのが観察される」とのこと。私の写真の日付は2008年10月11日、午後3時過ぎとなっていて、日記を調べると、その日その時、私は宮崎から遊びに来ていた友人Iを海洋博公園へ観光案内している最中、公園内を散歩している時に植込みの中、何かの「葉の表面に翅を広げて静止している」のを見つけている。
ということであるが、ただ、その時撮った写真がボケた写真だったので、紹介しようかどうしようか少し迷っていたところであった。それが何とまあ、神様のお引き合わせというのか、「私、ここにいるよ、きれいに撮ってよ」と言っているみたい。
カメラは部屋にあるので部屋に連れていくことにする。彼女はまだ生きていて動いてはいたがそう元気は無い。そんな彼女を傷付けないよう郵便受けにあったチラシの紙を袋のような形にし、その中に入れて部屋のベランダへ持って行き、写真を撮った。その後しばらく彼女はベランダに留まっていたが、夕方にベランダから植込みのあるところへ逃がしてあげた。その後、元気に飛び回っているかどうかは確認できていない。
フタツメオオシロヒメシャク(二つ目大白姫尺):鱗翅目の昆虫
シャクガ科 本州~琉球列島、中国、台湾、東南アジアに分布 方言名:ハベル
名前の由来は正確には不明だが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「前翅横脈紋は、眼状紋となり・・・」の通り、前翅の左右に1個ずつ大きな「眼状紋」があり、そこから「二つ目」とつき、「白」は「前・後翅ともに灰白色」(同書)だからと想像できる。
「姫尺」はシャクガの仲間では小さい方だから、その前にある「大」は、矛盾するようだが、ヒメシャクの仲間では大きい方だからと想像する。
「山地、平地の林で見られ・・・夜間に灯火へもよく飛来し、昼間は葉の表面に翅を広げて静止しているのが観察される」(〃)とある。私の写真は、午後12時過ぎ、アパートの玄関フロアで見つけたものだが、それはおそらく「夜間に灯火へもよく飛来し」たものが、巣へ帰るのを忘れて残ったものだと思われる。
前翅長16ミリ内外。翅にある眼状紋も含め美しいガであるが、日本(沖縄含む)では稀なガとのこと。成虫の出現は4~11月。幼虫の食草はオキナワイボタ。
前から
記:ガジ丸 2018.6.4 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行
『日本産蛾類大図鑑』井上寛、他著、(株)講談社発行
羽衣のような
沖縄の梅雨時である5月から6月にかけて、畑の草刈をしていると、小さい(体長15ミリくらい)けれど真っ白でよく目立つ虫に出会う。その虫、2014年に初めてその存在に気付いて、その後毎年、写真は撮っていないが見てはいる。
その虫は、私の感性で言えば「羽衣があるとしたらこんな感じかな」と思うほど華奢で、上品で、そして、きれい。ハゴロモ科という昆虫の1科があるが、「体に比して前翅が大きく、美しい色彩を呈するものが多い」(広辞苑)の「美しい色彩を呈する」ということから美しい羽衣に喩えられての名称であろうが、ハゴロモ科よりも本種がきれい。
そんなきれいな虫が蛾の類であるということをすぐには判断できず、図鑑をあれこれ調べて、やっと「トリバ科」という、いくらか似たようなものを見つけ、図鑑に写真は掲載されていなかったが、全身が白いシロトリバなるものがいるといういことを知る。
宜野湾市民図書館や西原町立図書館にある日本産蛾を紹介しているどの図鑑にもシロトリバの写真は無い。なので、写真の者がシロトリバであるという確信が持てない。というわけで、那覇にある「沖縄県立中央図書館へ行かなきゃ」となる。
「行かなきゃ」と思ったのは去年(2017年)夏頃、沖縄県立中央図書館が、移転するため2018年3月一杯で一旦閉館するという話を聞いていて、「閉まる前に」と考えていた。が、その後、腰痛となって、畑辞めるとなって、引っ越しとあれこれあって、閉館ちょい前の3月28日にやっと県立図書館へ出掛けることができた。
県立図書館に『日本産蛾類大図鑑』という図鑑があり、シロトリバはそれにあった。個体数は少ないみたいで、その説明もそう詳しくはない。同書は1982年の発行。それから36年も経っているが、他の文献にシロトリバは載っていない。
シロトリバ(白鳥羽):鱗翅目の昆虫
トリバガ科 九州、奄美大島、徳之島、西表島、他に分布 方言名:ハベル
名前の由来は資料がなく正確には不明で、漢字表記の白鳥羽も私の勝手な想像であが、根拠がない訳ではない。見た目が白い、『日本産蛾類大図鑑』にも「体、翅とも白色」とあり、それが本種の目立つ特徴の1つ、よって、白とつく。鳥羽についてはサツマイモトリバの頁でも書いたようにトリバガ科の翅の形状が鳥の羽に似ているから。
本種の目立つ特徴はもう1つあり、「前・後翅とも羽状翅はひも状に細く」(日本産蛾類大図鑑)で、他のトリバガと比べても蛾のイメージからは遠い上品さがある。
九州、奄美大島、徳之島、沖永良部島、西表島、台湾に分布と文献にあったが、私は沖縄島中南部にある私の畑で何度も見ている。
開張20ミリ内外。幼虫はアサガオに寄生するとのことだが、私が成虫を見たのはアサガオと同じヒルガオ科であるサツマイモの葉上。成虫の出現は文献に記載がなく正確には不明だが、私の写真で限って言えば5~6月となる。
記:ガジ丸 2018.4.7 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行
『日本産蛾類大図鑑』井上寛、他著、(株)講談社発行
蝦夷菊の誘い?
今回紹介するエゾギクトリバ、下記説明文に蝦夷菊鳥羽と漢字表記しているが、「幼虫の食草はエゾギク・・・」と文献にあったのでそうしている。で、エゾギクって何だ?ということも調べる。エゾギクは広辞苑にあり「キク科の観賞用一年草。園芸上は属名のアスターで呼ばれる」のこと。漢字表記の蝦夷菊も同じく広辞苑にあった。
エゾギクトリバの写真は2006年10月2日に撮っている。この年この月、私は11日から15日まで北海道の旅に出ている。エゾギクトリバに出会って9日後には北海道の大地を踏んでいる。蝦夷菊の誘いで・・・ということでは無い。写真の者がエゾギクトリバであると判ったのは写真を撮ってから13年も経った去年(2017年)の年末になってから。私が北海道へ行ったのは、可愛い女性がその年から北海道へ住んでいて、彼女に会いに行ったから。可愛い女性は結婚して北海道住まいとなった。新婚夫婦に歓待され、旨いウニを食い、鹿肉を食い、旨い酒を飲んだことを覚えている。
エゾギクトリバ(蝦夷菊鳥羽):鱗翅目の昆虫
トリバガ科 日本全土、沖縄島、西表島などに分布 方言名:ハベル(ガの総称)
名前の由来は資料がなく正確には不明で、漢字表記の蝦夷菊鳥羽も私の勝手な想像であるが、根拠がない訳ではない。幼虫の食草がエゾギクなので蝦夷菊、鳥羽についてはサツマイモトリバの頁でも書いたようにトリバガ科の翅の形状が鳥の羽に似ているから。
本種の分布、日本全土、沖縄島、西表島の他、国外では台湾、ヨーロッパにもいる。成虫は前翅長5~8ミリ。成虫の出現は2~11月とのことで、私の写真も10月。
幼虫の食草はエゾギク、アレチノギクとある。エゾギクとは属名のアスターで園芸店などでよく見かけるキク科植物。沖縄ではおそらく帰化植物として、公園や民家の庭などにあるもの。アレチノギクは野原でも私の畑でもよく見るキク科植物。
記:ガジ丸 2018.4.4 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行
知られざる敵2
去年2017年8月、ナカジロシタバという名の蛾の1種を紹介した時、参考文献のその項目の文章を読んでいたら、「幼虫の食草はサツマイモ」とあり、「サツマイモの敵ということは、自給自足芋生活を目指している私にとっても不倶戴天の敵である」と私は書いている。その後間もなく、サツマイモトリバを調べていたら「サツマイモの害虫でサツマイモの葉肉部を摂食する」と文献にあった。ナカジロシタバのブログ記事のサブタイトルは『知られざる敵』で、「ならば」とサツマイモトリバのサブタイトルは『知られざる敵2』しようと決めて、記事を書こうとしたのだが、すっかり忘れていた。
サツマイモトリバの写真は2017年5月18日午後2時17分の日付時刻、日記を見ると、その日その時私は畑にいた。その頃は腰痛もほとんどなく元気だった。
サツマイモトリバのサブタイトルは『知られざる敵2』しようと決め、記事を書こうとしてから、その夏、前代未聞の酷暑が襲い、かつて経験の無い腰痛を患い、生まれて初めての挫折感を味わい、その後、引っ越しをして・・・などいろんなことがあった約8ヶ月間が過ぎて、やっと落ち着いて、やっと『知られざる敵2』を書くことになった。
サツマイモトリバの幼虫が「サツマイモの葉肉部を摂食する」とのことでサツマイモの害虫となっているようだが、「葉肉部」であり、芋そのもので無いならば、彼はさほどの害虫では無い。知られざる敵でなく、「知らなくてもいい敵」となるであろう。何せ、強敵が他にいたということに私は気付いてしまった。それは腰痛であった。
サツマイモトリバ(薩摩芋鳥羽):鱗翅目の昆虫
トリバガ科 徳之島以南の南西諸島、台湾などに分布 方言名:ハベル(ガの総称)
名前の由来は資料がなく不明、漢字表記の薩摩芋鳥羽は私の勝手な想像だが、根拠がない訳ではない。本種の食草がサツマイモなので薩摩芋、鳥羽は本種(他のトリバガ科のエゾギクトリバなども)の翅が鳥の翼のような見た目をしているから。
成虫は前翅長6ミリ内外。『沖縄昆虫野外観察図鑑』によると成虫の出現は周年で「4~5月と10~11月に発生が多い」とあり、私の写真も5月のもの。
幼虫は体長12ミリほどで全体に棘があるとのこと、私は未だお目にかかっていないが小さな毛虫のようである。サツマイモの害虫でサツマイモの葉肉部を摂食するとのこと。芋を食害されたら困るが、葉なら、大量発生したら要注意の虫となるかもしれない。
斜めから
記:ガジ丸 2018.4.2 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行