一人で飯を作り、一人で食い、一人で洗い物をし、一人で飲み、一人で寝る。職場でも一人のことが多く、畑仕事も一人で黙々とやっている。毎日が一人で過ぎていく。
他人との会話は一週間のうち、金曜日の職場で少々と、土曜日の友人Hの店で少々あるだけ、その他足しても週に3、4時間程度だ。そして、それに不満は無い。寂しい生活とも思っていない。むしろ、この自由は手放したくないという思いが強い。
「自由を手放したくない」は、私の結婚しない理由の一つになっているが、他に、貧乏であるという経済的理由と、雄としての生殖能力が弱いという理由もある。
過日、金曜日の職場に出勤し、いつものようにHPのアップ作業を始めようとしたら、先に来ていた事務員のM女史が、「ねぇ、ちょっと聞いてよ。」と言う。その日の朝、姉とちょっとした諍いがあったらしく、その愚痴。「誰かにしゃべらないと気が収まらないのよ。仕事も手に付かないのよ。」とのことで、十数分間、愚痴を聞かされる。
「私も姉も更年期でね、ちょっとしたことですぐイライラするさあ、よく考えればどうでもいいことなんだけどね。」とのこと。そのどうでもいいことを私は十数分間聞かされたわけだ。時々相槌を打ちながら、「こんなこと世の亭主たちは日常茶飯にあることなんだろうな、誰かが傍にいてくれることの代償なんだろうな」と思いながら。
先週金曜日、いつものようにHPアップ作業をしていると、「豆、食べる?」とM女史が訊く。そういえばさっきからボリボリという音が聞こえていた。その1時間ほど前にはシュークリームを食べていた。シュークリームは仕事の手を休めての休憩時間だったが、豆は仕事をしながら食っている。「要らない」と答えると、「何で?」と訊く。
「さっきシュークリームを食べたばっかりだし、もの食いながら仕事はし辛い。」彼女もパソコン作業だ、両手を使っているはず。「そっちだって同じだろう?」
「決算の書類作りが難しくてさあ、イライラするのよ。何か食べていないとやってられないのよ。」とのたまう。更年期はしょっちゅうイライラするみたいである。
友人の整体師Sによると、更年期障害はホルモンのバランスが崩れることによって起こり、さまざまな症状が現れるとのこと。イライラもその一つだ。バランスの崩れは、女性の場合は閉経の頃となる。その年齢は人によって異なるようで、友人のKY子は40歳頃にあり、別の友人KI子は「私今でも子供産めるわよ」と、このあいだ話していた。
更年期障害は男にもある。私は既に経験済み。KY子から少し遅れた40歳過ぎにあった。以来、雄としての能力が弱くなった。先日、整体師Sに診てもらった時もそれは指摘された。脳下垂体のその能力を司る部分が弱くなっているとのこと。
その時の治療は痛めた腿の筋肉に対してだったが、その数日後から、私の体の別の部分に変化があった。そういえば、治療の効果は全身にも及ぶとSは言っていた。「週に一回あるか無いかだった朝立ちが、週に数回となったが、これも効果か?」と訊くと、「それは俺も知らなかったが、そういうこともあるかもしれない」とのこと。「オジサンの青春は復活するのか?」とさらに訊くと、「そんなことは無い、歳相応になるだけだ」とのこと。歳相応なら安心だ。今さら復活しても、相手を探すのが困難なのだ。
記:2010.2.5 島乃ガジ丸