少数派シリーズ/交通網
知床観光船沈没事故4・検証◇大惨事はコロナ禍の収益不足による船主側の焦りが強引な出航に
■桂田社長の儲け主義、船長へは満足に訓練・経験をさせない体質に元凶があった
投稿者が新聞や資料などを集め、ここからは僭越ながら個人として検証を行う。4月23日、観光客ら26人を乗せた知床観光船が沈没した事故で、当日の未明に、強風注意報・早朝に波浪注意報という荒天が予測されたにも関わらず出航した。実際には出航したウトロ魚港でさえ、風速10数m・波の高さ3mが計測された。知床の海や潮の恐ろしさを熟知している地元の漁師は、出掛けなかった。あるいは波が穏やかな朝早々に、漁を切り上げ戻ってきている。投稿者としては背景の遠因に「コロナ禍の影響」、つまり観光客が集まらないことから船主側の収益不足への焦り、旅行会社も中々始まらないGOTO再開への焦りなどから、強引な企画があったと考える。地元の観光船数社の話し合いでは、4/28からの一斉出航の段取りだった。しかし事故を起こした知床遊覧船社だけが、抜け駆け的な出航をした。
元々の船主側経営者が代わり、旅館経営者・桂田精一社長が買い取った。他の観光船業者や漁師は、だから運航管理の甘さや海に慣れていなかったのだろうと言う。さらにはその間に従業員は全員クビ、給料を安く設定させ新規に採用した船長や従業員に代わった。現船長はそれまでに船長の経験はなく、埼玉出身で地元の海の動きには未熟だった。船長2年目のいわゆる“名ばかり船長”で、事故当日が今年初めてだった。船長は従前、SNSで自分の会社はブラック企業だと投稿、桂田社長から酷使されていたそうだ。一方、海仲間からも、操舵の未熟さを指摘されていた。1年目の昨年は浅い場所で座礁したり、漂流物にぶつかる事故を2度起こしている。TVニュースでは、昨年、乗船の観光客が何度も岩にぶつかりそうで怖かったと証言している。桂田社長は”金にうるさく”、船の維持に金を掛けていなかったという証言がある。船長の技能以前に、満足に訓練・経験をさせない経営者側の体質に元凶があったと考える。
■16年に15人死亡の軽井沢スキーバス事故に酷似・経営者の安全操業の軽視
そこには海の怖さを知らない新経営者、コロナ禍で一人でも多くの観光客を取りたい心理が働き、フライングしたのではないかと推察する。もう1点極めて重要な点は、出航のだいぶ前から船首にひび割れを起こしていたことが、漁師か他社観光船の方かは不明も指摘されていたことだ。もし分かっていて経営者が修理せずに放置していたら論外だ。ここにも経費削減、儲け第一主義が蔓延っていたとも予想される。経営者が修理を見過ごした点、あるいは船長さえ物が言えない企業体質があったのか。また未熟な船長や乗船員で、出航せざる得ない体質。2016年1月、15人が亡くなった軽井沢スキーバス事故、冬道や夜行運転が未経験な運転手を強引に運転させたこの事故に酷似している。経営者の安全操業の軽視、きつい労働条件、儲け主義が根底にあったと推測する。確かに、コロナ禍の厳しい条件が加算される。しかしコロナだからこそ、慎重な対応が求められる。
最後は、コロナ禍が2年続き、斡旋した全国の旅行会社や運航会社に焦りがあったのではと考える。GOTOトラベルの前哨戦待ちの、旅行会社にも責任がある。北海道の観光関係者は、「今の時期、知床半島の先端は海が落ち着かない。通常は5月半ばなら行けるが、この時期は早過ぎる。」と指摘する。船主側の焦り、早期の運航をけしかける旅行会社の魂胆に見え隠れする。今回は業者側2者が悪いが、飽くまでも一般論としてこんな問題も潜在する。どこの観光地でも天候悪化から運航中止でもしたら、お客から「東京や大阪からわざわざやって来たのに中止とは、ふざけるな!金返せ!」と怒鳴られることが多いそうだ。客とのトラブルを避けたく、総じて業者側は無理な出航をせざるを得なくなる。
次号/知床観光船沈没事故5・検証◇船舶管理者の安全意識が緩むのは国交省の緩い検査
前号/知床観光船沈没事故3・道東エリアは海保機動救難士が1時間で到着できない空白海域だった
知床観光船沈没事故4・検証◇大惨事はコロナ禍の収益不足による船主側の焦りが強引な出航に
■桂田社長の儲け主義、船長へは満足に訓練・経験をさせない体質に元凶があった
投稿者が新聞や資料などを集め、ここからは僭越ながら個人として検証を行う。4月23日、観光客ら26人を乗せた知床観光船が沈没した事故で、当日の未明に、強風注意報・早朝に波浪注意報という荒天が予測されたにも関わらず出航した。実際には出航したウトロ魚港でさえ、風速10数m・波の高さ3mが計測された。知床の海や潮の恐ろしさを熟知している地元の漁師は、出掛けなかった。あるいは波が穏やかな朝早々に、漁を切り上げ戻ってきている。投稿者としては背景の遠因に「コロナ禍の影響」、つまり観光客が集まらないことから船主側の収益不足への焦り、旅行会社も中々始まらないGOTO再開への焦りなどから、強引な企画があったと考える。地元の観光船数社の話し合いでは、4/28からの一斉出航の段取りだった。しかし事故を起こした知床遊覧船社だけが、抜け駆け的な出航をした。
元々の船主側経営者が代わり、旅館経営者・桂田精一社長が買い取った。他の観光船業者や漁師は、だから運航管理の甘さや海に慣れていなかったのだろうと言う。さらにはその間に従業員は全員クビ、給料を安く設定させ新規に採用した船長や従業員に代わった。現船長はそれまでに船長の経験はなく、埼玉出身で地元の海の動きには未熟だった。船長2年目のいわゆる“名ばかり船長”で、事故当日が今年初めてだった。船長は従前、SNSで自分の会社はブラック企業だと投稿、桂田社長から酷使されていたそうだ。一方、海仲間からも、操舵の未熟さを指摘されていた。1年目の昨年は浅い場所で座礁したり、漂流物にぶつかる事故を2度起こしている。TVニュースでは、昨年、乗船の観光客が何度も岩にぶつかりそうで怖かったと証言している。桂田社長は”金にうるさく”、船の維持に金を掛けていなかったという証言がある。船長の技能以前に、満足に訓練・経験をさせない経営者側の体質に元凶があったと考える。
■16年に15人死亡の軽井沢スキーバス事故に酷似・経営者の安全操業の軽視
そこには海の怖さを知らない新経営者、コロナ禍で一人でも多くの観光客を取りたい心理が働き、フライングしたのではないかと推察する。もう1点極めて重要な点は、出航のだいぶ前から船首にひび割れを起こしていたことが、漁師か他社観光船の方かは不明も指摘されていたことだ。もし分かっていて経営者が修理せずに放置していたら論外だ。ここにも経費削減、儲け第一主義が蔓延っていたとも予想される。経営者が修理を見過ごした点、あるいは船長さえ物が言えない企業体質があったのか。また未熟な船長や乗船員で、出航せざる得ない体質。2016年1月、15人が亡くなった軽井沢スキーバス事故、冬道や夜行運転が未経験な運転手を強引に運転させたこの事故に酷似している。経営者の安全操業の軽視、きつい労働条件、儲け主義が根底にあったと推測する。確かに、コロナ禍の厳しい条件が加算される。しかしコロナだからこそ、慎重な対応が求められる。
最後は、コロナ禍が2年続き、斡旋した全国の旅行会社や運航会社に焦りがあったのではと考える。GOTOトラベルの前哨戦待ちの、旅行会社にも責任がある。北海道の観光関係者は、「今の時期、知床半島の先端は海が落ち着かない。通常は5月半ばなら行けるが、この時期は早過ぎる。」と指摘する。船主側の焦り、早期の運航をけしかける旅行会社の魂胆に見え隠れする。今回は業者側2者が悪いが、飽くまでも一般論としてこんな問題も潜在する。どこの観光地でも天候悪化から運航中止でもしたら、お客から「東京や大阪からわざわざやって来たのに中止とは、ふざけるな!金返せ!」と怒鳴られることが多いそうだ。客とのトラブルを避けたく、総じて業者側は無理な出航をせざるを得なくなる。
次号/知床観光船沈没事故5・検証◇船舶管理者の安全意識が緩むのは国交省の緩い検査
前号/知床観光船沈没事故3・道東エリアは海保機動救難士が1時間で到着できない空白海域だった