魚を大事にしない日本人シリーズ R1-18
ROUND1 江戸前から繋がる世界の海 Part3豊洲新市場の危険性(移転すべきではない)
豊洲市場は毎年100億円以上の大赤字を垂れ流す経営感覚なき過剰巨大施設に
晴海
■水産物取扱量が半減する中、豊洲市場は1.6倍の取扱量を見込む無謀な計画
豊洲市場の問題点を取り上げる連載も終盤に向かい、そもそも論として2点申し上げておきます。1つめは、豊洲市場は大赤字を垂れ流す「過剰巨大物流センター化」することです。市場背景を見ると、築地市場の水産物取扱量は1989年(H1)75万トンだったものが、2017年は381,024トンとほぼ半減しています。都が公表した、2023年度までの取扱量の見込み・財政計画などの「事業計画書」によると、根本的な問題として2023年度の供給対象人口は現段階から5万人減の1414万人と推計しています。にも関わらず、豊洲市場の23年度の取扱量は水産物が616,400トンと、現状から1.6倍に増えると予測しています。供給人口5万人減も実際はもっと多いのではないかなど、取扱量の大幅増の予測に、専門家から疑問視する声があがっています。
また農水省の資料でも、水産物の全国の市場経由取扱量は1989年75%から、2014年には50%に激減しているのです。都の中央卸売市場は築地を始め大田市場など11箇所あり、水産物・青果物・食肉・花などが取引されています。こと都の中央卸売市場に至っては、2016年度はせり入札の比率が水産物13.9%、青果部は2.1%ほどしかないのです。大手スーパーや外食産業などによる、せり入札をせずに卸業者から購入する相対取引の増加、市場を介さない「産直」に転化しているからです。残念ながら、私達の“魚離れ”(魚の摂取量の減少)もかなり進んでいるのです。こうした物流背景も鑑みず、豊洲は築地に比べ取扱量を1.6倍に拡大想定の上で、建設されたものです。従って豊洲市場は、“経営感覚(戦略)なき巨大な物流センター”と言われ、将来の需要予想から乖離した、過剰な巨大施設なのは明らかです。
豊洲市場も他の官庁建築物(いわゆるハコモノ)と同様に、無理やり需要予測の数値を増やし、過剰な施設を造ったのは明らかです。それも前号のように、業者談合を許し落札率がほぼ100%に近く、大手ゼネコンを儲けさせるためです。都の役人側も“天下り”や他の恩恵がある?からこそ、不正を「公然」と見逃し・黙認しているのでしょう。その結果、毎年100~150億円の赤字を垂れ流し、経営が成り立たないことが事前から想定されているのです。こんな無謀な計画によって赤字が膨らみ、今後さらなる税金が投入されることは必至、市場業者の使用料負担の増大、ネタ価格高騰など~結局、都民ならず国民にツケが回されるのです。豊洲市場への移転に対し、そもそもと言うか移転目的が市場業者のためではなく、ゼネコン・役人のためなことがお分かり頂けたでしょう。豊洲移転は市場業者の死活問題に繋がり、そして都民も不安・不衛生なネタを食べざるを得ないのです。
■民営化・資本主義の色合いが強まり大手流通資本に市場が変質させられる
2つめが今年2018年に国会で卸売市場法が成立(改正)され、中央卸売市場の開設が自治体の他に、民間企業の参入も認められました。卸がセリを通さず、従来、資格がなかった場外業者と取引できます。一見、良さそうに思えますが、力が強い・利益第一の大手流通資本に、市場が変質させられてしまいます。セリよって公平に価格維持・魚の入手ができたものが困難になり、中小の仲卸業者に水産物が回らなく恐れが出てきます。専門家は、資本主義の導入によって「ボロ儲けできる者だけ市場に残って下さい」と言っているようなものだと指摘します。苦渋の決断で豊洲に移転した卸や仲卸さえ、第二の淘汰が始まります。築地で産地と消費者の双方を守って来た業者を、壊滅することになるのです。小池都政、市場に資本主義を持ち込む自民党・公明党によって、豊洲も築地も崩壊の方向へ進みます。都民の食生活を維持するためにも、築地市場の「再構築」に声を上げるべきです。
前号/豊洲市場の建築棟はゼネコンの談合によって言いなりの落札率99.87%