少数派シリーズ/気象・季節・暦
お正月②年賀状B|目上の方への賀詞は「謹賀新年」を!「新年明けまして」は間違った使い方
■“年賀状終い”する方が増えているが続ける方はこの際に書き方にご注意を!
お正月特集の2回目です。毎年書いている年賀状でも、相手に失礼な賀詞を使っていませんか?代表的な誤りが、上司や目上の方に「謹賀新年」を使わず“賀正”や“迎春”を書いていること。また「新年明けましておめでとうございます」も、大人としては基本的にアウトです。“年賀状終い”する方が増えていますが、引き続き続ける方はこの際に改めて書き方にご注意を!和文化研究家・日本礼法教授の齊木由香先生が出演したTV番組を参考にして説明します。
「謹賀新年」以外の賀詞は正月を祝うだけで相手を敬っていないからNG
目上(上司)や重要な方、顧客には「謹賀新年」にすることが必須。謹賀新年は、謹(つつし)んで新年をお祝い申し上げますの意で、「謹」の字には謹む・敬(うやま)う意が含まれるので好ましい。「恭賀新正」(きょうがしんしょう)・「恭賀新年」も、「恭」にうやうやしさが含まれるのでOK。一方、賀正・迎春・頌春(しょうしゅん)・壽(寿)は、正月や新しい年を褒めたたえるだけで、相手への敬意が含まれていないから駄目。そもそも目上の方に、1文字・2文字程度の賀詞そのものが宜しくないとされる。参考までに「賀正」は「恭賀新正」の略で、前述の理由から好ましくない。
離婚した人や不幸があったばかりの人宛ての年賀状は、正月でも「おめでとう」や「祝う賀詞」を避けること。そんな場合は、「謹んで新年のご挨拶を申し上げます」がピッタリで、失礼がない。
「新年あけまして~」は誤用、本当は“旧年が明けた”からめでたいのである
今後の号「お正月はどうしておめでたいの?」のパーツで紹介するが、対面あるいは年賀状で「新年明けましておめでとうございます」が定着していても、できれば避けたほうがよい。なぜなら別番組の林修先生は、「梅雨が明ける」「夜が明ける」など『明ける』ことは、“終わる”ことを言う。本来の意味で言うなら、「旧年が明けまして~」になる。子供や学生ならば「新年明けまして~」でも許されるが、大人は「新年おめでとう~」か「明けましておめでとう~」にするのが妥当と言っている。
年賀状に時候の挨拶は不要、既に「賀詞」に書いてあるから
「新春の候」などついつい時候を入れたくなるが、「謹賀新年」など既に賀詞に時候が書いてあるので不要、重複になる。そもそも論で、年賀状の添え書きは時候を書かないことがマナーとされる。「旧年中は~」正月の季語であり、新年と対比する言葉だから良い。「昨年」は、忌み言葉でないので使える。しかし「去年」は、去る・死去などに通じ縁起が悪い言葉だからNG。結婚式の挨拶同様、「離れる」「負けない」もやめたほうがいい。
文面には「句読点」を付けないこと、古い日本語文章の名残
古い日本語の文章には、元々「句読点」がなかった。句読点の成り立ちは、中国などから入ってきた説があり平安時代には存在した。大きく広まった理由が江戸時代や明治の頃、文章がうまく読めない庶民のためにわざわざ付けた経緯がある。年賀状に句読点を付けないのは、古い時代の日本語文章の名残とされる。句読点は、「終わり」や「区切り」を付ける忌み言葉として捉えられ好ましくない。「!?」の感嘆符も相応しくない。なお西暦表記や洋数字は問題ないが、縦書きの文章に数字だけ「2025年」と横書きするのはよくない。
投稿者追記/昨今は若い人の間でLINEなどSNSに句読点を付けると、オジサン扱いやパワハラと感じるそうだ。若い人は、喜ばしいことに古式ゆかしい日本の文(ふみ)を継承していくことになる(笑)。
一月一日元旦と書かずに、正しくは「元旦」だけでよい。
前号にも書き、クイズ番組でよく出される間違い例。「元旦」の意味は、「一月一日の朝」のことを言う。だから、「元旦」の一言だけでよい。因みに、「旦」の字は水平線から太陽が出ること(日の出)を表す字と言われている。
■年賀状の簡単な歴史と「お年玉付き年賀はがき」を提案したのは一人の画家
NHK番組「チコちゃんに𠮟られる」を参考にした。年賀状は、既に平安時代に貴族の間で行われていた。江戸時代に、庶民の間でも広がった。1871(M4)年、郵便制度が開始し、73年に官製はがきが誕生すると、年賀の挨拶が郵便でできると爆発的なブームが起きた。戦後は激減し、逓信省(ていしんしょう=現・総務省)は苦慮した。そんな時、郵便業務とは関係のない一人の画家・林正治氏が「お年玉付き年賀はがき」を発案した。発端となったのが、1949(S24)年当時、平均月収8000円に対しミシンは2万円もする憧れの高級品。庶民が当たる賞品付きにした年賀はがきを作れば大ヒットする予想の下、「当たる年賀郵便」のフレーズを作る・年賀募金(現在も続く寄付金付き)も提案した。そうすれば、国民の数々に年賀状が送れると考えた。大阪郵政局に提案したが、あえなく却下。東京・逓信省の事務次官と知り合いの東京にいる友人経由で熱い意気込みの直談判の結果、鶴の一声で採用が決まった。昭和24年の第1回目の賞品は、特等・高級ミシンだった。なお林氏は画家であり発明家・アイディアマンで、ヒットしたのが子供でも安全に使える牛乳瓶の栓抜きだ。皆様もたぶんご存じの、先の部分の釘を囲むように丸い輪が付いたもの。
投稿者追記/全てプリンターを使った年賀状を嫌う人がいるが、年賀状の歴史を見れば段々簡易的になっている。昔の武家や商人は、正月にわざわざ相手宅を訪問して挨拶を交わした。江戸時代や明治以降は、年賀状を代用。年賀状も昔の筆書きから、ペン書き、ゴム判子、印刷屋へ依頼、さらには自分でプリンター印刷に。それこそ、今やSNSに。プリンターやSNSは味気ないと言う人もいるが、仕方ない自然の流れ。交流をすることに意味があり、あまり形式に文句を言うべきではないと考える。
前号/お正月①年賀状A|年賀はがきと年賀状の違いが分かりますか?しっかり使い分けを
お正月②年賀状B|目上の方への賀詞は「謹賀新年」を!「新年明けまして」は間違った使い方
■“年賀状終い”する方が増えているが続ける方はこの際に書き方にご注意を!
お正月特集の2回目です。毎年書いている年賀状でも、相手に失礼な賀詞を使っていませんか?代表的な誤りが、上司や目上の方に「謹賀新年」を使わず“賀正”や“迎春”を書いていること。また「新年明けましておめでとうございます」も、大人としては基本的にアウトです。“年賀状終い”する方が増えていますが、引き続き続ける方はこの際に改めて書き方にご注意を!和文化研究家・日本礼法教授の齊木由香先生が出演したTV番組を参考にして説明します。
「謹賀新年」以外の賀詞は正月を祝うだけで相手を敬っていないからNG
目上(上司)や重要な方、顧客には「謹賀新年」にすることが必須。謹賀新年は、謹(つつし)んで新年をお祝い申し上げますの意で、「謹」の字には謹む・敬(うやま)う意が含まれるので好ましい。「恭賀新正」(きょうがしんしょう)・「恭賀新年」も、「恭」にうやうやしさが含まれるのでOK。一方、賀正・迎春・頌春(しょうしゅん)・壽(寿)は、正月や新しい年を褒めたたえるだけで、相手への敬意が含まれていないから駄目。そもそも目上の方に、1文字・2文字程度の賀詞そのものが宜しくないとされる。参考までに「賀正」は「恭賀新正」の略で、前述の理由から好ましくない。
離婚した人や不幸があったばかりの人宛ての年賀状は、正月でも「おめでとう」や「祝う賀詞」を避けること。そんな場合は、「謹んで新年のご挨拶を申し上げます」がピッタリで、失礼がない。
「新年あけまして~」は誤用、本当は“旧年が明けた”からめでたいのである
今後の号「お正月はどうしておめでたいの?」のパーツで紹介するが、対面あるいは年賀状で「新年明けましておめでとうございます」が定着していても、できれば避けたほうがよい。なぜなら別番組の林修先生は、「梅雨が明ける」「夜が明ける」など『明ける』ことは、“終わる”ことを言う。本来の意味で言うなら、「旧年が明けまして~」になる。子供や学生ならば「新年明けまして~」でも許されるが、大人は「新年おめでとう~」か「明けましておめでとう~」にするのが妥当と言っている。
年賀状に時候の挨拶は不要、既に「賀詞」に書いてあるから
「新春の候」などついつい時候を入れたくなるが、「謹賀新年」など既に賀詞に時候が書いてあるので不要、重複になる。そもそも論で、年賀状の添え書きは時候を書かないことがマナーとされる。「旧年中は~」正月の季語であり、新年と対比する言葉だから良い。「昨年」は、忌み言葉でないので使える。しかし「去年」は、去る・死去などに通じ縁起が悪い言葉だからNG。結婚式の挨拶同様、「離れる」「負けない」もやめたほうがいい。
文面には「句読点」を付けないこと、古い日本語文章の名残
古い日本語の文章には、元々「句読点」がなかった。句読点の成り立ちは、中国などから入ってきた説があり平安時代には存在した。大きく広まった理由が江戸時代や明治の頃、文章がうまく読めない庶民のためにわざわざ付けた経緯がある。年賀状に句読点を付けないのは、古い時代の日本語文章の名残とされる。句読点は、「終わり」や「区切り」を付ける忌み言葉として捉えられ好ましくない。「!?」の感嘆符も相応しくない。なお西暦表記や洋数字は問題ないが、縦書きの文章に数字だけ「2025年」と横書きするのはよくない。
投稿者追記/昨今は若い人の間でLINEなどSNSに句読点を付けると、オジサン扱いやパワハラと感じるそうだ。若い人は、喜ばしいことに古式ゆかしい日本の文(ふみ)を継承していくことになる(笑)。
一月一日元旦と書かずに、正しくは「元旦」だけでよい。
前号にも書き、クイズ番組でよく出される間違い例。「元旦」の意味は、「一月一日の朝」のことを言う。だから、「元旦」の一言だけでよい。因みに、「旦」の字は水平線から太陽が出ること(日の出)を表す字と言われている。
■年賀状の簡単な歴史と「お年玉付き年賀はがき」を提案したのは一人の画家
NHK番組「チコちゃんに𠮟られる」を参考にした。年賀状は、既に平安時代に貴族の間で行われていた。江戸時代に、庶民の間でも広がった。1871(M4)年、郵便制度が開始し、73年に官製はがきが誕生すると、年賀の挨拶が郵便でできると爆発的なブームが起きた。戦後は激減し、逓信省(ていしんしょう=現・総務省)は苦慮した。そんな時、郵便業務とは関係のない一人の画家・林正治氏が「お年玉付き年賀はがき」を発案した。発端となったのが、1949(S24)年当時、平均月収8000円に対しミシンは2万円もする憧れの高級品。庶民が当たる賞品付きにした年賀はがきを作れば大ヒットする予想の下、「当たる年賀郵便」のフレーズを作る・年賀募金(現在も続く寄付金付き)も提案した。そうすれば、国民の数々に年賀状が送れると考えた。大阪郵政局に提案したが、あえなく却下。東京・逓信省の事務次官と知り合いの東京にいる友人経由で熱い意気込みの直談判の結果、鶴の一声で採用が決まった。昭和24年の第1回目の賞品は、特等・高級ミシンだった。なお林氏は画家であり発明家・アイディアマンで、ヒットしたのが子供でも安全に使える牛乳瓶の栓抜きだ。皆様もたぶんご存じの、先の部分の釘を囲むように丸い輪が付いたもの。
投稿者追記/全てプリンターを使った年賀状を嫌う人がいるが、年賀状の歴史を見れば段々簡易的になっている。昔の武家や商人は、正月にわざわざ相手宅を訪問して挨拶を交わした。江戸時代や明治以降は、年賀状を代用。年賀状も昔の筆書きから、ペン書き、ゴム判子、印刷屋へ依頼、さらには自分でプリンター印刷に。それこそ、今やSNSに。プリンターやSNSは味気ないと言う人もいるが、仕方ない自然の流れ。交流をすることに意味があり、あまり形式に文句を言うべきではないと考える。
前号/お正月①年賀状A|年賀はがきと年賀状の違いが分かりますか?しっかり使い分けを