農薬混入事件を考察してみる

今、世間を一番騒がせているニュースは冷凍食品への農薬混入事件だと思います。
私もかつてマルハニチロと同じ業界の水産系食品メーカーに長く勤務していたので他人事のようには思えません。
この事件への考察をしてみようと思います。
まず最初に一言、中国での餃子事件もそうでしたが、どこにでも必ずおかしい人間はいるのです、上司や工場長あるいは同僚等から嫌な思いをさせられ何か仕返しをしてやりたい…そこまでは誰でも考えたことがあるかもしれません、しかし実際にそれを実行するか？実際にはしないことがほとんどだと思います、しかもそれが毒物である農薬の混入ともなると頭では考えても普通そんな事は出来ないと思います、でもいるんです世の中には。
食品へのクレームの多くに、異物混入というのがあります、これは大きくは２つに分けられます。
１つは夾雑物の混入、これは例えばカキフライに貝殻が混入していた、魚の切り身に海草が貼り付いていた…これらは自然界で共存し一体または隣接していて製造工程上それらを除去しきれずに混入してしまうモノを指します。
もう１つは異物混入、これはコロッケにガラスの破片が混入していた、グラタンに針金が入っていた…等で、本来原料に含まれるはずのない異物が混入してしまうケースです。
この異物混入とは、例えばグラタンの原料であるムキエビに針金が入っていたとします、これは製造中でムキエビを配合する際に目視及び手による検査で異物を除去、場合によっては原料を金属探知機に通して除去します、もっと綿密な場合はＸ線での検査という方法もあります、でも実際には原料段階でＸ線に掛けるなんてことはしないと思いますが。
これらの検査を通過して最終段階の製品に混入してしまうのが異物混入です、しかしこの場合は原料に入っていた、または工場内に針金が落ちていた、従業員の作業着に針金が付着していた…これらの理由で不本意にも製品に混入してしまったのです。
しかし今回の事件、中国での農薬混入事件もそうですが、たまたま従業員の身体や作業服に農薬が付着していた、なんてことは絶対にありません、原料の野菜に農薬が残留していた、なんていう濃度ではありません、原液がそのまま混入しているのです、つまり意図的な犯罪です。
では、どの段階でなされたのか、原料をニーダー他の撹拌機で撹拌する工程以降包装までに混入した、もう１つは出荷前後から搬送中になされた、現在報道されている情報ではこの段階以外は考えられません。
この根拠は、製造工程中、撹拌以前の原料段階では、１）さすがに異臭に気が付く２）例えばムキエビ１０に対して農薬１０を混入させたとしても、それは出来上がる全体量からの比率で考えると今回発表されているほど高濃度にはならない、という事です、ムキエビは原料の単なる１つでしかないからです。
それから、工場から冷凍車での搬送後では全国にこれらの商品が拡散しない、一部の地域に限定されてしまうからです。
現在の報道では、包装袋や段ボールカートンに針で開けたような穴は発見されていないとされています、本当かな？とも思います、犯人が極めて細い注射針で行ったとしたらなかなか見つけにくいのではないかと思うからです、販売店等に納品された商品は段ボールカートンから取り出され、そのカートンってものすごく邪魔になるので直ちに廃棄してしまうモノです、もうほとんどの場合はその証拠品は無くなってしまっているのです。
もし本当に、カートン並びに製品の小袋にも全く穴が空いていないと断言出来るのであれば、もう犯人は原料の撹拌以降小袋包装までに混入した、それ以外考えられません、つまりその工程内に存在し得る人間が犯人です。
今、警察他は多方面から調査しているのでしょうが、包材に本当に穴は空いていないのか？それを確定すべきです。
そうしたら犯人は限定されます。
通常、工場では製品に対して誰が従事したのか、そういう記録は残っているはずです。
今回の事件はいくつかの製品から発見されています、その総ての商品の製造にも関与していた人間が犯人です。
そうなると全従業員ではなく、おそらく２０～３０人位までには絞られてくるかと思います。
もし、カートンや小袋にも穴が空いていた…そうなると残念ながら捜査は長引いてしまうでしょう。
願わくば、製造工程内の犯罪であり速やかに犯人が捕まり、２度とこのような事件が起こらないように努めて欲しいモノです。
しかしこういう人間は必ずいるのです、だからこういう事件は無くならないのですが、それでも減らしていかなければならないのです。

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