ビデオに撮っていた「イージーライダー」(1969年米国)を見た。ピーター・フォンダ、デニス・ホッパーが演じるアメリカ人ヒッピーの若者二人が主人公の青春映画である。主題曲となったステッペンウルフの"ワイルドで行こう♪"
という軽快な曲は、今でもコマーシャルで使われているくらいなので、この映画を見たこともない世代の方々でも聞いたことはある筈だと思う。
映画の前半は、チョッパーと呼ばれる前輪の長いバイクで、アメリカ南部の美し風景と数々の音楽をバックに、ゆったりと旅するアメリカのライダーを描いた綺麗な映画なのだが、後半は、当時の南部アメリカ保守社会が持つ偏見を描いた怖い映画なのである。途中、出会った地元の有力者のアル中の馬鹿息子役のジャック・ニコルソンと共に、旅を続けるのであるが・・・。とある田舎町で、地元の人間から白眼視された上に、結局は3人とも殺されてしまうという、アメリカ映画としては、悲劇で終わる珍しい映画なのである。
この映画から数年後の1977年頃、私は日本人の友人達と3人で、車でアメリカ南部を横断した経験がある。メキシコから北上して、テキサス州エル・パソからアメリカに入り、ニューメキシコ、アリゾナからカリフォルニアに向かったのであった。その途中、Back Eyeなる白人しか見当たらないような小さな町のカフェテリアというかレストランに、休息と昼食のために入ったのであるが・・・。
一人を除いて、長髪でヒッピーのような薄汚い私達を店で待ち受けていたのは、カウボーイハットを被った地元の客である白人達の冷たい視線だった。「何しに来たんだ?こいつら!」とあからさまに思っているような、凍るような冷たい視線であったのだ。私は、完全に固まってしまい、椅子に座るのがやっとだった。それは、映画「イージーライダー」のシーンを思い出してしまったからだった。正直、私は殺されると思ったのである。
そこへ、エプロンを巻いたごつい男がメニューを持って「何がほしい?」と聞いてきた時には、助かったと思ったのである。映画では、店の人間は注文さえも取りに来なかったからである。私達は、サンドイッチやコーヒーを注文し、無言で食事をした。私ばかりでなく、他の二人も怖かったからである。そうして、さっさと勘定を済ませ、逃げるようにこの店を出たのであった。
「やばかったよなぁ!」
「ああ、殺されるかと思ったよ」
「俺もだ」
「早くこの町を出ようぜ!」
ところが、ガソリンが残り少なかったのである。
「どうする?ガソリンがもう無くなるぞ!」
「次の町まで持つかなぁ?」
「無理だな。ガス欠で途中で止まったら、今度は本当に殺されてしまうかも。」
「そうだなぁ。仕方がないから、町外れにあるガソリンスタンドで入れて行こう!」
てな訳で、そのガソリンスタンドに入ったのだが、店員は誰もいない。と、思ったら、どこからかスピーカーで「セルフ・サービスだ!」との声が聞こえた。事務室側を目をこらして見てみると、望遠鏡でこちらを観察している男が確かにいる。更に、よ~く見ると、その男の後ろにはライフル銃が置いてあるように見える。
「さっさと、ガソリン入れて出ようぜ!」
私達は慌てて、キャップを外してガソリンを入れ始めた。「カチッ」と満タンの音がして、給油ノズルを戻した途端、「XXドルだ!支払いは事務室だ!」との声が再びスピーカーから聞こえた。年長者が慌てて支払いに行き、戻って来て一言
「やっぱり、ライフル持っていやがる。さっさと、この町を出よう。殺されちまう!」
町を出て、しばらくは無言だった私達だったが、次の町が見えたとき、「助かったね!」「そうだ助かった!」と初めて笑いになった。
でも、僅か数年前までのアメリカ南部は、「有色人種と犬の入店はお断り」と書かれた張り紙が所々見られたような土地なのである。勿論、今ではとても考えられない話ではあるのだが・・・。
読みながらその場面を想像して、一緒にドキドキヒヤヒヤしてしまいました(>_<)
先生無事で良かったです(^^)
映画のような出来事ですね。
「イージーライダー」は観たことがないのですが、
主題歌は、有名ですよね!
ストーリーは知っていました。
実体験ならではの緊張感が伝わってきましたよ。
本当に無事でなによりです。
そういえば海外に旅行に行く時には靴下や靴の中
にタクシー代くらいのお金を入れておいたほうが
いいと聞きました。強盗にあったときのためだそうで
お金より命が大事だからだそうです。
私もアメリカンタイプの単車にまたがって広い
まっすぐな道を走ってみたいです^^
中型しか乗れませんが^^;
コメントありがとうございました。また、夏休みで強羅に行っていたもので、返事が遅れて済みません。
当時、まだ22歳で若かったので恐い物ナシだったのですが・・・。さすがに、カウボーイハット被った白人(たぶ5~6人)ばかりが、一斉に我々の事をジロッと見た時は、映画のシーンよりも恐かった記憶があります。
68年にキング牧師が暗殺され、72年に沖縄返還、75年にベトナム戦争からアメリカが撤退し、事実上敗北したといった時代でしたから・・・。
コメントありがとうございます。映画ですが、ヒッピーといってもピーター・フォンダなんかは格好良いですし、デニス・ホッパーの格好でも、今だったら普通ですが・・・。
ワイルドで行こう「Born to be wild♪」は、今聞いても古い感じがしない曲です。映画よりも、この曲と、アメリカンチョッパーが流行った時代でした。
ちなみに、ステッペンウルフは、この後直ぐに解散しちゃったんです。
コメントありがとうございました。アメリカよりも中南米は、もっと物騒なところで、私は、タクシー代ほどの紙幣は常に隠し持って(ベルトの裏とかズボンの内ポケットとか・・。)いました。
また、幸いなことに私にはありませんが、多くの友人が拳銃を突きつけられたり、身ぐるみ剥がされたりの経験があるのです。それこそ「持ってけ、泥棒!」くらいのつもりでないと、本当に命を落とします。
泥棒や強盗は、金をくれてやれば滅多に人殺しまではしませんが、昔の南部の人種偏見者は、訳もなく有色人種や異教徒を敵視し、場合によってはリンチにかけ、殺人となってしまう事もある訳ですから、却って恐かったのです。
ところで、バイクに乗りたい気もするのですが、転倒したら、もう大けがでは済みそうにない年ですから(>_<)・・・。
アメリカの映画やドラマって、しょっちゅうピストルでバンバンやってますよね。
それをみて、たまに思うのですが、銃口を向けられたときはどんな思いがするのだろう、
銃で撃たれたらどれだけ痛いのだろうと。
よその国とはいえ、やはり銃社会はやめてほしいです。
スタローンやシュワルツネッガーが出る映画のようには決して行きません。彼らのように鍛えた強靱な肉体でも、たった1発でお終い!それが、銃なのです。
南北アメリカでは、どこの国でも銃社会です。恐ろしい限りです。