日々の恐怖 8月17日 輸入雑貨の卸業(2)
倒れている人のところに数人が駆け寄ると、うつぶせのものを仰向けにし、なおかつ一人が上半身を抱き起こし、揺さぶり始めました。
Sさんは、
” あちゃ~、あんだけ頭打ってるのに動かすなよ・・・。”
と思いましたが、そういうときはかかわらないことが最善の選択なので、だまって見ていました。
その後、被害者を動かしている拍子に、被害者の顔だけがクルッとこちらを向きました。
” ウワッ・・・、ヤバッ・・・・!
俺、見られてるような・・・・。”
Sさんは、被害者と目が合ったような気がしました。
でも、
” いや、気を失っているし、気のせいか・・。”
とも思いました。
その後も、倒れたままの被害者に平手打ちをするわ、無理やり口をこじ開けて水か酒を飲ませようとするわで、
” こりゃ、黙ってれば助かるかもしれないものを、こいつらが殺してるよな。”
と思ったそうです。
ま、現地人は善意でやってたんでしょうけども。
そのうちに派手なマークの入った救急車が来ました。
が、救急隊員が降りてくる前に加害者の男が駆け寄って、運転席に向かって何やら言い、救急車は引き返しちゃったんです。
これは、その救急車はおそらく目撃してた通行人が呼んだもので、私設のというか、大病院に付属してて、契約者しか助けにこないやつ。
つまり有料だし、車体に入ったマークの高級病院に搬送されることになります。
加害者の男はそれを嫌って返したんでしょう。
それから10分ほど見ていても、警察も公営の救急車も到着せず、その間、被害者はまったく動かず、加害者は見下ろしながら煙草を吸い出しました。
” これはアカンだろうな・・・。”
さすがに胸くそが悪くなってきて、Sさんはそこの屋台を離れて、もう一つ奥の通りに入って飲み直しました。
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