日々の出来事 1月25日 日本最低気温
今日は、日本最低気温が記録された日です。(1902年1月25日)
1902年1月25日、北海道旭川市で日本最低気温の-41.0℃が気象庁の公式記録として観測されました。
しかし、その後、1978年2月17日に幌加内町母子里の北海道大学演習林で-41.2℃が観測されましたが、これは気象庁の公式記録の対象から外れていたため、旭川市の記録が公式の日本最低気温の記録となっています。
この幌加内町母子里(ホロカナイチョウ モシリ)の町名は、町の南部を流れる幌加内川から来ており、ホロカナイとはアイヌ語で“逆に流れる”、モシリは“世界”と言う意味を持っています。
山に囲まれた高地の盆地にある幌加内町は、10月中旬から雪が降り、翌年の4月頃まで雪の中です。
今でも最低気温は-30℃以下になり、積雪は3m、除雪後は道路の両側にこの3mの雪壁が出来ます。
そして、この幌加内町は日本一人口密度が低い町です。( 人はいます。 )
また、幌加内町に行くと日本最低気温のアピール看板も立っています。( 日本最寒地到着証明書の記念カードもあります。 )
地球温暖化から言って、日本最低気温の記録が塗り替えられ、他の地域になることはもう無いと思われます。
☆今日の壺々話
吹雪の話
昔、連絡網ってのがありました。
もう20年以上前の事ですが暴風雪警報が出ていて、
「 明日は吹雪なので、10時登校。 」
と言う連絡が途中から、
「 明日は吹雪なので、ジャージ登校。 」
に伝わってしまい、3人の生徒が普通に八時半からジャージ姿で教室にいました。
【お悩み相談】ずうずうしい野良猫の話
Q:通ってくる野良猫が大変にずうずうしく、困っています。
始めは家の外でみゃーみゃー鳴いて飯をねだる程度だったのですが、冬の寒空、外は辛かろうと一度玄関に泊めたのが運の付き。
それから飯をねだるだけでなく、毎日家の中に入ってきて、6kgの巨体でホットカーペットを占領するようになりました。
野良の分際で、根が生えたようにホカペから離れず、
家人が部屋のドアを開け閉めすれば寒いと鳴き、
部屋から人がいなくなれば誰か来いと鳴き、
人が来たら来たで撫でろと鳴き、さらには膝に乗せろと要求する始末。
それでいて、自分が外に出たいときにはとっとと窓際に行き、夜中だろうが家人が寝てようが窓を開けるまで鳴き倒します。
こやつ、一度私にとっ捕まって去勢手術されたのですが、拉致して痛い思いさせた相手の前だというのに腹出して寝ている姿を見ると、野良としての矜持はどうしたと小突きたくなります。
どうすればよいでしょうか。
A:あなた以外はみんな気づいていると思いますが、その猫は野良猫ではなく、あなたの飼い猫です。いままでどおり、やさしく世話してあげてください。
寒い日の猫の話
出刃包丁を持った猫が、俺に包丁を突き付けてきた。
『 おかねちょうだい。』
「 お金? いくら?」
『 さんぜんえん。』
「 いいよ。はいどうぞ。」
『 固いのも。』
「 小銭のこと?全部持てるかな、何買うの?」
『 カリカリ。いっぱい買う。』
「 そっか。でもお店まで遠いよ?一緒に行く?」
『 …うん。』
「 包丁は重いから置いておきなよ。後で取りに来ればいいから。」
『 うん。』
「 カリカリいっぱい買えてよかったね。」
『 …うん。』
「 それ重いでしょ?ずっと持って歩くの?」
『 重いの…。』
「 家置いておく?好きなとき取りに来ればいいじゃん。」
『 …うん。』
「 外寒いよ ?帰るの?」
『 …。』
「 泊まる?」
『 …そうする。』
寒い日の犬の話
ある日俺が道を歩いていると、犬に包丁を突きつけられた。
犬「 お金!お金もってる!?お金出してくれる?!ねぇ!お金!」
俺「 お金?いくら?」
犬「 わかんないから!僕犬だからいくらとかわかんないから!」
俺「 いいよ。はいどうぞ。」
犬「 本当!?大丈夫なの!?かたいのはいらないの!?」
俺「 小銭のこと?全部持てるかな。何買うの?」
犬「 なまにく!いっぱいかう!」
俺「 そっか。でもお店遠いよ?一緒に行く?」
犬「 よかったぁ!じゃあ行こうね!一緒に行こう!」
俺「 包丁は重いから置いておきなよ。後で取りに来ればいいから。」
犬「 そうなんだぁ!置いていっていいんだぁ!じゃあ後で取りに来ればいいんだねぇー!」
俺「 なまにくいっぱい買えてよかったね。」
犬「 うん!買えたよ!いっぱい買えた!」
俺「 重いでしょ?それずっと持って歩くの?」
犬「 だいじょぶだから!僕犬だから重たいのだいじょぶだから!」
俺「 家においておく?好きなときとりくればいいじゃん。」
犬「 本当!?埋めないでいいんだ!?じゃぁ置こうね!なまにく置こう!」
俺「 外寒いよ?帰るの?」
犬「 だいじょぶだから!僕犬だから寒いのだいじょぶだから!」
俺「 泊まる?」
犬「 ・・・・かたじけない、貴殿の御親切痛み入った。
かくなる上は拙者此度の御恩決して忘れず生涯貴殿に忠節を誓い、
誠心誠意お仕え申す所存で御座る。」
冬山の話
学生時代、友人が所属していたT大学山岳部に、代々伝わるという話である。
ある年の三月、T大学山岳部は新人三人を連れて、東北のY岳で冬山訓練を行った。
三月といえば、平野ではそろそろ新芽も顔を出し、春の息吹が聞こえ始める季節だが、高山はいまだ深い雪の世界である。
メンバーは新人が三人、リーダーと副リーダーの三年生が二人。
合計五名の雪山山行だった。
先頭に副リーダーが立って、膝まで埋まる雪をラッセルし、真中に新人の三人を挟んでリーダーが隊列の最後尾についた。
新人三人も高校時代から山に通っており、高山ではないが冬山も経験していたので、快調なテンポで五人は雪の尾根を登った。
ところが五合目を過ぎた辺りから灰色の雲が空を覆い始め、六合目を過ぎて雪が舞い始めた。
天気はなおも下るという予報もあったため、パーティは小休止を取り、先に進むかあるいは撤退するか、リーダーと副リーダーがミーティングを行ったが、結局リーダーの判断でこのまま山頂を目指す事になった。
しかし、この後、雪は本降りとなり、八合目を過ぎた頃には猛烈な風も加わり始めて横殴りの吹雪になり、一歩前に進むことも困難な状態に陥ってしまった。
前を歩く部員の姿も確認出来ないようなホワイトアウトに近い状態の中で、リーダーは山頂を目指す決断をしたことに後悔しながらも、前を歩く新人たちに懸命に声を掛けながら前進を続け、周りが暗くなり始めた午後の四時過ぎに何とかY岳の肩にある避難小屋に辿り着いた。
雪に埋まった扉を懸命にこじ開け、先頭を歩いていた副リーダーが雪崩込むように避難小屋の中に飛び込む。
わずかに遅れてふたり目… そして三人目…。
さらに五分ほどして、最後尾を歩いていたリーダーが、全身雪まみれになってが避難小屋に入ってきた。
「 あれ? Kはどうした? 」
副リーダーが荒い息を吐きながら、防寒着の雪を払っているリーダーに聞いた。
「 なに? やつは来ていないのか!? 」
副リーダーの顔を見返して、雪を払っていたリーダーの手が止った。
隊列の四番目、つまりリーダーの前を歩いていたはずの新人のKがまだ小屋に着いていない。
「 ちくしょう!はぐれたか!? 」
そう叫ぶと、リーダーは座る間もなく再びピッケルを手にして小屋を飛び出した。
「 俺もいくよ! 」
副リーダーが後を追おうとして腰を上げた。
「 おまえは新人達の面倒をたのむ。
なあに、ここに着くほんの十分くらい前に後ろから声を掛けて、前にKがいる事を確認しているんだ。
すぐに見つかるさ。」
そう言って副リーダーを避難小屋に戻し、リーダーは目を開けるのも辛くなるような猛吹雪の中に姿を消した。
避難小屋に残った三人が一言も声を出す事もなく固唾を飲んでいると、二十分程して小屋の入り口でドーンという大きな音がしていきなり扉が開き、吹雪といっしょに白い塊が避難小屋の中に転がり込んできた。
それは新人のKだった。
肩で荒い息をし、それでも自力で立ち上がり、
「 すみません、途中で道を逸れてしまったようです。」
と荒い息といっしょに吐き出すように副リーダーに言った。
小屋の中にホッとする空気が流れたが、それも一瞬のことだった。
「 おまえ、リーダーに会わなかったのか?」
新人のひとりがKに聞いた。
「 リーダーがどうかしたのか?」
Kが聞き返す。
「 さっき、おまえを探しに飛び出して行ったんだ。」
「 えっ!?」
ニ重遭難。
四人の頭に不吉な言葉が浮んだ。
副リーダーと新人のひとりが装備を整えて、小屋の扉をこじ開ける。
ブワァァ~~~ッ!
もの凄い勢いで風と雪が小屋の中に吹き込み、目を開ける事もできない状況だ。
何より小屋の外は、すでに日が落ちかけていた。
「 くそ・・。」
副リーダーは歯を食いしばって小さく唸ると、ゆっくりと小屋の扉を閉めた。
県警、山岳部OBも加わって懸命に捜査を続けたにもかかわらず、山に緑が戻り、山道にフキノトウが顔を出すころになっても、リーダーの遺体は見つからなかった。
特に避難小屋の肩から西に切れ込むK沢は入念に捜索されたが、遺体はおろかその痕跡すら見つけることが出来なかったのである。
捜査が打ち切りになった翌年の三月、同じY岳でリーダーの追悼山行が計画された。
その年の冬は例年に比べ雪は多かったものの、天候は比較的安定していた。
その日も、見上げれば空は真っ青の快晴で、昨年のメンバー四人を含めた総勢八名のT大学山岳部員たちは隊列を乱すこともなく、時間通り、昨年事故があった避難小屋に登り着いた。
登頂は明日果たす事とし、その日は避難小屋の中でリーダーの思い出話に部員それぞれが花を咲かせた。
冬の山に夜の帳が下り、そろそろ寝ようかと部員達が目をこすり始めた午後の十時過ぎ、 避難小屋の外の様子が突然変わりはじめた。
風が避難小屋の板壁を叩きはじめ、その中に雪も混じリ始めたようだ。
「 おかしいなあ。天気図を見ても今日明日、天候は崩れないはずなんだが。」
そう言って立ち上がったひとりが、小屋の扉を薄く開けて叫び声を上げた。
「 うわぁ!完全に吹雪いているよ。」
慌てて扉を閉める。
「 これは、明日は上まで登れないかもしれないな。」
つぶやきながら白い息を吐き、ランタンを囲む車座の中に戻って来る。
その時、車座の中で酒を飲んでいたひとりがぽつりと言った。
「 おい、誰かこっちにくるぞ。」
今まで賑やかに語り合っていた部員達が口を閉ざし、いっせいに避難小屋の扉を見た。
すると、聞こえてくるのだ。
吹雪の音に混ざって、雪を踏みしめる山靴の音が。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…。
夜の十時過ぎだ。
こんな時間に冬山に登ってくるヤツなどいるわけがない。
しかし、の靴音はだんだんと大きくなり、そして小屋の前で止まった。
八人は声を出す事も出来ず、ただただ避難小屋の扉を見つめ続けた。
しばらく小屋の外は吹雪の音だけになった。
そして、山靴の音また聞こえ始めた。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…。
山靴が雪を踏みしめる音が、やがて避難小屋の周りを回り始めた。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…。
八人は肩を抱き合って避難小屋の真中に固まり、ただただ、その足音を耳と目で追いかけた。
避難小屋の中の空気が凍りつき、八人の歯のなる音が小屋の中に響く。
部員たちの吐く息が白い。
『 ・・は・・かあ・・・。』
八人のうちのひとりが震える声でつぶやいた。
「 何か言っているぞ。」
耳をすますと、雪を踏みしめ小屋の周りを回り続ける山靴の音と板壁を叩く吹雪の音に混じって、微かに男の声が聞こえるではないか。
『 ・・は・・いるかあ・・・。』
何かを言いながら、山靴の音が小屋の周りを歩き続ける。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
昨年、副リーダーだった四年生が、周りの部員の顔を覗きこみながら言った。
「 おい、あれって、リーダーの声じゃないのか?」
『 Kは・・・、いるか・・あ・・・・。』
八人の耳に、今度ははっきりとその声が聞こえた。
それは昨年、この避難小屋に辿り着く直前に逸れた新人のKを探しに飛び出したまま、冬のY岳に消えたリーダーの声だった。
ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…
『 Kは、いるかァ・・・!』
小屋の周りを回りながら、リーダーの声が吹雪の音に混じって叫び始めた。
そのうち、肩を抱き合う八人の中で、握り拳を作って懸命になにかに耐えていたKが、
堪え切れなくなって避難小屋の外に向かって叫んだ。
「 僕は無事です! ありがとうございましたァ!」
その途端、小屋の外を回っていた山靴の音がピタリと止った。
そして、しばらく吹雪の音だけになったと思うと、避難小屋の外の山靴の音はまたゆっくりと雪を踏みしめて歩き始め、それは少しずつ小さくなっていき、やがて山の中へと消えて行った。
しばらく呆然としていた八人は、やがて我に返り、山靴の音が消えていった避難小屋の外に向かって無言のまま深く頭を下げ続けた。
昨年あれほど、捜索したにもかかわらず、その痕跡すら見つける事が出来なかったK沢上流で、リーダーの遺体が発見されたのは雪がまだ残る五月の初めのことだった。
その遺体には不思議なほど傷みがなく、まるで何かに安心したかのように安らかな顔をしていたそうである。
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