本田技術研究所で、藻の研究が成果を挙げつつあるとする記事をネットで読んだ。
3月30日に発表された「Honda DREAMO」と命名された藻は、世界トップレベルのCO2の吸収量を誇り、栽培には特別に温度調節された部屋も、大量のエネルギーも、滅菌も必要が無く、水道水を足すだけで繰り返し培養ができ、寒さにも強いため、他の植物が育ちにくい環境であっても育てられるとされている。また、培養液をを変えるだけで、燃料やバイオプラスチックに活用したい時は炭水化物が多い藻に、化粧品や食料の原料に活用したい時はタンパク質が多い藻に3日で成分を変化させることができ、消費者のニーズに合わせた成分を持つ藻の生産が可能とされている。
さらには、水道水で育つ「雑菌に負けない強い藻」ではあるが、培養施設から流出しても生態系を破壊しないことも検証されているらしい。
今後は、加工の技術やコストについての開発・検証を進めて、2050年のカーボン・ニュートラに貢献したいと研究グループは意気軒昂であるともされている。
自然環境改善の夢を抱かせてくれる素材であるが、1960年代には「世界の食糧危機を救う」としてクロレラが脚光を浴びたが、生産コスト、体内での副生成物、細胞壁が固いために消化吸収率が悪いなどの理由から、健康食品として使用されるにとどまっているケースもあるものの、「Honda DREAMO」の今後に期待したいものである。
「Honda DREAMO」の研究リーダーは福島のぞみ氏で、HONDAに中途採用された後に研究職以外の職域を経験した後に念願の研究職を得たが、経費1万円からのスタートであったと述べている。
その後8年近くも結果が出ずに、研究が打ち切りになるかもしれない場面が何度かあったが、上司の「世間に理解される技術をいま研究しても遅い。理解されない技術こそ価値や可能性がある」との言葉に励まされたとしている。
もし「Honda DREAMO」が大化けした場合、福島のぞみ氏の名前と業績は脚光を浴びるであろうが、福島氏の挫折感を救い研究の継続を扶けた「無名上司」が喧伝されることはないだろう。
しかしながら、無名上司の言は、基礎研究が遅れているとされる日本の現状と基礎研究の本質を衝いたもので、大学・大企業の研究者はもとより研究機関の運営に携わる政治家・企業経営者などに広く共有して欲しい言葉であるように思える。
福島氏と本田技術研究所に限りないエールを送って。
「世間に理解される技術をいま研究しても遅い。理解されない技術こそ価値や可能性がある」と発言する上司は希有な存在かもしれません。
40年前に唐津一氏の本に部下のやる気を削ぐ上司の言葉として「それは以前やったけどだめだったよ」がありました。
最近のCMに「僕は良いと思うけど上司がね」という言葉があります。
優しく諭すように上の言葉を言えば、二度と部下は提案や改善案を持って来ないでしょう。
部下に対する上司の言葉の力は大きなものですね。
コメントを有難うございます。
他人様に誇れるような社会生活ではありませんでしたが、それでも2・30年経った今でも覚えている上司の言葉が少なくありません。
その多くは叱責でありましたが、数少ないものの奮い立たせてくれた言葉を覚えております。
半面、自分は部下に対して、いつまでも心に残る言葉を与えたかと思えば、忸怩たる思いに駆られます。