経産省が総合資源エネルギー調査会が行った電源別発電コストの試算結果を公表した。
経産省は、これまで一貫して発電コストについては事業用太陽光発電が最安値としており、7月に発表した機械的計測に基づく速報値時点でも事業用太陽光が最安値とされていた。今回発表された試算方法は、天候等に左右される風力発電や太陽光発電のバックアップとしての火力発電の要素を加味した「系統制約等を考慮したモデル」とされている。
試算の結果では、LNG火力:11.2円、石炭火力:13.9円、原子力:14.4円、陸上風力:18.5円、事業用太陽光:18.9円となっており、一転して太陽光発電が最高値となっている。
自分は、原発廃止論者が再生可能エネ発電は環境破壊を防ぐとともに、初期費用のみでランニングコストがかからないために家計にも優しいとする主張は危い眉唾物と主張してきたが、果せるかな今回の試算で眉唾の一端が露わになったと思っている。それ以上に、経産省や電気事業連合会が、経済活動や国民生活の根幹である電力と電力料金について、これまでシステマティックに検討していなかったのかとの驚きの方が大きい。
また我々が知っておかなければならないのは、もし再生可能エネ発電が日本の総電力量を上回る事態になったとしても、バックアップである火力発電は停止することなく低出力で運転し続けなければならないことである。小規模の非常発電機のように停電後30秒程度で火力発電も発電可能と思われている人も多いと思うが、火力発電プラントを一旦停止してしまえば、再起動(発電再開)には1週間程度の時間が必要であり、天候の急変等には即応できないためである。「ドイツでは」という言葉が聞こえてきそうであるが、ドイツはバックアップ電力をフランスの原発電力購入に依存していることも併せて知っておくべきとも考える。
更に再生可能エネ発電のランニングコスト”0”も大いに疑ってかかるべきで、設置後10年程度で、風車が折れたり支柱が倒れた風力発電機もあり、塩害の激しい海上風力発電機ともなれば整備補修費や更新費用は更に発電コストを押し上げるものと考える。太陽光発電につぃても、設置個所の草刈りや発電素子表面の清掃等にコストがかさむこともあるのではないだろうか。
今回の「系統制約等を考慮したモデル」にバックアップ発電機能の他にどのような要素が加味されたのかは知る由も無いが、電力料金を負担する我々には発電コスト以外にも教えて欲しいことがある。それは、現在再生可能エネ発電業者が優遇され大手電力会社が電力料金の一部で賄っている送電コストと送電網(電柱)に依存している光回線等の利用料(インターネット接続料やケーブルテレビ使用料)の変化や原発廃炉費用の負担である。
経産省は、電力システム全体に関与する要素のコストを加味した発電コストを「電源別限界コスト」と定義し、今後誰がどのように負担するのかを議論していくとしているが、自分のような素人でも思い至る点を、今頃になって経産省や識者会議が持ち出すことに限りない違和感をを持つものである。
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