シリア軍が自領イドリブ県を空爆して、トルコ軍兵士70人を死傷させたことが報じられた。
これを受けてトルコは報復攻撃の可能性を示唆し、シリアを支援するロシアは巡航ミサイル艦2隻を地中海に派遣すると発表した。2010年以降のアラブの春に触発された反アサド政権デモに始まったシリア内戦であるが、対IS(イスラム国)戦争を挟んで現在はトルコとの対外戦争に発展しているように思われる。また、トルコは国内のシリア難民をヨーロッパに移動させるともしており、EUは再びシリア難民への対処を余儀なくされるし、中東諸国で唯一加盟しているNATOも踏み絵を迫られることになる。ほぼIS勢力を制圧したとして軍をシリアから撤退させたアメリカであったが、NATOの盟主として何らかの軍事支援・軍事行動を余儀なくされるのではないだろうかと懸念する。対外戦争は新たな難民を生むこととなるが、既に難民受け入れの限界に達している隣国のイラク・ヨルダン・エジプトは国境を封鎖するであろうし戦闘地域に対する国連の人道支援も不可能になる。平和な日本にあっては実感できないが、当てもなく漂流する覚悟で国を捨てるとはどのようなものであろうか。途中で命を失う可能性もあり幸いにして他国にたどり着いたとしても、近年のドイツの変質に見られるようにそこが安住・安息の地であるとは限らない。難民に対する国際世論の注目も、時が経てば風化して支援も先細りするものだろう。現に日本でも、発生当初は連日報道されたシリア難民、ベネズエラ難民、中米のキャラバン、ロヒンギャについてのマス・メディア報道は見かけなくなったし、ネット上の記事も更新されない状態である。自国の正義を貫くために宣戦布告して開戦する「戦争」は、国民の支持や後押しがあって成立するものであろうが、国内の権力争いに武力を行使したり他国の武力介入を頼んで同胞・隣人同士が殺し合う内戦は、大多数の国民の支持を得たものではないだろうと考えるし、それ故に内戦からは多くの難民が発生するのではないだろうか。
中東情勢は将に世界の火薬庫であり、いつ爆発しても不思議はないが、シリアとトルコの戦闘がこれ以上拡大しないことは誰しもが望むものであると思う。戦闘地域から離れているとはいえ蠢動しているイランがシリア紛争を好機として行動をエスカレートすることも考えられるので、現地に派遣している自衛艦やタンカー運航に被害が及ぶケースも考えられる。米露が介入すれば代理戦争となり、米露が手を引けば中朝が浸透して内戦となる中東地域、安定する妙案はないのだろうか。
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