魔笛はモーツアルトの最高傑作と称されながら名演奏・名舞台の少ない
オペラです。その謎に迫ってみます。
魔笛の謎といえば、誰もが三つの試練、三人の侍女、三人の童子、など
にかかわるフりーメンソーの事だとお思いでしようが、日本人の私に分かり
ませんし、語る資格も有りません。ここで言う謎というのは、冒頭で指摘した
ように、最高傑作で有りながら、極端に名演奏が少ないんです。オペラの重要な
要素は、指揮者、オーケストラ、合唱団、歌手、演出(美術・衣装も含めた)ですが、二つ位の要素が90点だったとしても、必ず50点以下の部分が出てしまいます。それだけモーツアルトが偉大で、魔笛の上演は難しいという事なんでしようね。
私が観たり聞いたりした数少ない魔笛(それでも十数個にはなります)では殆ど
演出で躓いていました。
私が最初に感動した魔笛は、イングマール・ベルイマンの映画でした。
序曲が始まりました。わたしはそこで初めて、こみの序曲が名曲だと言うことに気付かされました。すでにベルイマンの魔術が始まっていたのです。カメラは序曲の間中観客のアップを追い続け、たびたび可愛らしい少女の顔を映し出します。
希望に胸をときめかせて目を輝かせる少女。私はその顔を未だにはっきりと覚えています。死ぬまで忘れないでしょう。
以来、私は魔笛を観ると、どうしてもベルイマンと比べてしまい、満足した事
が有りません。大蛇が気に入らなかったり、魔笛に併せて縫いぐるみが踊るのが馬鹿馬鹿しくなったり、ザラストロが崇高過ぎたり、夜の女王の悲鳴に悩まされたりしました。
次に感動したのは、、ケネス・ブラナーの魔笛です。不思議な事にこれも映画ですよね。この作品でもまたまた序曲、奇跡の和音とともに映像がフェードインし、空と雲と蝶、渡り鳥や兎、そこへ戦争の不安が忍び寄ってきます。驚いた事に、序曲の間中ワンカットの移動撮影で通してしまいました。このプロローグだけで十分です。後は観ないでもいいとさえ、その時は思いました。
観る前、私はどうせ期待はずれだろうがとりあえず観てみようか、という軽
い気持ちでしたが、本当に期待を外されてしまいました。ザラストロの慈愛に
満ちた目、悲しみを秘めた夜の女王、パパパパパパパ、パ、パパパパパパパ、パ、とにかく楽しませてもらいました。ケネス・ブラナーの演出が良かったです。
この魔笛を観て気がつきました。魔笛は演出主体で創られるべき作品だと。
どうしてもオペラは指揮者と歌手に重点が置かれてしまうのです。魔笛の上演を成功させるには、優秀な演出家を起用するべきです。
一つ分からないシーンがあったのですが、どなたか教えて居たた゜けませんか?
無数の墓標を前にしてザラストロが歌います。墓標に刻まれた若者の名前、三分の一が日本人だったのです。第一次世界大戦でこんなに日本の若者が戦死した筈が有りません。もしかしたら、神風か回天なのでしょうか? 結局未だに分かりません。
ブレゲンツ音楽祭2013で魔笛が上演されました。湖畔の幻想的な舞台設定で、少し日本を意識したような演出でした。これは面白かったですね。
もし、モーツァルトが東アジアの神秘に包まれたジパングを知っていたとしたら? 面白いですよね。誰かモーツァルトに聞いてくれませんか。
ベルイマンのお薦め映画。
処女の泉。第七の封印。野いちご。ファニーとアレキサンドル。
鮮烈だつたのは処女の泉、はまったのは第七の封印、結局この二作品は未だに理解しているとは言えません。いま考えてみると、野いちごが一番良かったのかも知れません
ブラナーのお薦め映画。
ヘンリー五世。ハムレット。愛と死の間。フランケンシュタイン。
ブラナーはやはりシークスピアです。ハムレットは四時間を超える大作で少々疲れてしまいますが、ヘンリー五世はシェークスピアとブラナーが好きなら是非観て下さい。DVDは廃盤に成っているようです。変わったところで出演作(主演では有りません)のスウィングキッズ、ジャズ好きなら必見です。
最近のブラナー、余り感心出来るとは言いがたいですね!? アメコミの実写化やシンデレラ等々です。
2016年11月27日 Gorou and Sakon
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