世界で唯一の戦争被爆国・日本。
それだけに、核に対する国民感情は他国より敏感で、核兵器の廃絶を訴える声は少なくない。
そんななか、ウクライナ戦争での核兵器使用の可能性も指摘されており、命を守るための最後の砦となるのが核シェルターへの注目も高まっている。
【写真】約36万5000か所設置されているスイスの核シェルター
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だが、いちばん安くて780万円(販売会社「ワールドネットインターナショナル」)という価格や、日本の住環境などを考えれば、核シェルターを個人で持つのはなかなかハードルが高い。
公共の核シェルターに期待がかかるが、日本における普及率は0.02%と非常に低い。
ここでいう普及率とは「国にある核シェルターで収容できる国民の割合」のこと。人口約1億2000万人の日本では2万4000人しか核シェルターに逃げ込むことができないことになる。日本が核攻撃を受ければ、ほとんどの人が助からないのだ。
ちなみに日本核シェルター協会の発表(2014年)によれば、スイスとイスラエルの普及率が100%、ノルウェー98%、アメリカ82%、ロシア78%、イギリス67%と非常に高くなっている。
代用施設としてはウクライナで避難先となっていたように地下鉄駅などが考えられる。
2020年4月時点で指定された日本の全国約9万4000施設のうち地下施設は1127あったが、地下駅舎はゼロだった。
しかし今年4月7日、大阪府と大阪市、堺市が大阪メトロの全133駅中108の地下駅舎を避難施設に指定し、日本でもようやく地下駅舎の避難施設指定が進んでいる。
一方、松井一郎大阪市長が「核兵器は無理」と話すなど、地下駅舎が核シェルターとして機能を果たすのは難しそうだ。
ちなみに避難施設は内閣官房の「国民保護ポータルサイト」で確認でき、小中学校や市民センター、公共のスポーツ会館などが主だ。
5月10日、フィンランドのマリン首相(36才)が来日した。
NATO加盟を宣言した同国は1300kmにわたってロシアと国境を接するだけあり、人口の7割が避難可能な核シェルターを配備している。
同国の防災法では建物の所有者に核シェルターの設置が求められている。
同様に、朝鮮戦争の休戦中という事情を抱える韓国は地下鉄構内に避難が可能で、普及率は300%にもなるそうだ。
永世中立国のスイスも核シェルターの設置義務があり、補助金が支給されるという。元自衛隊陸将の福山隆さんが言う。
「スイスは全国民を対象に軍事訓練が課されるなど、自力で敵を食い止めるという思想。
どの国の味方もしないし、利用させない覚悟が決まっている。
それと比べると日本は“アメリカ任せのいいとこ取り”と言われても仕方ない。海外で設置されている公共の核シェルターでは、平時には音楽会開催など多目的利用をしている。日本もまずは公共施設から設けていくべきでしょう」(福山さん)
核シェルター販売実績日本一を誇る「ワールドネットインターナショナル」代表の中嶋広樹さんも民間の苦悩があるという。
「各国の核シェルターの設置率は政府が国策としているかどうかによります。私たちの会社がどんなに販売をがんばっても、数パーセントさえ普及させることはできません」 国民の命を守るインフラだからこそ、国が責任をもって設置を進めるべきだろう。
日本大学危機管理学部教授の小谷賢さんもこう言う。
「日本は“核戦争など起きない”という前提で動いている。スイスのように設置を義務づけたり補助金を出すなど、政府が音頭をとって設置を進めなければ、取り返しのつかないことになりかねません」
ウクライナ戦争で、世界のさまざまなリスクが浮き彫りになった。
この教訓を生かせなければ、私たちが放射能や毒ガスにさらされることになるかもしれないのだ。
何より、核シェルター設置によって国民の危機意識を一気に上向かせられる。そうなれば日本が「平和ボケ」という悪名を返上できる日が来るかもしれない。
※女性セブン2022年6月2日号
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