<勇敢なウクライナ兵ももう限界? 東部の激戦地バフムトでの塹壕戦が長引くにつれ、兵員より武器を重視する声が高まっている>
ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ東部ドネツク州の要衝都市バフムトをめぐる攻防が激しさを増すなか、ウクライナのあるNGO(非政府組織)の代表が、ロシア軍に勝つために必要なのは兵士の増員ではないという考えを示した。
ウクライナのNGO「オープン・ポリシー・ファンデーション」の共同創設者であるイホール・ジダーノフは、ウクライナの英字紙キーウ・ポストに寄稿した論説の中で、ロシアの傭兵組織「ワグネル・グループ」の創設者エフゲニー・プリゴジンらが、現在の戦況を「バフムトの肉挽き器」と表現していると述べた。
「肉挽き器」とは、第一次大戦の際にフランスのヴェルダンで繰り広げられた、10カ月に及ぶ戦いで行われた猛烈な砲撃による大量殺戮を表す言葉だ。
互いに塹壕を掘り、敵陣を殲滅するまで砲撃を浴びせるので塹壕戦ともいう。だからジダーノフは、バフムトにはこれ以上兵力を割くのではなく「別の解決策」を考えるべきだと訴えた。
〇プーチンはまだまだ攻勢をかけてくる
米ミシガン大学フォード公共政策大学院で研究・政策関与学部の副学部長を務めるジョン・シオルシアーリも本誌に対し、「(ウクライナでの)戦争は長引き、過酷な段階にある」と述べた。
「プーチンは、国民を納得させられるような勝利を必要としている。
だがバフムトでの破壊行為は逆効果になるだろう。
ウクライナを支援しなければロシアを増長させると、西側諸国に改めて思い起こさせることになるからだ」
ジダーノフは、英誌エコノミストがウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官に行ったインタビューに言及した。ザルジニーはその中で、「前線を死守することが何よりも重要だ」と語った。
「領土を奪い返すことは、奪われることより10倍も15倍も難しいからだ」
さらに、ロシア軍は2月に「さらなる部隊や予備役を動員して戦争を仕掛けてくる」との見方を示し、それに備えるべきだとも語った。
早ければ1月末、遅くとも3月には、ロシアが東部ドンバス地方ではなく、ウクライナの首都キーウか隣国ベラルーシ方面から大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると述べた。
「ウクライナ軍の部隊はいずれも、いま起きている戦闘で手一杯だ。
彼らは血を流している」とザルジニーは述べた。「彼らは勇気と気力と司令官の能力だけを頼りに戦っている」
西側の同盟諸国は継続的な防空システムの提供を求める必要があるとも述べた。
複数の報道によれば、アメリカはウクライナの防空能力を強化するために、迎撃ミサイル「パトリオット」を供与する方向で最終調整を行っている。
ロシアの重要インフラに対する攻撃で、多くのウクライナ国民が断水や停電に苦しんでいるからだ。
ザルジニーは「私はエネルギーの専門家ではないが、ウクライナは危機に瀕しているように思える」と言う。
「我々は、ぎりぎりの状態でなんとか持ちこたえている。もし(送電網が)破壊されれば、兵士の妻や子どもたちが凍え始める。兵士たちがどんな気持ちになるか、想像できるだろうか」
追加動員が必要かと問われると、ザルジニーは、ウクライナ軍の兵士の数は既に「十分すぎる」と言う。
それよりも、戦車や装甲兵員輸送車、歩兵戦闘車や弾薬がもっと多く必要だと述べた。
ジダーノフは、アメリカの「パトリオット」に加えて、ドイツの戦車「レオパルト2」やスウェーデンの戦闘機「サーブJAS39グリペン」があれば、「前線での戦略的状況を有利に変えられる」可能性があると述べた(「レオパルト2」も「グリペン」もまだウクライナに供与されていない)。
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