一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ノウハウの弊害

2007-06-22 | あきなひ
シエスパの事故ですが、
温泉施設爆発 ガス濃度、検査せず
(2007年6月21日(木)00:32 朝日新聞)
などを見ると、施設の運営者であるユニマット・ビューティーアンドスパも管理を受託した日立ビルシステムも、メタンガスの危険性やガス分離装置が設置されている意味合いを理解していなかったのではないかと思います。


温泉施設自体は、設計会社と建設会社に発注して下請けに温泉の専門家を入れれば作ることができます。
そのとき設計者は温泉をくみ上げるときにメタンガスが出ることとメタンガスの危険性については承知しているはずです(この施設にも分離装置がありした)。

そして出来上がった施設(建物)の維持管理については、法定点検や日常のメンテナンスはビル管理業者に委託でき、あとは施設の運営のための体制を準備すれば営業することはできます。


今回はその管理体制のところで、メタンガス・分離装置の安全管理の部分がポテンヒットになってしまっていたのではないでしょうか。

おそらくビル管理業者の管理委託契約は、通常の事務所・店舗ビルをベースに標準的な管理仕様書があり、個別の建物に固有の設備があればそれに付加するというようなものになっていて、今回のガス分離装置については、それが設置されている意味や重要性を理解されないまま「あるんだから一応管理の対象に入れときましょう、でも形式的な点検でいいですよね」というようなことになり、下請けにも「機械のメーターだけ目視で確認」というような仕様で発注したのではないでしょうか。


企業においてはコストダウンのために非熟練労働者(営業マンも含め)でも仕事が出来るように、業務を標準化・マニュアル化しているところが多いと思います。
それはそれで効率的でかつ顧客にも一定レベルのサービスを安価に提供できているわけなのですが、反面応用がきかなくなりがちです。
更に例外への対応も「特記事項の書き方」などで標準化してしまうと、本来の個別事情の持つ重要性を見落としがちになります。

標準化という型にはめれば、誰でも一定レベルの仕事ができるというのは企業にとって重要なノウハウです。
ただ、重要・非定形の仕事に直面したときに大事なのは、「なぜこのような業務に標準化されたのか」という"know how"の元にある"know why"であり、それを知っていることで「個別事情に対応するためには何が必要なのか」を考えることができるのではないでしょうか。

今回の事故についても、ユニマット・ビューティーアンドスパ、日立ビルシステム、更に下請の中で誰かが「この装置はなぜついているんだろう、メタンガスが危険なのであれば、この管理仕様でいいのだろうか?」という疑問を持っていれば、事故は未然に防げたのではないかと思います。


「こうすれば一定の結果が出せる」というノウハウは、逆に「一定以上の結果は出せない」ということも意味するわけで、それに頼りすぎるのも問題ということだと思います。



PS
昨今の金余りのご時勢で「ファンドバブル」などとも言われていますが、投資対象があって投資スキーム作りと資金調達と経営に「専門家」を雇えばなんとかファンドが一丁あがり、というのも、同様の危うさを内包していないでしょうか。


PSその2
J-SOX法対応の作業なんかも「こうすれば監査法人から適正意見がもらえる」というようなテンプレートを元に逆算して準備作業をする『ドラゴン桜』的な内部統制構築に走ると、将来同様のこと(体制はあるものの「仏は作って魂入れず」で有効に機能していないというような)が問題になるかも知れません

(とまた愚痴だか文句だかの多い今日この頃・・・)

コメント (2)
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