また、イグ・ノーベル賞の季節になりました(というかノーベル賞の季節なんですが)。
パンダの糞でゴミ減量、田口さん“世界最高賞”
(2009年10月2日10時47分 読売新聞)
ノーベル賞をもじり、ユーモアあふれる科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が1日、米マサチューセッツ州のハーバード大で開かれ、パンダの糞(ふん)に含まれる細菌で台所のゴミを90%減らせることを示した田口文章・北里大名誉教授(72)が「生物学賞」を受賞した。
田口さんらは、消化しにくいササを主食にするパンダに目をつけ、上野動物園からパンダのフンをもらい受けて有用な菌を分離。生ゴミを分解して減量できることを実証した。田口さんは授賞式で「パンダの糞は臭くないので実験に好都合だった」と話し、会場の笑いを誘った。
日本人は3年連続の受賞だそうですが、着想の妙が世界で評価されるのはいいことですね。上の研究も相当社会に役立ちそうですし。
その他の受賞者はスポンサーである科学雑誌の公式ホームページ(?)によるとつぎのとおり。
ちなみに第19回目になる今年のテーマは"Risk"でした。
VETERINARY MEDICINE PRIZE: Catherine Douglas and Peter Rowlinson of Newcastle University, Newcastle-Upon-Tyne, UK, for showing that cows who have names give more milk than cows that are nameless.
獣医学賞:名前を付けた牛のほうが名前をつけない牛よりも乳が多く出ることを実証したイギリスの研究者に。
こちらによれば、付けた名前はBessieとButtercup だとか。
植物に話しかけるとよく育つなどと言う話もありますが、実証したのはすごいですね。
"B"で始まる名前であることと乳の出は関係があるのでしょうか?(脱線しそうなのでここで自粛)
PEACE PRIZE: Stephan Bolliger, Steffen Ross, Lars Oesterhelweg, Michael Thali and Beat Kneubuehl of the University of Bern, Switzerland, for determining — by experiment — whether it is better to be smashed over the head with a full bottle of beer or with an empty bottle.
平和賞:バーのけんかで使う時には空のビール瓶の方が中身が入った瓶より頑丈だということを実証したスイスの研究者に。
当然実際に頭を殴ったりしたわけではなく鉄球をぶつけて実験したそうです(上の記事と同じ出所)。ビール瓶の空き瓶は意外と破壊力があるというのを別のところで実感したばかりなので妙に納得。
ECONOMICS PRIZE: The directors, executives, and auditors of four Icelandic banks — Kaupthing Bank, Landsbanki, Glitnir Bank, and Central Bank of Iceland — for demonstrating that tiny banks can be rapidly transformed into huge banks, and vice versa — and for demonstrating that similar things can be done to an entire national economy.
経済学賞:小さな銀行の急拡大が可能であることとその逆も可能であること、そして国家経済についても同様のことを実証した破綻したアイスランド銀行4行の経営者に。
こういう皮肉な受賞もいくつかあります。
CHEMISTRY PRIZE: Javier Morales, Miguel Apátiga, and Victor M. Castaño of Universidad Nacional Autónoma de México, for creating diamonds from liquid — specifically from tequila.
化学賞:テキーラからダイヤモンドを作ったメキシコの研究者に。
論文名はGrowth of Diamond Films なので膜状のものが形成されたのでしょうか。
お店の女の子にテキーラを飲ませたあと頭ごとシェイクするという乱暴者の弁護士がいますが、彼に教えたら「ダイヤモンドあげる」とか言って更に悪ノリしそうです。
MEDICINE PRIZE: Donald L. Unger, of Thousand Oaks, California, USA, for investigating a possible cause of arthritis of the fingers, by diligently cracking the knuckles of his left hand — but never cracking the knuckles of his right hand — every day for more than sixty (60) years.
医学賞:関節炎の原因の発見に貢献した60年間左手だけ拳を握って指を鳴らし続けたアメリカ人に。
右手は鳴らせなかったのでしょうか。
PHYSICS PRIZE: Katherine K. Whitcome of the University of Cincinnati, USA, Daniel E. Lieberman of Harvard University, USA, and Liza J. Shapiro of the University of Texas, USA, for analytically determining why pregnant women don't tip over.
物理学賞:なぜ妊婦はバランスを取って立っていられるかを研究したアメリカの研究者に。
確かにこういう素朴な疑問を持ったことがあります。あまりにお腹が大きいと、電車で席を譲ったほうがいいのか、座るのも難儀そうなので考えてしまいます。
上の記事によると、女性のほうが重心の変化に対応する腰椎の部分の脊柱の湾曲を変化させる能力が高いらしいです。
LITERATURE PRIZE: Ireland's police service (An Garda Siochana), for writing and presenting more than fifty traffic tickets to the most frequent driving offender in the country — Prawo Jazdy — whose name in Polish means "Driving License".
50枚以上の交通違反キップをPrawo Jazdy氏(ポーランド語で「運転免許証」の意味)に切ったアイルランド警察に。
ちなみに私が某国で密漁するとこういうネタになるようです。
PUBLIC HEALTH PRIZE: Elena N. Bodnar, Raphael C. Lee, and Sandra Marijan of Chicago, Illinois, USA, for inventing a brassiere that, in an emergency, can be quickly converted into a pair of gas masks, one for the brassiere wearer and one to be given to some needy bystander.
公衆衛生賞:緊急時にガスマスクに転用できるブラジャーの特許をとったアメリカ人に。
こういう風に使えます。
片方は自分用に、片方は近くの人にと2つに分けられることのポイントが高かったのではないでしょうか。
BBC NewsではGas mask bra traps Ig Nobel prize とこれがトップの扱いです。(でも脱線は自粛します。)
MATHEMATICS PRIZE: Gideon Gono, governor of Zimbabwe’s Reserve Bank, for giving people a simple, everyday way to cope with a wide range of numbers — from very small to very big — by having his bank print bank notes with denominations ranging from one cent ($.01) to one hundred trillion dollars ($100,000,000,000,000).
数学賞:100分の1から100兆までの紙幣を発行することで国民の数字処理能力を高めるのに貢献したジンバブエ中央銀行の総裁に。
これが1セントジンバブエ・ドル札と100兆ジンバブエ・ドル札
確かに一瞬ではいくらだか分らないですね。
色や柄のバリエーションも尽きてしまっているような。
BIOLOGY PRIZE: Fumiaki Taguchi, Song Guofu, and Zhang Guanglei of Kitasato University Graduate School of Medical Sciences in Sagamihara, Japan, for demonstrating that kitchen refuse can be reduced more than 90% in mass by using bacteria extracted from the feces of giant pandas.
これが冒頭のパンダの糞の研究。参照論文は"Microbial Treatment of Food-Production Waste with Thermopile Enzyme-Producing Bacterial Flora from a Giant Panda"という題名です。
あまたの学術論文の中から注目されるためには題名がキャッチーなことというのも重要なのかもしれません。
だから僕はいっぱい食べても大丈夫