「社外取締役の機能強化」という流れに抵抗したい経済界への提灯記事でないとするといまひとつ理解できなかった昨日の日経新聞の記事。
社外取締役、兼務が過半数 日経調査、「3社以上」も4割
(2009年10月21日 日本経済新聞)
社外取締役の人材不足が顕著になっている。日本経済新聞社が主要企業の社外役員にアンケート調査したところ、3社以上を掛け持ちしている人が約4割に達することが分かった。東京証券取引所や民主党は社外役員の活用をテコに企業統治の向上を目指しているが、実態はすでに人材枯渇の状況にある。社外役員の機能強化が経営のけん制に役立つかについても検証の必要がありそうだ。
東証1部に上場する主要企業の社外取締役に、何社の社外役員を務めているか聞いた。社外取締役に限定した掛け持ちの社数は2社が28%、3社が12%、4社以上が12%で、過半数が兼務者だった。社外監査役に就任している企業数も含めると2社以上を兼務している人は58%、3社以上では39%に達した。
言いたいことは
・社外取締役は兼務をしないほうがいい
・兼務をすると経営のけん制に役立たない
・3社以上のかけもちが4割にのぼり、人材が枯渇している
のようです。
しかし「ある会社の社外取締役しかしていない人」というのは逆に、経験や見識が十分になかったり、形式的に「社外」の要件を満たしているだけの社長のお友達で他所から声のかからないようなお飾りの場合もあり、かえって経営のけん制にならない可能性もあります。
また、社外取締役は基本は取締役会の出席であり、2,3社程度の兼務なら特に支障はないように思います。たとえば取締役会の運営方法やサポートするスタッフの充実でカバーできるのではないでしょうか。
「人材の枯渇」についていえば、適任者が少ないのか、それとも適任者は他にもいるがお友達間で回しているだけなのかについてはもう少しつっこんでみてもいいのではないかと思います。
もっとも「仲間内」がすべて悪いかというと、馴れ合いになるとまずいでしょうが、取締役会でコミュニケーションが取れないような価値観のまったく違う人を入れても困るという部分もあるでしょう。
けん制機能を求める側はあえて厳しい指摘をするような人が適任と考える一方で、経営側は「うるさい人は勘弁」と考えるわけで、そのバランスがむずかしいところです。
そう考えると、問題は人材の枯渇というよりは「社外取締役として迎え入れたい人」のハードルが高すぎる、つまり取締役会や経営者の警戒感や内弁慶が原因なのではないかとも思います。
ま、そんなに真面目に反応するような記事じゃないんでしょうけど、提灯記事としてもいまひとつ出来が悪いように思いました。