徳丸無明のブログ

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福岡は首都にはならない

2015-09-17 23:13:33 | 雑文
夕方に福岡のローカルニュースを観ていたら、東日本大震災の話題が出ていた。で、その番組にコメンテーターとして出演していた財界人だか大学教授だかが、
「関東にもまもなく大きな地震が来ると言われている。東京も危ない。思い切って福岡に首都移転を考えてはどうか。福岡は東京に負けない立派な都市機能を備えている」
と話していた。
一見合理的な主張に見える。
だが、福岡が日本の首都になることはない。
なぜかというと、地政学的に不都合があるからだ。
その理路を述べる前に、まず、地政学とは何か、を説明する。
地政学とは何か。平たく言えば、地理的条件を計算に入れた政治の学問である。もちろんこれだけでは何のことやら分からんだろう。
例を挙げて説明する。
AとBという国があるとする。話を分かりやすくする為に、両国とも国土が同じ面積の正方形、その首都は右はじにあるものとする(図参照)。その他、人口、経済力、軍事力等、国力はすべて同じとする。



           A国        B国
                                ●=首都  


このAとBが戦争になったとする。A国の首都はB国との国境線沿いにあるので、B国はA国の首都を簡単に攻撃することができる。それに対し、B国の首都はA国からは遠く離れているため、A国は攻撃しにくい。
つまり、圧倒的にB国が有利なのである。(もちろん、首都の陥落=戦争の終結ではないが)
これが地政学(の基本のき)である。
この喩えのような問題は現実にいくらでもあり、沿岸沿いにへばりつくように位置する某国は、海から首都が狙われたらひとたまりもないのを鑑み、内陸に位置する隣国と統一して、首都機能を隣国側に移す事を検討したことがあるという。
で、話を戻すと、日本は現在、隣国――北朝鮮――との関係が良好であるとは言えない。軍事的な衝突が起こる可能性を抱えている。(もっと言えば、中国とも)
いざ有事になったら、と考えると、福岡が首都というのは危険性が高すぎる。それは、村上龍の『半島を出よ』が、リアリティの高い作品として読まれた事からもわかる。
おそらく、このコメンテーター氏には、「自分の住む福岡が、日本の中心になればいい」とか「福岡は決して東京や大阪に劣っていない」という意識・願望があったのだろう。それが「福岡を首都に」発言をさせたのだろう。だが、冷静に国家間のファクターを含めて勘案すれば、それはありえない。
では、国家間の緊張関係が解消されれば、福岡が首都になるのも可能なのか。
合理的に考えれば、あまりいい選択とは言えない。首都は国の中心であるので、人と物の移動の拠点となる。人や物が、もっとも活発に動く。であれば、そこが西の端に位置している、というのは不便だろう。その点踏まえると、遷都候補の最西端は、せいぜい大阪あたりではないだろうか。
列島の端っこにある、自然も割と多くて、食文化が豊かで、そこそこ暮らしやすい地方都市。福岡は、そのような立ち位置でいいのではないだろうか。


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