時代はひとつひとつ自分で考えて解いていく構想力を持たないと、
ちょっと生きた心地もしない感じになってきました。
「どう生きる?これからの10年」2005.11.12
Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012
【再生医療の此岸:脳損傷回復薬/幹細胞注入し成果】
東京大病院は、頭のけがなどで脳の神経細胞が死んだり傷ついたりし、体のまひや言語障害などが
出た「外傷性脳損傷」の患者を対象に、加工した骨髄由来の幹細胞(細胞医薬品)を脳に直接注入
して機能回復を試みる治験をが近く始める。米国で先行して進められている脳梗塞患者での治験で
は運動機能や言語機能の向上が報告されており、回復が難しい脳損傷の新たな治療法になると期待
されている(毎日新聞 2016.08.14)。
June 27, 2016
この細胞医薬品は、健康な人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を加工・培養したもので、再生医療
ベンチャー「サンバイオ」が開発。免疫反応を抑える働きもあり、他人の細胞を移植するにもかか
わらず、免疫抑制剤を使う必要がなく、移植した細胞は、約1カ月で脳内から消えるという。
6月、米スタンフォード大などの研究チームは、この医薬品の安全性確認のために脳梗塞患者18
人に実施。験結果を米医学誌に発表。これによると、ほぼ全員の運動機能が回復し、目立った副作
用はなかった。サンバイオによると、治験前は動かなかった腕が頭まで上げられるようになったり、
車いすが必要だった患者が少し歩けるようになったりしている。
機能が回復する詳しいメカニズムは不明だが、東大病院での治験を担当する今井英明特任講師(脳
外科)によると、傷ついた脳の神経細胞の修復を促す栄養分が移植した幹細胞から分泌されると考
えている。東大病院の治験の対象は、脳に損傷を受けてから1〜5年が経過し、現在の医療では回
復が見込まれない患者。移植する細胞の数を変えて四つのグループに分け、運動機能の回復状態を
1年間、追跡調査する。
※ 関連特許 1.特開2012-219100 細胞と生体適合性高分子を含む組成物、
2.特表2008-538103 中枢神経系病変の治療のための物質の使用
【帝國のロングマーチ 26】
● 折々の読書 『China 2049』44
秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」
ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。
【目次】
序 章 希望的観測
第1章 中国の夢
第2章 争う国々
第3章 アプローチしたのは中国
第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
第5章 アメリカという巨大な悪魔
第6章 中国のメッセージポリス
第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
第8章 資本主義者の欺瞞
第9章 2049年の中国の世界秩序
第10章 威嚇射撃
第11章 戦国としてのアメリカ
謝 辞
解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
元防衛大臣)
第9章 2049年の中国の世界秩序
反客為主――反って客が主に為る
【危機❿】中国は営利目的で兵器を量産する
長年にわたって中国は、無法国家にミサイル技術を売ってきた。それらの国々にはイラン、
リビア、シリアなどが含まれ、大屋破壊兵器を開発し、近隣諸国に対して攻撃的にふるまい、
テロリストを武装させ、自国民を弾圧している。ミサイル技術管理レジーム(MTCR)は、
これらの国々によるミサイル関連品や技術の輸出を規制しようとする体制である。
1988年、アメリカは、中国に秘密の取引を提案した。それは成立するものと、わたしは
考えていた(当時のわたしは、同僚たちと同じくらい認識が甘かった)。その取引とは、中国
がミサイルの輸出を規制するのであれば、アメリカは、「中国との商業的および科学的 宇宙
協カを拡大し、今後すべての商業衛星の打ち上げに関して、天安門事件に対する制裁措 置の
適用を見送ること」を表明し(注91)、中国のブースターで打ち上げるアメリカの人工衛星の
数を増やす、というものだった(注92)。
アメリカの提案には、腎明にもさらに多くの飴と鞭が含まれていた。ゲイリー・サモアが書
いたNSCの覚え書き(漏洩したもの)によると、まず飴のほうは、MTCRに加入すること
によって、中国は「政治的信頼と、MTCRの今後を決める話し合いに加わる資格が得られ、
アメリカによるミサイル制裁措置を実質的に免除される。また、(MTCRへの加入は)MT
CRの管理下にあるアメリカから中国への輸出をいくらか促進させる」というものだった。鞭
のほうもやはり同じ覚え書きに書かれていた。「実際問題として、ミサイル問題が一向に進展
しないことが、われわれが打ち上げ割当を増やさない理由であり、すでに決ま っている(人
工衛星の打ち上げの)割当さえ危うくなるということを中国にはっきり伝える(注93)」。
それに対する中国の回答には、同国が何を優先し、何を目指しているかがはっきり表れてい
た,提案をきっぱり拒否したのだ。中国にとっては、技術協力や政治的名声よりも無法国家へ
の兵器の輸出のほうが重要だったのだ。
この回答は、中国が率いる財界がどんな世界になるかについても多くを語る。中国が力をつけるに
つれて、大量破壊兵器の拡散は、スローダウンするどころか、ますます加速していくだろう,無法国家は
孤立せず、中国の支援を受ける。一方、アメリカとその同盟国に対して、中国は協カしようとせず、機会
あるごとに攻撃し、弱体化を図る,とりわけ自国の安全保障が絡んでくると、中国はいっそう強硬な態度
に出るだろう。
Jesse Alexander Helms, Jr
たとえMTCRに加入しても、中国がそのルールに従うかどうかは疑わしい。ジェシー・ヘ
ルムズ上院議員は、武器に関する中国の二枚舌を暴く衝撃的な報告をし、その中で、「過去2
0年間に中華人民共和国は、15件の正式な拡散防止協定-核技術拡散に関して7件、ミサイ
ル技術の譲渡に関して6件、1997年に生物兵器禁止条約を批准・加盟した時に2件――を
交わしたが、そのいずれも遵守していない」と述べている。ヘルムズのスタッフは、中国の約
束違反や、アメリカの安全を損なう行為を時系列で表にまとめた。これらの違反行為には、弾
道ミサイルをパキスタン、イラク、シリア、イラン、リビア、北朝鮮に移送したことや、核兵
器の部品をパキスタンやイランに売ったことが含まれる(注94)。
2003年11月、中国がかなり広範な拡散ネットワークとつながっていることを示す、おそ
らく最も有力な証拠が出てきた。リビア政府が欧米当局に提出した多くの書順の中に、中国語
で書かれた取扱説明書があり、そこには、核分裂性物質を従来の薬で包んで核爆発を起こす
1000ポンドの爆弾を作る手順が記されていた。報道によると、中国の核兵器専門家が、パ
キスタンとリビアに設計情報を提供した後も、何年もパキスタンの核兵器科学者たちと陥力し
ていることが、これらの書類で明らかになった(注95)。
北京はなぜ無法国家への兵器やミサイルの輸出をやめないのだろうか。国務次官補のポーラ・
ドサッターは2006年に、中国がそれをやめないのは、核拡散と戦う「能力のなさ」か、「
その気のなさ」の反映だと示唆した(注96)。正解は間違いなく後者だ。中国の狙いは、核兵
器を独裁的でたいていは反欧米の政府に拡散することで、アメリカをはじめとする列強の影響
力を低下させるところにある。
これまでところ、マニフェストとして中国を頂点とする世界秩序が語られたことはないが、
過去10年の問に、ふたりの国家主席が、中国の意図をほのめかした。2005年9月、胡錦
濤主席は国連の首脳会議で、「平和でともに繁栄する和諧世界に向けて」と題したスピーチを
行い(注97)、その中で、「和諧世界]の概念について論じた(注98)。スピーチの中で胡
は「ともに協力し、平和と繁栄が続く和諧世界を築きましょう」と曖昧に述べている(注99)。
その8年後、胡錦濤の後任である習近平は、就任後初の演説の中で、端的な言葉で未来を示唆
した。「発展が何よりも重要」である、と。そして「中国の夢を実現するため、常に物質的お
よび文化的基盤を突き固めなければならない」とつけ加えた(注100)。世界を和諧させると
いう習が掲げた目標は、中国人の価値観に合わせて和諧させる、という意味だ,
胡と習の言葉は、前後の文脈を知らなければ、特に害はなさそうに思えるが、第1章で述べ
たように、中国の言う「和諧」の地政学的意味は「一極支配」であり、第2章で説明したよう
に、「中国の夢」とは、世界で唯一の超大国、つまり経済的、軍事的、文化的に無敵になるこ
とだ。
もし中国の夢が2049年に現実になれば、中国中心の世界は独裁政治を助長するだろう。
多くのウェプサイトが、欧米を中傷し中国を称賛する偽りの歴史で埋まる。発展途上国が「
成長が先、環境対策は後」という中国のモデルを採用するにつれて、食の安全や環境保護はま
すますないがしろにされ、より多くの国で大気汚染が進む。環境破壊が進むと、腫が失われ、
海面が上昇し、がんが蔓延する。国際機関の中には、周辺的な存在となり、現在のような介入
ができなくなるところもある。中国国有の独占企業や、中国が支配する経済同盟が世界市場を
コントロールし、世界最強の軍雅同盟も、北京が統括するようになるだろう。何しろその頃、
北京は、軍事研究部隊の人員、兵器システムに、アメリカより多くの資金を役人できるように
なっているのだ。
これは断じて、わたしたちが心待ちにする未来などではない,しかし、これまで中国の戦略
の長期的結申`を考えようとしなかった人々は、事実上、そのような未来を待っているに等し
い。中国に方向転換をさせるのは、ますます難しくなっていく。残念ながら、少数の人が目を
覚ましつつあるものの、わたしたちの影響力は小さくなる一方だ。今世紀半ばまでに今のまま
の中国が朝権を握ると、これらの「悪夢]は現実になるだろうし、将来の軍事力のバランスが
どうなるかは言うまでもない。戦国時代の物語では、新興勢力が軍事カを増強して、古い覇権
国を脅かすのは、物語の最終章だ。中国が古代のモデルに従うのであれば、殺手嗣計画にとど
まらず、アメリカの軍事力に本格的な挑戦を仕掛けるのは、まだしばらく先のことだろう。
外洋海軍を持つ、海外法地を築く、強い空軍を配備する――これらのいずれかを急ぎすぎる
と、中国政府は鼎の軽重を問うことになる。それは旧ソ連が犯した致命的な間違いだった。そ
の話は北京のタクシーの運転手でさえ知っている。
第10章 威嚇射撃
百聞不如一見――百聞は一見にしかず
『漢書』趙充国伝
※ 百聞不如一見、兵難遙度、臣願馳至金城、図上方略(百聞は一見に如かず。軍事情勢は離れた
ところから推測しがたいので、わたしは金城に駆けつけ、上策を図りたい)
2013年に公開された映画『ゼロ・グラビティ』の冒頭で、サンドラ・ブロックとジョー
ジ・クルーニーが演じる宇宙飛行士は、ヒューストンの飛行管制センターから厄介なメッセー
ジを受け取る,ロシアが用済みになった衛星をミサイルで爆破したところ、他の衛星も連鎖的
に爆発し、生じた大量の宇宙ゴミが、彼らが乗っているスペースシャトルに致命的なスピード
で接近しているというのだ。ハップル宇宙望遠鏡を修理するためにシャトルに乗り込んだふた
りだったが、急速その任務は、生きて帰ることになった。最終的には、ブロックが演じた人物
は、中国の無人宇宙ステーションに保管されていた補助燃料タンクの助けを借りて地球に帰還
する。
この映画は絶賛されたが、中には、現実的でないという批判もあった。ブロックは涙をこぼ
したが、宇宙では、涙は表面張力によって顔にまとわりつくはずだ。また、ブロックは、ハッ
ブル宇宙望遠鏡から中国の宇宙ステーションヘの移動する途中で国際宇宙ステーションに立ち
寄ったが、それら三つの施設は異なる軌道上にあるので、そのような移動は不可能だ。そして
一番多かったのは、プロックはぴったりした下着ではなく、おむつをはいていたはずだという
批判である。
だが、この映画に関しては、熟考に値する問題点が他にもいくつかある。それらは、ドラマ
としての矛盾というより、中国の100年計画と関わりがあるものだ。
第一に、サンドラ・プロックが演じる人物は、中国の宇宙ステーションに立ち入ることを許
されなかっただろう,ましてや操作するなど到底、無理だ,宇宙ステーションを設計したとき、
中国の技術者は故意に アメリカのものとは互換性がないように設計したと思われる(注1)。
彼らは宇宙でアメリカと連携することを望んでいなかったのだ。
第二に、ロシアが自国の衛星にミサイルを撃ち込んだことは一度もない。しかし中国は、2
007年にまさにそれを実行した。地上配備型衛星攻撃兵器(その気になれば、アメリカの衛
星に対しても使える兵器)を使って、機能しなくなった気象衛星を破壊し、軌道から外した。
アメリカ国防総省の報告によれば、中国の実験は「多くの国に懸念を引き起こし、結果として
生じた残骸は宇宙開発を進めるすべての国の資産を危険にさらし、人類の宇宙飛行にも危険を
もたらした(注2)」。アメリカの情報機関は、中国からミサイル発射に関する警告を受けて
おらず、それどころか、中国政府に衛星を攻撃する計画はないと繰り返し聞かされていた。中
国は無謀にも、歴史上最大で最も危険な宇宙ゴミが散在する一帯を作ってしまったが、映画の
中でその責を負わされたのはロシアだった。
この歪曲により、中国人は英雄視され、ロシア人は悪役になった。『ゼロ・グラビテイ』の
脚本家たちは、宇宙で起きたことと宇宙で起こりえることをあえて歪めた,だがそれは驚くほ
どのことではない。莫大な人口を擁する中国では、とてつもなく多くの人がアメリカ映画を観
て、ハリウ″ドの映画製作会社に利益をもたらす。ただし、それは中国が良く描かれた場合に
限る。そうでない映画は、中国では上映禁止になるだろう(注3)。
またしても、近複眼的な考えや利己主義のせいで、西洋のエリート層や世論形成に影響力の
ある人たちは、世間の人々に中国に対する楽観的な見方を提供してしまった。だが、言うまで
もなく、これも中国が計画したことなのだ。
この項つづく
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