河野太郎デジタル相が健康保険証をマイナンバーカードに置き換えると突然発表したのに、私は面食らっている。マイナンバーカードは顔写真がついているから、これは身分証明書保持の義務化である。
大きな会社などでは社員書を発行し、出入り口で社員の出入りを監視する。社員以外の出入り管理は、受付でおこなえる。社員証はあくまで社員の管理のためである。社員の出入り管理の目的は勤務状態の管理とともに、会社の機密情報が漏れた場合の実行犯割り出しなどにも使われる。
個人にマイナンバーを振るのは、国家が所有するデータベース群のあいだのひもづけである。マイナンバーによって、国家は、個人の給料、資産を監視するに充分な情報をすでにもっている。
写真付きマイナンバーカード保持を義務化するのは、国家が、国民一人ひとりの行動管理を行うということである。将来、首都などが厳戒態勢になったとき、外出者はマイナンバーカードの提示を求められるかもしれない。
近代社会で、都市に住むことに人びとが憧れたのは、都市の住民の匿名性である。匿名性が都市住民の自由を保障したのである。
デジタル化は、あくまで、経済的効率化のためで、自由を抑圧するためではない。
日本の民間企業はどこでもデジタル化が進んでいる。デジタル化の遅れているのは、政府である。
デジタル化とは、情報をデジタルの形で保持することと、組織内の業務をデジタル情報の流れに置き換えることの2つが主要なものである。政府がデジタル化を行うとき、高い倫理的な判断が要求される。
菅政権で印鑑を廃止する提案されたのは、役所内の承認プロセス(稟議)をデジタル化するためだったはずである。
私自身はIT会社の研究所にいたので、そのときの知識から助言したい。
デジタル化を行うには、まず、現状の業務フローの解析が必要である。業務はどんな情報を扱うのか、業務ではどのように情報が流れ、加工され、承認されていくかを解析しないといけない。承認された内容、変更履歴、時刻は、公文書として保存すべきである。
したがって、デジタル化の前に、政府内の業務フローの分析と改善すべき課題の報告書が、最初に、提出されなければならない。しかも、民主政社会では報告書は公開でなければならない。
つぎに、それを受けて、改善策としてのデジタル業務フローの概要設計書と実装計画書が作成されなければならない。これも、公開で、システムが首相をはじめとする政府の高官によって悪用されないか、また、将来の業務変更に対処できる柔軟性がシステムにあるのかが、チェックされねばならない。省庁改編に耐えるシステムが要求される。実装計画書は、どの部分を先に実装するのか、どの部分を将来にゆだねるのか、の計画書である。
それに、もとづいて、部分システムの詳細設計と実装にはいる。
自民・公明政権によってデジタル庁がつくられたが、これらの報告書がつくられたとは聞いたことがない。しかも、第1段階の業務フローの分析と改善すべき課題の報告書、第2段階の改善策としてのデジタル業務フローの概要設計書と実装計画書は、デジタル庁の職員が中心になって作成しなければならない。高級公務員試験を受けて入ってきた者は、クソの役にもたたない。
河野太郎に、手順を踏んで政府の業務のデジタル化を行っていただきたい。
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