きのうの夜 テレビは、埼玉県議会に自民党県議団が「虐待禁止条例」改正案を提出していたが、県民の多くの反対を受けて 取り下げの方針であると、報道した。
報道ではだけでは、現在の条例の何が問題で改正案を提出したのか、自民党県議団の意図がわからなかったので、判断がむずかしかった。しかし、報道が取り上げた問題点の多くは、私には妥当のように思える。
ここでは、ネット検索で得た自民党の改正案と2017年7月17日に公布された「埼玉虐待禁止条例」にもとづいて、議論してみたい。
自民党の改正案は、虐待禁止条例の第6条(養護者の安全配慮義務)につぎを加えるものである。
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第6条の2 児童(範疇A)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない。
2 児童(範疇B)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置(虐待に該当するものを除く。)をしないように努めなければならない。
3 (省略、待機児童への県の取り組み)
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範疇A、範疇Bは年齢の具体的制限であるので、ここでは、その部分を省略した。
たぶん、自民党県議団は、今年、両親が、児童を車中に置き去りにして、熱中病で死なせたことが頭にあったのだろうと思う。
条例の第6条は
「養護者(施設等養護者及び使用者である養護者を除く。)は、その養護する児童等の生命、身体等が危険な状況に置かれないよう、その安全の確保について配慮しなければならない。」
とあるので、車中置き去りのケースは、これまでの条例でカーバーされる。
改正案は具体的に「放置」という言葉を加えたことと、「してはならない」「しないよう努めなければならない」と言葉を強めたことにある。
しかし、虐待禁止条例自体には罰則がない。改正案も罰則に踏み込んでいないので、養護者への実質的拘束力はない。
この条例に罰則がないのは、国の「児童虐待防止法」「高齢者虐待防止法」「障害者虐待防止法」に罰則があるから、十分だと考えたのだろう。虐待禁止条例は、県や市町村が、養護者に児童、高齢者、障害者への虐待をやめるよう啓蒙活動を行うことを狙ったものと私は考える。
改正案の問題は、わざわざ付け足した禁止条項「当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない」が拡大解釈されやすい文言であることだ。
じっさい、NHKによれば、自民党県議団が説明した「放置」の例は以下のようなものだった。
- 子どもを車の中に置き去りにすること
- 子どもたちだけの自宅での留守番など
- 未成年の高校生に小学生などの兄弟を預けて買い物に出かける行為
- 子どもだけ家に残してゴミ捨てに行く行為
- 子どもたちだけで公園などで遊ぶこと
- 子どもたちだけでの登下校
- 子どもにおつかいさせる行為
私には、これらが「生命、身体等が危険な状況に置かれる放置」とは一概に思えない。「車の中に置き去り」も程度問題である。
また、子どもが自立して大人になっていくために、ときにはひとりになったり、子どもたちだけで遊んだり、お使いにいくことも、大事である。
自民党県議団は多数派であるから、思い付きで条例案をつくっても議会で成立させることができると、たかをくくっていたのではと疑う。お粗末だった。
条例改正より、県議会で、県や市町村の「虐待防止」啓蒙活動が有効であったか、どう改善すべきか、を検討することが先だと私は考える。
[蛇足]罰則がないのに「虐待禁止」条例とは滑稽に感ずるが、埼玉の自民党県議団は大げさな言葉が好きなのだろう。
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