今日11月7日の『朝日』社説――《官房機密費―この豹変は見過ごせぬ》で、民主党が〈野党時代の01年、機密性の高いものは25年、それ以外は10年後に情報公開を義務づける官房機密費流用防止法案を国会に出したはずだ。〉と書いていますが、この件についても無知・不勉強で知らない事実となっていて、昨日6日のエントリーの《平野官房長官機密費非公表方針/「私をご信頼いただきたい」――どこをどう信頼しろと言うのか》に触れることができませでした。「信頼」できない文章を書いたようです。参考までに最後にその法案を挿入しておきます。
政権交代で民主党政権に期待していたが、その期待がはぐらかされるようなことばかり起こっている。民主党内閣の成立から2ヶ月も経過していない日の浅いことだから、長い目で見守るべきだという意見、自民党政治のツケを払わされる大変な側面も考慮しなければならないという意見もあるが、先行きを不安視させる成立早々からの政策のブレ、不始末の連続となっている。
鳩山首相の偽装献金問題。故人が献金できようはずもないのに献金者名が「故人」であった「故人献金」。公設第1秘書の単独犯行だとして解任、これで既に終わったことと思っていたら、5万円以下の献金の場合は政治資金収支報告書に個人名を記載する必要のない「匿名献金」でも虚偽記載があることが発覚。しかも虚偽記載分の匿名献金者に所得税の寄付金控除の証明書が発行されていた疑惑が浮上。
当然首相本人が承知して関与していたかどうかが問題となるが、公設第1秘書を解任した際、無関係だとして会計責任者だった政策秘書は処分なしだったが、今回解職されていたことが分かったという。
疑惑が鳩山首相自身に迫っているさ中の会計責任者だった政策秘書の解職はトカゲのシッポ切りか、そうとは考えたくはないが、鳩山首相自身の最後の悪足掻きに見えないことはない。
こういった“政治とカネ”の風景はそこにチラホラと民主党も加わっていたが、自民党に良く見た風景のはずだが、今や民主党が自民党に取って代わって自らの風景とするようにも見える。
民主党として官房機密費を公開、「使途の透明性確保」を政策に掲げていながら、政権を取ると「透明性の確保」をかなぐり捨てて、非公開・非公表に走る、この情報隠しにしても自民党に良く見た風景であって、自民党が辿ってきた道に民主党も辿って、自民党紛いの道を自らの道とするような危惧を抱かせる。
ああ、自民党にもこんな風景があった、よく似た懐かしい風景だなあ――そんな風景を民主党が蘇らせ、国民の目に突きつけるようになったら、もうおしまいということだけではなく、日本の未来は自民党もダメ、民主党もダメで先行き怪しくなってくる。
官房機密費問題で鳩山首相は次のように述べている。
「国民に理解を求めるプロセスは必要になるが、すべてをオープンにすべき筋合いのものだとは必ずしも思っていない」(東京新聞)
自民党の日米核密約も「すべてをオープンにすべき筋合いのもの」ではないとの判断でその存在の否定をしてきたという論理をも成り立たせ得る鳩山首相の弁解となっている。
「オープン」としない項目を国民の判断の介入を許さない政治側の自由選択とすることを可能とするからだ。臭い物に蓋だって自由にできる。
民主党の国会議員が政党助成金を駐車場工事代金に使ったと見せかけて、工事代金90万円を建設業者が肩代わりした秘書給与の返済に充た虚偽記載の問題、「天下り禁止」を掲げていながら、日本郵政社長人事だけではなく、人事院人事でも人事官に元官僚を起用する国会同意人事案を提示した「天下り禁止」を裏切る天下り容認姿勢は民主党幹部にも元官僚との切れない人間関係――腐れ縁があるからなのは間違いのない疑惑で、既に自民党が辿ってきたよく見慣れた道を民主党も歩んでいき、同じ風景を描いていくように思えてならない。
機密費の使用に係る文書の作成、公表等に関する法律案(機密費流用防止法案)(2001/07/11) http://www.dpj.or.jp/news/?num=11131
(趣旨)
第一条 この法律は、機密費の使用の適正化に資するため、その支払記録書の作成、公表義務等について定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において「機密費」とは、国の安全、外交その他の国の重大な利益又は国民の生命、身体若しくは財産の安全に係る国の機密の活動に使用するための国の経費をいう。
(機密費の厳正な使用)
第三条 機密費を所管する内閣総理大臣及び各省大臣(以下「所管大臣」という。)は、機密費の特性にかんがみ、その厳正な使用に特に留意しなければならない。
(機密費支払記録書の作成)
第四条 所管大臣は、機密費の支払に関し、その支払の後速やかに、政令で定めるところにより、次の事項を記載した文書(以下「機密費支払記録書」という。)を、当該機密費の支払をした職員に作成させなければならない。
一 支払をした職員の官職及び氏名
二 支払の年月日
三 支払金額
四 支払の相手方の氏名又は名称
五 支払に係る活動及び当該活動が機密である具体的な理由
六 支払について承認をした者の官職及び氏名
(機密費支払記録書の公表義務)
第五条 所管大臣は、機密費支払記録書を作成した日の属する年度の翌年度の四月一日から起算して、次に掲げる機密費支払記録書の区分による期間を経過した場合には、政令で定めるところにより、当該機密費支払記録書を公表しなければならない。
一 次号に掲げる機密費支払記録書以外の機密費支払記録書 10年
二 特に機密の程度が高い活動であると所管大臣が認めるもののために支払われた機密費に
係る機密費支払記録書 25年
2 前項に規定する場合において、機密費支払記録書の一部に行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第五条第一号から第四号までに掲げる情報が記録されているときは、所管大臣は、当該情報が記録されている部分について前項各号の期間を、一定の期間を定めて延長するものとする。延長後の期間が経過したときも、同様とする。
(機密費支払記録書の適正な保存)
第六条 所管大臣は、機密費支払記録書を、前条の規定による公表の時まで、政令で定めるところにより、適正に保存しなければならない。
(政令への委任)
第七条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
理 由
機密費の使用の適正化に資するため、その支払記録書の作成、公表義務等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
廃案になったとは言え、機密費に関わる「使途の透明性確保」に向けたこれだけ立派な法案を出していながら、簡単に方針変換を行う。民主党自身のの保身のためにも廃案になるのが分かっていて国会に提出したというのだろうか。
【謝罪と訂正】11月5日エントリーの当ブログ《谷垣総裁チャリ全国行脚と予算委員会で叱られた町村信孝(2)》の文中、現在の沖縄県知事を「中山知事」と表記してしまいましが、無知・不勉強ゆえの「仲井真知事」の誤りでした。謝罪し、訂正します。