2007年1月、安倍内閣の教育再生会議は中間報告で公立学校などでの「奉仕活動の必修化」の方針を掲げた。ボランティア体験を通じた規範意識の育成は安倍晋三の持論で、総裁選に立候補時、自民党青年局主催の公開討論会で大学入学(時期)を世界の慣行に合わせて国公立大学の入学時期を9月に変更、「(高校卒業後の)4月から9月までの間は、例えばボランティア活動をやってもらうことも考えていい」と高校卒業から大学入学までの約5か月間の社会奉仕活動を主張している。(YOMIURI ONLINE)
同「YOMIURI ONLINE」は〈大学の9月入学と社会奉仕活動をめぐっては、2000年末に森首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」がまとめた報告書に盛り込まれていた。〉と解説しているが、森喜朗の派閥育ち、その「神の国」発言を引き継ぐ同じ保守体質であることと併せて安倍晋三が受け継いだ大学9月入学と奉仕活動であろう。
「教育改革国民会議」をそもそもは小渕内閣が設置した私的諮問会議であったが、小渕恵三が脳梗塞で倒れたため森喜朗も仲間に加わった青木幹雄・村上正邦・野中広務・亀井静香の五人組の密室謀議で総理後継を森と決めて森内閣(2000年4月5日~2001年4月26日)が継承した教育改革を目的とした議論の場であったが、第2次森改造内閣で文部科学相に任命された町村信孝が大学9月入学・奉仕活動について2002年2月2日記者団との懇談会で次のように発言している。
大学9月入学によって高校卒業から生じる5カ月近くの空白期間の使途について、「3、4カ月奉仕活動をするのもいい」と奉仕活動に向ける考えを示した上で、〈奉仕活動の例に自衛隊入隊を挙げ、「3カ月で、ぐうたら息子が変わるという。日本にはそういう場がない。体験入隊とは言わないが、もうちょっとソフトなプログラムがいくつも作れるだろう」(《「大学入学は9月に 3カ月奉仕活動を」町村文科相が考え示す》『朝日』夕刊/2001年2月3日)と述べたという。
町村は自衛隊体験入隊の効用を「3カ月で、ぐうたら息子が変わる」教育的即効性にあるとしている。この即効性を前提とするなら、「体験入隊とは言わないが、もうちょっとソフトなプログラムがいくつも作れるだろう」は自衛隊体験入隊の枠内の「ソフトなプログラム」であるのは容易に理解できる。
自衛隊体験入隊を外したなら、自らがそうだと信じている「3カ月で、ぐうたら息子が変わる」教育的即効性をむざむざと排除することになる。あくまでも自衛隊体験入隊が抱えるスパルタ式体育会系訓練の印象を和らげる「体験入隊とは言わないが」であり、正規の自衛隊訓練よりも「もうちょっとソフトなプログラム」ということでなければ、発言に矛盾が生じる。
あるいは「日本にはそういう場がない」という言葉は戦争を経験した日本人が「軍隊に行って根性を叩き直してこい」とか、「軍隊がなくなって、根性を入れる場がなくなった」と軍隊の教育的な効用を言い立てる文脈と同じ意識を体裁としていることから、内心では衝動として抱えているだろうが、世間が体験入隊から即徴兵制へと連想して反撥することを恐れ、それを和らげる煙幕として「もうちょっとソフトなプログラム」と柔軟性を装ったといったところに違いない。
安倍晋三は官房長官時代に自身が選出されることになる06年9月の総裁選に向けて憲法改正と教育改革に重点を置いた公約を掲げ、総理・総裁となってから、「教育再生会議」と仰々しく銘打って教育改革に取り組み、その柱に「『公』意識の育成」と「奉仕活動の必修化」を掲げたが、後者は実現させることはできなかった。
「『公』意識の育成」は安倍内閣が2006年12月成立させた「改正教育基本法」の「第一章 教育の目的及び理念」の「教育の目標」5で「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と謳っている中の「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する」とする、伝統・文化・国家・郷土といった「公」に対する意識の植え付けを法律で義務づけたことによってタテマエとしては実現させている。
だが、何を以て伝統とするか、何を以て文化とするかは個人それぞれの選択と認識にかかっている自由裁量であって、その選択と認識に応じて国や郷土に対する認識も個人それぞれに異なりを見せてくる。
それを教育の名を借りて伝統と文化に対する認識を国の選択に任せて、それをオオヤケ(=公)の伝統・文化だと認識させて一律的に「尊重」を義務づける。そのような伝統と文化に添って色づけた「国と郷土」を愛するように仕向ける。このような個人性の無視は国家という「公」への肯定要求の裏返しとしてある強制的否定に当たる。
この手の強制性は常に上から下に向かう。上から下に向けた伝統・文化・国家・郷土等の「公」の強制を意味する。
これは実現させることができなかったとはいえ、安倍や町村、その他の日本の保守政治家が衝動としている「奉仕活動の義務化」意志が内包している国家的な強制性ばかりか、奉仕活動を通じた規範意識の上から下に向けた植えつけの強制意志と同じ構図を取る。その最たる形式が国家による自衛隊の体験入隊という名の一律的強制による規範意識の植え付けであろう。実現させることができたなら、5カ月間前後の短期間とは言え、一律的強制となるゆえに、形式的には徴兵制と何ら変わりはない。
当然安倍晋三にしても9月大学入学・高卒から入学までの奉仕活動の義務化だけではなく、奉仕活動の一つとして前任者が目指した自衛隊体験入隊の義務づけをも希望としては受け継いでいると見るべきであろう。
いわば国家を「公」として、その「公」に向けた奉仕活動要求であり、当然のこととして奉仕活動を通じて学ぶべき規範意識は「公」(=国家)に向けて発揮すべき形式を取っていることになる。
このことを言い換えると、下(=国民)から上(=国家)に向けて発揮することを要求した公意識・規範意識であって、その逆ではないと言うことである。
下(=国民)を発揮対象と定めて、政治家・官僚等の上を公意識・規範意識の発揮対象と定めず、発揮対象から外した森、町村、安倍等の自民党保守派の要求となっていた。外していたがゆえの公意識・規範意識の結末が上(=国家)の不正やムダ遣い等の私的恣意の横行を許すこととなった現在の社会――国の姿と言うことであろう。現在の公意識・規範意識のザマといったところではないか。
最近から遡って上(=国家)の公意識・規範意識のザマを新聞記事の見出しから拾って羅列してみる。
《国費ムダ2364億円、埋蔵金1千億円指摘 会計検査院》(asahi.com/2009年11月11日11時20分)
会計検査院が鳩山由紀夫首相に提出した国費の使い道を検証した08年度の決算検査報告の税金のムダ遣いや不適切な経理処理などの指摘件数は717件、計約2364億円にのぼり、07年度の約1253億円を上回って過去最高の輝かしい公意識観・規範意識の記録を達成したというもの。
《不正経理72億円、全国で横行 検査院指摘と自治体調査》(asahi.com/2009年11月11日23時19分)
会計検査院が08年度の検査報告でまとめた26府県と15市の国の補助金などをめぐる地方自治体の不正経理約32億円の指摘とは別に、自治体の内部調査で約29億円の不適正経理が判明、07年度の報告でまとめた12道府県の約11億円を加えた総額は約72億円となり、こういった不正に関わる公意識と規範意識が全国規模で横行している実態が浮かんだというもの。
《“公金不適切 有効に活用を” 》(NHK/09年11月12日 4時22分)
〈11日に内閣に提出された平成20年度の会計検査院の報告では国の補助金のむだづかいなど、これまでで最も多いあわせて2364億円の公金について扱いが不適切だったと指摘〉されたというもの。
《特定法人が入札 独占的に受注》(NHK/09年11月11日 18時45分)
厚生労働省所管の独立行政法人「雇用・能力開発機構」が業務を発注する際に今年度から競争入札を始めたが、入札にはこれまで個別に契約を結んできた公益法人「雇用振興協会」のみが参加、独占的に受注していたというもの。
受注金額は約200億円。「雇用振興協会」は昨年度まで40年近くにわたってこの業務を受注、厚生労働省からは元局長ら150人のOBが天下っていたというが、双方に何らかのウマミを生み、そのウマミを他に渡したくない公意識・規範意識に則った独占的受注といったところだろう。
《文科省OBの独法理事長、年間報酬1800万円》(asahi.com/2009年11月12日16時1分)
行政刷新会議が実施した「事業仕分け」にからみ、いずれも文科省所管の独立行政法人の教員研修センター理事長(文部科学省元高等教育局長)が1849万円、各地の青少年自然の家などを運営する国立青少年教育振興機構の理事長(元文科審議官)が1790万円の年間報酬を受け取っていたことがわかったというもの。
年間報酬1800万円程度ではまだまだ上がある、たいしたことはない公意識・規範意識といったところか。
《八ツ場上流、ヒ素検出を公表せず 国交省》(asahi.com/2009年11月13日3時31分)
自分たちが不利な立場に立たされる都合の悪い情報を隠匿していたということ。都合の悪い情報を隠すと言うことは何ら問題はないということを示す情報操作と世論操作を兼ね備えている公意識・規範意識なのは断るまでもない。
《最初入札、追加は随契 国交省工事、検査院「高くつく」》(asahi.com/2009年11月12日22時11分)
〈国土交通省や国の補助金を受けた自治体が発注する河川や道路などの公共工事で、最初に一般競争入札で請負契約を結んだ後、追加の工事で同じ請負業者と随意契約を結んだ場合、その予定価格が高くなっていたことが会計検査院の調べで分かった。こうした随意契約は約2388億円にも上っていた。〉というもの。
便宜を与えて、何らかの便宜を受けるウマミ創出の方程式が存在するからこその随契という名の便宜供与であろう。
《NHK、規約違反調達85億円 コンピューター随意契約》(asahi.com/2009年11月2日4時33分)
NHKが国の機関と同様に予定価格が一定額以上の物品は世界貿易機関(WTO)政府調達協定に基づく措置で、原則として一般競争契約で調達することや、海外企業も応札できるように英文を含めた入札公告の掲載などが義務づけられているにも関わらず、コンピューター関係の契約を本来は一般競争契約にする必要があったが、規定に反して計約85億円分も随意契約にしていたことが会計検査院の調べで分かったというもの。
「NHK、お前もか」とばかりにNHKにまで公意識・規範意識の跳梁跋扈が及んでいた。
《割高運賃で3000万円ムダ 外務省の在外職員公費旅行》(asahi.com/2009年11月2日3時1分)
自分の懐を痛めないカネで払う運賃だから、快適なフライトを愉しもうという公意識・規範意識の表れであろう。
《日本の債務、危機後も拡大懸念=14年にはGDPの2.5倍に-IMF》(時事ドットコム/2009/11/04-01:10)
国の借金がいくらに増えようが、そんなの関係ねえ、関係ねえったら、関係ねえの公意識・規範意識の発揮は見事なもの。
《天下り公益法人に調査丸投げ 検査院、国交省に改善要求》(asahi.com/2009年10月30日15時3分)
これも彼らなりの公意識・規範意識に則ったウマミ創出の方程式。
官僚・役人たちの公意識・規範意識例はまだまだ枚挙に暇(いとま)なしと言ったところだが、キリがないからこの辺でやめておく。勿論自民党政治家たちが下(=国民)に求め、上(=官僚・役人)に求めなかった結末として野放しに許すこととなった官僚・役人たちの公意識・規範意識であり、これが日本の社会の姿、国の姿となっている。
同「YOMIURI ONLINE」は〈大学の9月入学と社会奉仕活動をめぐっては、2000年末に森首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」がまとめた報告書に盛り込まれていた。〉と解説しているが、森喜朗の派閥育ち、その「神の国」発言を引き継ぐ同じ保守体質であることと併せて安倍晋三が受け継いだ大学9月入学と奉仕活動であろう。
「教育改革国民会議」をそもそもは小渕内閣が設置した私的諮問会議であったが、小渕恵三が脳梗塞で倒れたため森喜朗も仲間に加わった青木幹雄・村上正邦・野中広務・亀井静香の五人組の密室謀議で総理後継を森と決めて森内閣(2000年4月5日~2001年4月26日)が継承した教育改革を目的とした議論の場であったが、第2次森改造内閣で文部科学相に任命された町村信孝が大学9月入学・奉仕活動について2002年2月2日記者団との懇談会で次のように発言している。
大学9月入学によって高校卒業から生じる5カ月近くの空白期間の使途について、「3、4カ月奉仕活動をするのもいい」と奉仕活動に向ける考えを示した上で、〈奉仕活動の例に自衛隊入隊を挙げ、「3カ月で、ぐうたら息子が変わるという。日本にはそういう場がない。体験入隊とは言わないが、もうちょっとソフトなプログラムがいくつも作れるだろう」(《「大学入学は9月に 3カ月奉仕活動を」町村文科相が考え示す》『朝日』夕刊/2001年2月3日)と述べたという。
町村は自衛隊体験入隊の効用を「3カ月で、ぐうたら息子が変わる」教育的即効性にあるとしている。この即効性を前提とするなら、「体験入隊とは言わないが、もうちょっとソフトなプログラムがいくつも作れるだろう」は自衛隊体験入隊の枠内の「ソフトなプログラム」であるのは容易に理解できる。
自衛隊体験入隊を外したなら、自らがそうだと信じている「3カ月で、ぐうたら息子が変わる」教育的即効性をむざむざと排除することになる。あくまでも自衛隊体験入隊が抱えるスパルタ式体育会系訓練の印象を和らげる「体験入隊とは言わないが」であり、正規の自衛隊訓練よりも「もうちょっとソフトなプログラム」ということでなければ、発言に矛盾が生じる。
あるいは「日本にはそういう場がない」という言葉は戦争を経験した日本人が「軍隊に行って根性を叩き直してこい」とか、「軍隊がなくなって、根性を入れる場がなくなった」と軍隊の教育的な効用を言い立てる文脈と同じ意識を体裁としていることから、内心では衝動として抱えているだろうが、世間が体験入隊から即徴兵制へと連想して反撥することを恐れ、それを和らげる煙幕として「もうちょっとソフトなプログラム」と柔軟性を装ったといったところに違いない。
安倍晋三は官房長官時代に自身が選出されることになる06年9月の総裁選に向けて憲法改正と教育改革に重点を置いた公約を掲げ、総理・総裁となってから、「教育再生会議」と仰々しく銘打って教育改革に取り組み、その柱に「『公』意識の育成」と「奉仕活動の必修化」を掲げたが、後者は実現させることはできなかった。
「『公』意識の育成」は安倍内閣が2006年12月成立させた「改正教育基本法」の「第一章 教育の目的及び理念」の「教育の目標」5で「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と謳っている中の「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する」とする、伝統・文化・国家・郷土といった「公」に対する意識の植え付けを法律で義務づけたことによってタテマエとしては実現させている。
だが、何を以て伝統とするか、何を以て文化とするかは個人それぞれの選択と認識にかかっている自由裁量であって、その選択と認識に応じて国や郷土に対する認識も個人それぞれに異なりを見せてくる。
それを教育の名を借りて伝統と文化に対する認識を国の選択に任せて、それをオオヤケ(=公)の伝統・文化だと認識させて一律的に「尊重」を義務づける。そのような伝統と文化に添って色づけた「国と郷土」を愛するように仕向ける。このような個人性の無視は国家という「公」への肯定要求の裏返しとしてある強制的否定に当たる。
この手の強制性は常に上から下に向かう。上から下に向けた伝統・文化・国家・郷土等の「公」の強制を意味する。
これは実現させることができなかったとはいえ、安倍や町村、その他の日本の保守政治家が衝動としている「奉仕活動の義務化」意志が内包している国家的な強制性ばかりか、奉仕活動を通じた規範意識の上から下に向けた植えつけの強制意志と同じ構図を取る。その最たる形式が国家による自衛隊の体験入隊という名の一律的強制による規範意識の植え付けであろう。実現させることができたなら、5カ月間前後の短期間とは言え、一律的強制となるゆえに、形式的には徴兵制と何ら変わりはない。
当然安倍晋三にしても9月大学入学・高卒から入学までの奉仕活動の義務化だけではなく、奉仕活動の一つとして前任者が目指した自衛隊体験入隊の義務づけをも希望としては受け継いでいると見るべきであろう。
いわば国家を「公」として、その「公」に向けた奉仕活動要求であり、当然のこととして奉仕活動を通じて学ぶべき規範意識は「公」(=国家)に向けて発揮すべき形式を取っていることになる。
このことを言い換えると、下(=国民)から上(=国家)に向けて発揮することを要求した公意識・規範意識であって、その逆ではないと言うことである。
下(=国民)を発揮対象と定めて、政治家・官僚等の上を公意識・規範意識の発揮対象と定めず、発揮対象から外した森、町村、安倍等の自民党保守派の要求となっていた。外していたがゆえの公意識・規範意識の結末が上(=国家)の不正やムダ遣い等の私的恣意の横行を許すこととなった現在の社会――国の姿と言うことであろう。現在の公意識・規範意識のザマといったところではないか。
最近から遡って上(=国家)の公意識・規範意識のザマを新聞記事の見出しから拾って羅列してみる。
《国費ムダ2364億円、埋蔵金1千億円指摘 会計検査院》(asahi.com/2009年11月11日11時20分)
会計検査院が鳩山由紀夫首相に提出した国費の使い道を検証した08年度の決算検査報告の税金のムダ遣いや不適切な経理処理などの指摘件数は717件、計約2364億円にのぼり、07年度の約1253億円を上回って過去最高の輝かしい公意識観・規範意識の記録を達成したというもの。
《不正経理72億円、全国で横行 検査院指摘と自治体調査》(asahi.com/2009年11月11日23時19分)
会計検査院が08年度の検査報告でまとめた26府県と15市の国の補助金などをめぐる地方自治体の不正経理約32億円の指摘とは別に、自治体の内部調査で約29億円の不適正経理が判明、07年度の報告でまとめた12道府県の約11億円を加えた総額は約72億円となり、こういった不正に関わる公意識と規範意識が全国規模で横行している実態が浮かんだというもの。
《“公金不適切 有効に活用を” 》(NHK/09年11月12日 4時22分)
〈11日に内閣に提出された平成20年度の会計検査院の報告では国の補助金のむだづかいなど、これまでで最も多いあわせて2364億円の公金について扱いが不適切だったと指摘〉されたというもの。
《特定法人が入札 独占的に受注》(NHK/09年11月11日 18時45分)
厚生労働省所管の独立行政法人「雇用・能力開発機構」が業務を発注する際に今年度から競争入札を始めたが、入札にはこれまで個別に契約を結んできた公益法人「雇用振興協会」のみが参加、独占的に受注していたというもの。
受注金額は約200億円。「雇用振興協会」は昨年度まで40年近くにわたってこの業務を受注、厚生労働省からは元局長ら150人のOBが天下っていたというが、双方に何らかのウマミを生み、そのウマミを他に渡したくない公意識・規範意識に則った独占的受注といったところだろう。
《文科省OBの独法理事長、年間報酬1800万円》(asahi.com/2009年11月12日16時1分)
行政刷新会議が実施した「事業仕分け」にからみ、いずれも文科省所管の独立行政法人の教員研修センター理事長(文部科学省元高等教育局長)が1849万円、各地の青少年自然の家などを運営する国立青少年教育振興機構の理事長(元文科審議官)が1790万円の年間報酬を受け取っていたことがわかったというもの。
年間報酬1800万円程度ではまだまだ上がある、たいしたことはない公意識・規範意識といったところか。
《八ツ場上流、ヒ素検出を公表せず 国交省》(asahi.com/2009年11月13日3時31分)
自分たちが不利な立場に立たされる都合の悪い情報を隠匿していたということ。都合の悪い情報を隠すと言うことは何ら問題はないということを示す情報操作と世論操作を兼ね備えている公意識・規範意識なのは断るまでもない。
《最初入札、追加は随契 国交省工事、検査院「高くつく」》(asahi.com/2009年11月12日22時11分)
〈国土交通省や国の補助金を受けた自治体が発注する河川や道路などの公共工事で、最初に一般競争入札で請負契約を結んだ後、追加の工事で同じ請負業者と随意契約を結んだ場合、その予定価格が高くなっていたことが会計検査院の調べで分かった。こうした随意契約は約2388億円にも上っていた。〉というもの。
便宜を与えて、何らかの便宜を受けるウマミ創出の方程式が存在するからこその随契という名の便宜供与であろう。
《NHK、規約違反調達85億円 コンピューター随意契約》(asahi.com/2009年11月2日4時33分)
NHKが国の機関と同様に予定価格が一定額以上の物品は世界貿易機関(WTO)政府調達協定に基づく措置で、原則として一般競争契約で調達することや、海外企業も応札できるように英文を含めた入札公告の掲載などが義務づけられているにも関わらず、コンピューター関係の契約を本来は一般競争契約にする必要があったが、規定に反して計約85億円分も随意契約にしていたことが会計検査院の調べで分かったというもの。
「NHK、お前もか」とばかりにNHKにまで公意識・規範意識の跳梁跋扈が及んでいた。
《割高運賃で3000万円ムダ 外務省の在外職員公費旅行》(asahi.com/2009年11月2日3時1分)
自分の懐を痛めないカネで払う運賃だから、快適なフライトを愉しもうという公意識・規範意識の表れであろう。
《日本の債務、危機後も拡大懸念=14年にはGDPの2.5倍に-IMF》(時事ドットコム/2009/11/04-01:10)
国の借金がいくらに増えようが、そんなの関係ねえ、関係ねえったら、関係ねえの公意識・規範意識の発揮は見事なもの。
《天下り公益法人に調査丸投げ 検査院、国交省に改善要求》(asahi.com/2009年10月30日15時3分)
これも彼らなりの公意識・規範意識に則ったウマミ創出の方程式。
官僚・役人たちの公意識・規範意識例はまだまだ枚挙に暇(いとま)なしと言ったところだが、キリがないからこの辺でやめておく。勿論自民党政治家たちが下(=国民)に求め、上(=官僚・役人)に求めなかった結末として野放しに許すこととなった官僚・役人たちの公意識・規範意識であり、これが日本の社会の姿、国の姿となっている。