年中、蕎麦屋で一杯は好むところだが、冬場はことさら。
冷気を避けて蕎麦屋へ飛び込んで、燗酒を所望する。
でも蕎麦屋ならどこでもいい、というわけでもない。
私好みの「豊の秋」(島根)。 かえりを摘まみながら。
ここ「なにわ翁」の素晴らしさは、酒肴のレベルの高さ。
店主は蕎麦に集中するので、料理はお母さんが担当なさる。
いい肴があると、どうしたって酒ということになる。
器もいいのはさすが骨董の街、老松町。
天麩羅出して欲しいって言うのだけど、主人勘田さんはなかなか首を縦に振らない。
その頑固さは、「翁」高橋邦弘さんゆずりなのかもしれない。
ゆくゆくは蕎麦だけでって思ってるのかもしれない。
だが大阪人ってのはあれこれ食べたい、口卑しい民族だってことをお忘れなく。
さて、お蕎麦。
牡蠣そば、ねぎそば、蛍烏賊のそば、白子そば…
いろいろな種物もそそられるのだが、腹具合と懐具合をかんがみ…
「ざる一枚~!」
蕎麦は気持ちをしゃんとさせてくれる。
きりっと冷水で締める冬場の蕎麦は尚のこと。
山葵はつゆに溶くのも自由だけど、山葵をダイレクトに感じたい向きは
蕎麦切りに乗せてたぐるのもよろしかろう。
だけど注意したいのは「…でなければならぬ」はご法度。
別に作法もへったくれも、そんな食い物ではない。もっと自由でよろしやん。
ああ、微かな香りがいいねぇ。どこかナッツのような、土の香りがするんですなぁ。
田舎もないのに田舎を思い起こす。
後は大急ぎで啜る。その間に残りの酒もやっつける。
乾いてきたら酒をピッピッとかけるのもまたよし。
残ったつゆも、湯とうで出される蕎麦湯できれいさっぱり。
このまんま土瓶敷きになりそうな。
良い店になったなぁ…。
開店の頃からいただいてるが、さてこっちはそれだけ進歩したのであろうか。
んなわけゃないわなぁ。
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