大阪駅と阪急梅田の間、JRの高架下にある「新梅田食道街」。
食堂じゃなくて食道。道に小さな店が16軒だか軒を並べて始まった。
ここは最も古い一軒「北京」の支店。縄のれんがかかる『樽・金盃』。
その名の通り、樽酒を飲ませる店。
夕方ともなれば、サラリーマンたちが一人また一人とやってくる。
そして黙って酒を飲む。
「エッグ」300円 文字通りの玉子。油と塩だけ。熱々が出てくるので、これを一気呵成に混ぜる。半熟が好みだろうが、じっくりおこげを作ろうが、醤油をちょいと落とそうが客の意のまま。単純だけに面白い。何処でも出せそうなのだが、誰もやらない。
焼き味噌300円、なまこ350円
一見クレームブリュレ、味噌を焼いただけでこの香ばしさは出ない。隠し味のニンニクやら、なかなか手の込んだことをやっている。徳島ではこうした味噌で飲ませる由。蕎麦屋の味噌とはまた違う酒肴の佳品。
なまこ酢、柔らかいもちもちした食感を好む関西人にとって、この噛みしめる味わいはほとんど独壇場ではないか。
先の見えた人生の諦観、職場での憤懣、家庭での辛さ、いろんな思いを込めて、男はなまこを、ツメ物の緩んだ奥歯でグッと噛みしめるのである。
金盃ポテト250円 マヨネーズは大キライ、ソースもおかない主人。
ジャーマンポテトのようなベーコンと塩、粒胡椒をきかせたポテト。
ビールにももちろん樽酒にも。
肩に背負ってるものを5分でもいいから降ろしてからお帰り。そのためにはちょっとずつ譲り合って、少しでも快適に過ごそうよという主人は、ときとして度が過ぎる客にピシリと指導を与える。
そこが小気味よくもある。大阪にはこのタイプ珍しい。
「大声、大勢、大酒」はご法度というが、どの立ち飲みでも通じる。
自分一人の飲み屋ぢゃない。
安く酔おうという限りは、空気がよめなきゃいけない。
特にこの店は名店ですね。
立ち飲みというと酒をきゅっと飲んでさっと引き上げたい所ですが、こんな店ではつまみもしっかり味わってみたい。
家に帰ればカカアがメシ作ってるわけなんで、
そこに響かない程度に引っ掛けて、ちょいと摘まんで、ササッと帰りたいところ。
長っ尻は無用なのだけど、居心地よかったりするんですな。女将さんが凝り性で、さりげない一品にもいろいろ工夫されているのが嬉しいところです。