青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

「ギリシャと日本で対応する興味深い数種の蝶について」 2022.4.11

2022-04-11 20:51:01 | 里山、蝶、ギフチョウ





ベニシジミLycaena philaeas











パロス島 2022.3.16

パロス島滞在40日間で、唯一撮影した蝶。オリーブ畑の下に咲き乱れるお花畑の中ではなく、その脇の土塊の上にとまっていた。







アテネ近郊アフィドネス 2022.4.9

線路の脇(昨日アップした写真と同じ)の草叢にいた。









アテネ近郊アフィドネス 2022.4.9

昨日と全く同じ場所に出現。





 
中国と東アジアの蝶 キンイロフチベニシジミ



ベニシジミの仲間の全体像については、↑「週刊中国の蝶1月1日号“キンイロフチベニシジミ”」を参照してください。



ベニシジミ族は世界に広く分布、南米、アフリカ、オセアニア(ニューギニア)には少数種が知られるのみだが、ヨーロッパ、中国大陸、北米大陸、熱帯アジアなどには、多数の種が繁栄している。ただし日本には1種(ベニシジミ)しか分布せず、台湾にも1種(ウラフチベニシジミHeliophorus epicles)のみが分布する。



いくつもの小グループ(属またはそれに準ずるタクサ)に分割され、狭義のベニシジミ群(亜属Lycaena)は、ヨーロッパからアジアを経て北米大陸に至る北半球温帯域に広域分布するベニシジミLycaena philaeasと、アフリカ東部のアビシニア高地に分布するヒイロベニシジミLycaena abbottiiの2種からなる。ヒイロベニシジミは外観がベニシジミとは著しく異なるが、雄交尾器の形状には全く差異がなく、従って種としてはベニシジミに含める見解もある。



最も狭義のベニシジミ群はベニシジミ一種のみから構成されるという見解がある一方、(ヒマラヤ地方産や中国西南部産を独立種と見做すなど)いくつかの種に分割される可能性もある。



日本では北海道北端から九州南端まで分布し、各地で普遍的に見られるが、屋久島以南には在来分布していない。ひとつの法則があるように思われ、ユーラシア大陸温帯域に広く分布する種は屋久島以南には分布せず原則九州本土止まり、周日本海分布様式の種の多くは屋久島まで至り、屋久島産は多少なりとも特化している。ベニシジミは前者の典型で、屋久島には分布していなかったが、著者は2006年に移入個体を確認、現在は定着しているようである。



中国大陸の状況は、日本列島とはかなり異なる。北部(中国東北地方など)では、日本同様に普遍的に見られるようだが、中~南部では必ずしも普遍的な種ではないように思われる。



おそらく異なる由来の集団が2極分布していて、東部、例えば上海の近郊では都市周辺を含む低地にも見られ、外観や生活様式も日本産に似ているよう思われるが、多くの同族種が棲息する中国西南部では、種ベニシジミは、どうやら高標高地に限られる希少種のようである。中国南西部高標高地産はおそらく年1化、春型のみが出現し、外観の印象は、日本産や中国北‐東部産よりもヨーロッパ産に似ているように思われる。



北米大陸産も興味深い。中国大陸同様に2極分布している可能性があり、東部(低標高地を含む)産はヨーロッパ産と関連が深く(人為移入ともされるが必ずしも絶対的な結論ではない)、中‐西部の高標高地に希少分布する集団は、 地史的な時間レベルでは比較的新しい時代まで東北アジア産と交流を持っていた集団であろうと考えられる。



日本でもギリシャでも普通種だが、興味深いテーマを数多く内包していて、今回出会うことが出来て嬉しかった蝶の

一つである。



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