ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子「とにかくうちに帰ります」

2014-08-17 08:56:16 | 津村記久子
 またまた津村記久子。どうして私は、津村記久子の小説が好きなのかと、自分なりに分析してみると…。
 小説に恋愛要素があまり無いから、かもしれない。彼女のほとんどの小説で、女主人公が非モテ系、恋愛偏差値が極端に低いのだ。


 例えば、この『とにかくうちへ帰ります』では、2組のコンビが暴風雨の中、死にそうになりながら、大きな橋を渡って、バス停にたどり着こうとする道程を書いている。
 一組は、塾帰りの小学生と30代のサラリーマン。もう一組は、OLと、その一年後輩のサラリーマン。二人は一緒に会社を出たのではなく、偶然、橋のふもとのコンビニで出会ったのだ。
 雨と風はすざましく、コンビニは店じまいするところだった。(24時間営業のコンビニでも、天候次第で、こういう事もあるんだね)
 ここで、ビニールのレインコートや、温かい飲み物を買って、暴風雨の中、歩き出す。本来ならバスが通っているが、それに乗り遅れ、しかも、いつも通っている道路は、交通事故があって通行止めになってしまった。
 仕方ないので、大回りして遠くの橋を渡らなければ、帰れない。

 荒れ狂う雨と風の中、永遠に続くかと思われるほど長い橋を渡りきって、やっとバス停にたどり着くのだが…。


 こういった状況下で、ほとんどの女流小説家が、二人の間に恋愛感情を芽生えさせるが、この小説では何も起こらない。

 もちろん、津村記久子の小説内でも、恋愛体質の女性は登場する。この『とにかく~』の中にも、「人は一生恋をする生き物よ」とのたまう30歳代後半の女性が出てくる。お前はフランス人か!!!
 でも、そういった女の人はワキ役なんだよね。津村記久子の小説では。主役になりえない。サッパリしていて好感が持てる。

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