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京都花街の経営学(西尾久美子)

2008年04月04日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

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 京都の花街の舞妓さんの存在や一見さんお断りというシステムはよく知られているとは思いますが、それ以上の詳しい内容についてはなかなか明らかにされていないのが現状かと思います。

 そんな中、この本は、京都の花街の舞妓さんや芸妓さん、お茶屋、置屋などの詳しい説明や、花街独特の一見さんお断りのシステム、舞妓さんの一生、支払いや分業システム、花街での評価システム、女紅場という教育のシステム、花街の経営学についてとても分かりやすく説明された本で、なかなか興味深い内容となっています。

 特に、芸舞妓さんが「体を売る」といったことは、現代では、全く行われておらず、「水揚げ」といった言葉に代表されるような間違ったイメージが日本だけでなく世界的に流布しているという事実には驚くかもしれません。芸舞妓さんはあくまで「もてなしのプロ」とのことです。

 なお、この本は、筆者の西尾久美子さんが2006年に京都花街の芸舞妓さんたちのキャリア形成と花街の制度についてまとめた博士論文をもとに作られたものとのことです。この筆者も凄い方のようで、二十歳で短大を卒業後、一般企業に就職し、結婚、退職、子育て、再就職、両親の介護と見送りを経て、社会人学生として大学進学し、そして別居、離婚し、それから大学院進学を果たし、そしてこの本のテーマの博士論文を完成させたようです。

 京都の花街について知るにはとてもオススメな本だと思います!!


 以下は、この本で特に興味深かった内容等です。

・東京では芸者さん、京都では芸妓さんと呼ばれることが多いが、職業としての正式名称は芸妓が用いられることが多い。芸妓さんになる前は、東京ではお酌・半玉さん・雛妓さんなど複数の呼び方があり、京都では舞妓さんと呼ばれている。

・現在京都には、上七軒、祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町、島原の計6ヵ所の花街がある。この中で、芸妓さんや舞妓さんが住み、彼女たちが仕事場とするお茶屋のお座敷があり、現在も産業として賑わっているのは、島原以外の5つの花街である。このために、京都花街を総称して「五花街(ごかがい)」と呼ぶことが多い。

・地元京都の人たちは次のようなことを口にする。「伝統と格式の祇園町、よその人を接待するんやったらここやなぁ」「粋な先斗町、自分で遊ぶんやったらここやなぁ」「気楽に楽しめる宮川町、ゆっくりくつろぐならここやなぁ」「しっとり落ち着く上七軒、京都の人をお連れするならここやなぁ」

・大正のはじめ、五花街には1200人ほどの芸妓さんたちがいたという記録があるが、ここ10年ほどは、芸妓さんは200人前後、舞妓さんは約80人でほぼ横ばいである。大阪では南地と北新地をあわせても芸妓さんは20~30名程度しかいない。東京では新橋・赤坂・芳町・神楽坂・浅草・向島の6花街で芸者さんは340人程度である。

・お座敷をお客が利用すると、料理や飲み物の料金のほかに、芸舞妓さんたちにかかる費用として「花代」と呼ばれるものが請求される。この花代は、もともとは線香1本が燃える時間を基準にして、芸舞妓さんたちがお座敷にいる時間をはかったという由来がある。したがって、花代は現在でも時間単位で1本、2本と数えられ、1本あたりの単価×本数でカウントされるしくみとなっている。そして、1本あたりの時間と単価は各花街によって決まっている。芸舞妓さんたちの花代は、置屋をでかけたときから帰宅するまでの移動時間にもかかる。つまり、(移動時間+お座敷での時間)×時間単価=花代という計算方法が原則である。芸妓さんや舞妓さんは、京都物産展や観光のPRなどにでかけることも多いが、新幹線や飛行機に乗って地方や海外へ仕事に行く場合にも、移動時間を勘案した花代がつく。花代以外にも芸舞妓さんたちへのご祝儀も必要だが、ご祝儀はお茶屋のお母さんにまかせておけば、呼んだ芸舞妓さんにあわせて、万事手配してくれるしくみなっている。なおお座敷で芸舞妓さんたちと2時間遊んだとすると、その花代は場合によってかなり変動があるが、筆者の経験からは、だいたい一人25,000円~35,000円程度であると想定される。

・舞妓さんという呼び名は、京都に独特のものである。東京では、芸者さんになる前の若い女性は半玉さんと呼ばれることが多いが、芸者さんと比較して玉代(花代)が半分になったことがその名の由来だという。京都では、お座敷で主に舞を披露する若い女性だから「舞妓さん」という呼び名がつけられたらしい。なお、花代は芸妓さんと同額である。

・舞妓さんたちは、お座敷では芸事として舞を披露することが専門であるが、だからといって、日本舞踊ができればそれだけでいいというわけではない。お座敷芸での「日本舞踊」は「踊り+楽器の演奏+唄+お座敷のしつらえ」=「もてなし」の芸事として成立する。つまり、複数の芸舞妓さんが息のあったコラボレーションをして、季節に応じた演目をきちんと披露しないと、お座敷での芸事とは呼べないのだ。そのためには、舞妓さんたちは、邦楽について基礎知識を身につけ、さらに何か楽器の演奏のお稽古をすることが必要である。また、芸事だけができれば、よい舞妓さんであるわけではない。舞妓さんたちはお座敷での立ち居振る舞いやお客との会話を通して、相手を深く思いやる心をもつことも求められる。もてなしのプロになるためには、舞妓さんたちは、芸事の習得に励むだけでなく、お客をもてなすために必須の気配りについて学び、サービス・プロフェッショナルとして「座持ち」に秀でるために、日々専門性を磨いているのだ。

・芸妓さんや芸者さんは、技能に秀で、お座敷を取り仕切る技能があるとみなされる女性に対する職業的な呼び名である。つまり、お座敷では、芸妓さんは、後輩の舞妓さんたちの様子に目配りすることはもちろんのこと、お客が楽しんでいるか、何を求めているのかをすばやく察知して、提供するサービス内容を決定し、お座敷そのものを組み立てていかなければならない。

・旦那さんは花街の顧客すべてをさすのではなく、芸舞妓さんを経済的に支援し、彼女たちの芸の上達をサポートする男性(結婚とは別の形で男女関係をもつこともある)のことである。芸舞妓さんたちが初めて旦那をもつことを「水揚げ」、水揚げ専門の旦那さんを「水揚げ旦那」と呼ぶが、最近ではこうした「水揚げ旦那」という風習はなくなっている。現代の芸舞妓さんたちは、親の借金といった金銭的なことで縛られて花街にやってきたのではなく、自発的意思で職業として選択しているので、金銭的な負担を軽減するために水揚げをするといったことは、今では見受けらないことである。

・お茶屋のお母さんは、初めて見るお客がいきなり玄関先に立ったとき、丁寧なお断りをする。あるいは顔を見たことがあるような有名人の場合は相手の顔をつぶさないような配慮をして断る場合もある。これが京都花街の敷居の高さの例としてよくあげられる「一見さんお断り」のルールであり、どこにも明文化されてはいないけれど、現在でも京都花街では続いている、生きた「しきたり」である。この「一見さんお断り」が生まれた背景については以下のような3つのポイントをあげることができる。
1 長期掛け払いの取引慣行→債務不履行の防止
2 もてなしというサービス→顧客の情報にもとづくサービスの提供
3 職住一体の女所帯→生活者と顧客の安全性への配慮

・なじみのお客は、財布をもっていなくてもお座敷で遊ぶことができる。つまり、遊びにかかる経費一切をお茶屋が立て替え、後日精算するというしくみである。お茶屋を利用する経費はもちろんのこと、お茶屋経由で二次会に行ったときにはそのお店の支払い、移動のタクシーの支払いなどもすべてお茶屋へ請求書が回り、お茶屋は顧客から支払いをうける前に、その金額すべてを立替払いするのである。しかも、お客への請求は、1ヵ月先から2ヶ月先になることは当たり前で、場合によっては半年先に請求書が届くこともあるという、長期掛け払いの商取引慣行が江戸時代からずっと続いているのだ。

・そもそも新規のお客はお座敷にどうしたらあげれるのだろうか。その答えは、「紹介」である。お茶屋を利用しているなじみ客が自分の知人や友人をお座敷に連れて行く。その知人や友人がお茶屋を使ってみたい、ここで自分も遊んでみたいと思ったときには、この利用客にお茶屋を紹介してもらうのである。お茶屋からすると、紹介をうけたお客のことはあまり知らなくても、紹介してくれたお客のことはよくわかっているから、そのお客の今までの信用を頼りに、新規のお客を受け入れるというわけである。

・京都花街の中で、芸舞妓さんのキャリア・パスは、年齢と経験年数によって明確に決められている。中学卒業時は15歳だから、約1年の仕込みさん期間を経て舞妓さんとしてデビューするころは、15歳後半か16歳。その後、だいたい5年間、20歳ごろまで舞妓さんとして過ごし、20歳過ぎには舞妓さんから芸妓さんになる。ただ、きっちり20歳で舞妓さんを辞めなければならないというわけではなく、たとえば、顔立ちの幼い場合は舞妓さんのほうが似合うから、21歳か22歳ごろまで続けることもある。ただし、舞妓さんは可憐さを、芸妓さんは女性美をうたうという特色から考えて25歳をすぎた大人の舞妓さんは存在しない。そして、数年間の年季期間があけたあとは、自前さん芸妓さん、すなわち独立自営者となって置屋からでて自活する。この自前さん芸妓さんになった以降は、花街で芸妓さんとして仕事を続けるか辞めるのかの選択はいつでもできる。なお、芸妓さんには定年はないから、80歳をすぎても現役としてバリバリがんばっている方も見受けられる。

・毎年正月明け、京都の各花街では、芸舞妓さんたちが在校している学校の始業式が行われる。この始業式では、新年にふさわしい舞や邦楽などが披露されるが、それだけが式典の目的ではない。各花街ともに始業式では、前年の売上成績のよいお茶屋、芸妓さん、舞妓さんを表彰するのである。始業式の成績発表という成果の公表から、若さやかわいさなどといった表面的なところだけで、彼女たちが評価されているわけではないことがわかる。長期にわたってランクを維持するためには、技能が十分に備わっていることが大切なのである。だからこそ、花代というシンプルでわかりやすい評価軸だけで、現役の芸舞妓さんたち全員がランキングされるのだろう。


<目次>
はじめに
第1章 京都花街とは-業界の特徴と規模
 そもそものはじまり
 五花街
 五花街の特徴
 芸舞妓さんの人数
 花街の経済規模
 よそさんの花街の様子
 京都花街の特色とは
第2章 芸舞妓さんとお茶屋と置屋-高度技能専門職の女性たち
 舞妓さん
 芸妓さん
 お茶屋
 置屋
 擬似家族関係
 コラム◎旦那さん
第3章 一見さんお断り-350年続く会員制ビジネス
 一見さんお断り
 お茶屋遊びは信頼の証
 宿坊
 よそのお座敷
 どうしたらお座敷にあがれるのか
 お座敷のルール
 新人のお客
 大人磨きの社交の場
第4章 舞妓さんの一生-徹底したOJTによるキャリア形成
 芸舞妓さんのキャリア・パス
 芸舞妓さんの一生、キャリアの流れ
 キャリアの節目
 見て・聞いて・教えてもらって、また見て・聞いて
 舞妓さんのアイデンティティ
 誇りと慣れ
 お客とご飯食べ
 わかってくれる存在
 コラム◎「舞妓はん」に変身!
第5章 お財布はいりまへん-分業制度と取引システム
 長期の掛け払い
 お客とお茶屋の関係
 究極のくつろぎと合理性
 短期の支払い
 お茶屋の目利き
 芸舞妓さんの営業
 よそさんの妓へのしつけ
 花街共同体と分業制度
 自分の技量の見極め
第6章 花街の評価システム-成果主義と360度評価
 新年の始業式
 成績発表-成果主義にもとづく売上ランキングの公表
 成績のつけ方
 評価情報の分析と共有
 座持ち
 ある日のお座敷
 状況判断能力
 座持ちの育成
 舞妓さんらしさ
 「ええべべ」を着せる
 「らしさ」の維持
 おきばりやす
 コラム◎ミッキーとキティと舞妓はん
第7章 女紅場-働きながら学ぶしくみ
 女紅場
 開講科目
 ライバルを、先輩を、後輩を見る
 花街の学校のメリット
 学びのサイクル
 踊りの会
 プロとして磨かれる
 役割の自覚
 かしこい妓とは
 コラム◎興行の事業システム-都をどり・宝塚歌劇・吉本興業
第8章 京都花街の経営学-超長期競争優位性の事業システム
 もてなしの需要と供給
 新規需要への柔軟な対応
 地域限定の課金システム
 設備投資重視
 お茶屋は情報重視のソフト型産業
 事業部門の戦略的選択
 お茶屋と置屋の兼業化
 一人置屋
 育成制度と取引
 意思決定の秘密
 意思決定の主体
 ダイナミズム
 変化への対応
 制度の利用
 制度的叡知
おわりに
参考文献


面白かった本まとめ(2007年)
面白かった本まとめ(2006年)
面白かった本まとめ(~2006年)

<今日の独り言>
各オン・オフ付きのテーブルタップ(電源コンセント)をようやく買いましたが、いちいちコンセントを外さなくて良いので便利ですね。早く買えば良かったです・・・^_^;)

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