「テストステロン値が下がると免疫力が低下する傾向があります。がんのリスクが高まるのも、免疫力が低下してがんの発生に対する監視機構が弱くなるためでしょう。テストステロンは中枢神経においては記憶を司る海馬で働いているので、下がると認知機能の低下にも注意が必要です」
東京大学の秋下雅弘教授らの研究から、テストステロンに認知機能を改善する作用があることも確認されています。テストステロン値が低い平均81歳の認知症の男性24人を2グループに分け、一方にだけ1日40mgのテストステロンを投与しました。3カ月後と6カ月後に認知機能を調べると、テストステロンを与えたグループでは認知機能の回復が見られました※4。
同じように、テストステロン値の低下を食い止められればメタボリックシンドロームやがんのリスクも下がるのではないかと考えられています。
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/selfcare/testosterone-02/
次に食事ですが、たんぱく質をしっかりとることが大切です。動物実験から、ニンニクと一緒にたんぱく質をとるとテストステロン値を上げる効果があることが確認されています※6。また、玉ねぎに含まれるツーンとする臭いのもとであるイオウ化合物もテストステロンを上げる作用があります。
短期間で体脂肪が落ちる「糖質制限」はダイエット法として人気がありますが、堀江先生は「極端な糖質制限をすると筋肉が減り、テストステロン値も下がってしまいます」と注意を促します。テストステロンを作るには、ある程度の糖質が不可欠だからです。
このほか今の日本人に不足し、テストステロンを作るために重要なビタミンやミネラルとして、堀江先生はビタミンDと亜鉛を挙げます。
「ビタミンDは魚、亜鉛は貝類に多く含まれています。最近の日本人はビタミンDと亜鉛が欠乏している人が増えていますが、それは魚介類を食べなくなったせいかもしれません。また、加工食品に多く含まれる傾向がある無機リンは亜鉛の吸収を妨げる作用があるので注意が必要です」(堀江先生)
https://www.youtube.com/watch?v=ME0kpi8Qovg
「糖尿病などの病気が原因で起こることもありますが、テストステロンが減少する原因で最も多いのはストレスです」(堀江先生)
男性のテストステロンは主に精巣(睾丸)で作られます。しかし、それは精巣が自動的に作っているわけではなく、脳からの指令によるものです。脳の中の下垂体がLH(黄体形成ホルモン)を分泌し、それが精巣にテストステロンを作らせているのです。
一方、強いストレスを受けると、脳の視床下部からCRF(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)というホルモンが分泌され、それが下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させます。すると、ストレスに対抗するためのホルモンであるコルチゾールが副腎で作られ、血糖値や血圧が上がります。