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ハイブリッド戦争

2022-04-04 | ニューストピック

ハイブリッド戦争というから、いやなネーミングだと思っていたら、ニュース番組でよく出ている解説、コメンテーターのその著作のタイトルであった。検索して、新書本でもう一つ、これも著者名にはテレビに出ずっぱりのように軍事解説をす方であった。
地上戦に、海事を含めてのこと、サイバー攻撃、情報戦の戦い方にある。もとには、>ハイブリッド戦争の概念を整理した米海兵隊のフランク・ホフマンによる、という。

>その本来意味するところは、戦場で起きている事態を敵・味方・中立のオーディエンスに対して有利な形で認識させ、戦闘での勝敗とは別の領域で最終的に戦争に勝利しようとする思想です(「Conflict in the 21st Century:THE RISE OF HYBRID WARS」)。
https://www.mag2.com/p/news/530926/4
小泉悠氏が解説、徹底抗戦を覚悟するウクライナの戦略
国際2022.03.04



https://www.jfir.or.jp/2021/05/31/4245/
第336回国際政経懇話会
「ハイブリッド戦争:ロシア外交の最前線を読み解く」
令和3年5月31日(月)
公益財団法人 日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会

第336回国際政経懇話会は、廣瀬陽子 JFIR上席研究員/慶應義塾大学教授を講師に迎え、「ハイブリッド戦争:ロシア外交の最前線を読み解く」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、オフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

1.日 時:2021年5月31日(月)14:00-15:30
2.開催方法:オンライン形式(Zoomウェビナー)
3.テーマ:「ハイブリッド戦争:ロシア外交の最前線を読み解く」
4.講 師:廣瀬 陽子 JFIR上席研究員/慶應義塾大学教授
5.出席者:57名
6.講話概要

(1)ハイブリッド戦争とは何か

ハイブリッド戦争は、2014年のクリミア併合・ウクライナ東部での危機勃発を理解する「鍵」であり、より広い旧ソ連地域研究においてもロシアの軍事作戦・外交戦略として極めて重要である。ヨーロッパ諸国も強い脅威を感じており、日本も無縁ではない。日本では2018年に防衛計画大綱と中期防衛力整備計画が改訂され、宇宙やサイバー部門が強化された。その背景には①北朝鮮の核ミサイル能力の増強と、②ロシアのクリミア併合以降、戦い方が変わった、すなわちハイブリッド戦争の脅威が高まったということがある。実際、昨年には東京五輪を狙ったサイバー攻撃が行われていたとの発表もあった。ハイブリッド戦争の理解なしに日本の安全保障はあり得ないだろう。

ハイブリッド戦争とは、「政治的目的達成のために、軍事的脅迫とそれ以外の様々な手段(政治、経済、外交、サイバー攻撃、プロパガンダを含む情報・心理戦などのツールのほか、テロや犯罪行為も)が組み合わされた、非正規戦と正規戦を組み合わせた戦争の手法」であるといえる。空間・主体・手段・規範など、あらゆるものの境界が曖昧な中での戦闘であり、戦う主体もその手法も多様な、複合型の戦争である。

クリミア併合で注目されたとはいえ、新しい事象ではなく、古代から使用されてきた。現在のロシアでも1990年代から再注目され、地政学者ドゥーギンなどが推進してきた。ロシアには火のないところを炎上させる能力はないが、小さな煙を炎上させることに長けており、この際ハイブリッド戦争が有効になる。ロシアではハイブリッド戦争の語はほぼ用いられず、新世代戦争、現代型戦争といった言葉が使われる。ロシアではそれは戦略というより作戦であり、クリミア併合を機に、軍事的コンセプトから外交政策の理論に準ずるものへと変化した。またロシア視点では、ハイブリッド戦争は米で生まれた概念で、ロシアはその被害者に他ならない。他方で、ロシアにおけるハイブリッド戦争の議論は、欧米のそれを再概念化したにすぎないともいえる。ロシア軍参謀総長ゲラシモフをはじめ複数のアクターがハイブリッド戦争の重要性を指摘してきたが、その目的に関しては、ロシア軍人・軍事理論家メスネル(1891-1974)の議論が再注目された。この理論では、現代戦では領土の獲得ではなく、敵対国のモラルをくじき、連帯を打ち砕くことが最重要視されている。このテーゼに基づけば、2018年末以降の北方領土をめぐるロシアの対日姿勢は、対米ハイブリッド戦争の一環と捉えることも可能だろう。またハイブリッド戦争を「探り(probing)」としてみる議論がある。中露イランを台頭国と位置づけ、これらが探りにより相手の外縁部で低強度のテストを仕掛け、その反応を探っている、とするものだ。低リスクで大きなリターンを得られる場合もあり、ウクライナ危機ではこれに成功したといえる。プーチンが2014年(草案はウクライナ危機の前となる2013年7月)にロシアの新軍事ドクトリンに署名したことで、こうしたハイブリッド的な作戦は国家戦略に位置づけられた。ハイブリッド戦争のメリットは、①低コストで、②効果が大きく、③介入に関して言い逃れしやすい、という3要素にまとめられる。

ウクライナ危機はそれが顕在化した事例である。このときロシアは標識のない特殊部隊による要所占拠や、国交付近での軍事力集積により圧力をかけつつ、フェイクニュースやサイバー攻撃、経済的脅迫、時に融和的外交などを組み合わせ、住民投票や一方的独立、領土併合や地域の不安定化を実現した。それよりも以前から政治的工作を行っていたことも知られている。

ハイブリッド戦争の担い手としては、インテリジェンス機関のロシア軍参謀本部情報総局(GRU)やロシア連邦保安局(FSB)、ロシア連邦対外情報局(SVR)、また民間軍事会社(PMC)のワグネルなどが挙げられる。コサックや北コーカサス出身兵などが徴用される例もある。他にもトロール部隊やサイバーアタッカーが存在する。また政治技術者もソ連時代から暗躍している。トロール攻撃の拠点IRA(インターネット・リサーチ・エージェンシー)やワグネルの資金源となってきたのは、プーチンのシェフと呼ばれるエフゲニー・プリゴジンと彼のコンコルド社である(プリゴジン や彼の会社は米による多くの制裁対象に指定されている)。そのワグネルは戦闘行為のほか、展開先での資源利権と引き換えに安全保護などの任務にもついている。

(2)サイバー攻撃、情報戦、宣伝戦

ハイブリッド戦争の重要な側面であるサイバー攻撃は、近年では戦争と切り離せないものとなり、AI技術も加わって非常に高度なものになった。ロシアのケースでは、横の協力がないことが特徴だ。犯罪者や国家機関、民間会社、単なる愛国者など多様な主体が別個にこれを担う。主要な政府系ハッカー集団には軍属の15のサイバー部隊以外にも、GRU系のAPT28(通称ファンシー・ベアなど)、FSBおよびSVR指揮下のAPT29(コージー・ベアなど)などがある。APT28は取得した情報を暴露することで相手に打撃を与える傾向がある一方、APT29は取得した情報を密かに利用する傾向がある。

他方、トロール部隊などがSNSやニュースメディアなどを利用し、フェイクニュースや宣伝を拡散し、誘導政策を展開する。トロール攻撃では、トロール部隊がいくつものアカウントを用いて多くの人が書き込んでいるような体裁を整えると、次第に一般アカウントも情報を拡散しはじめ、収拾がつかなくなる。2016年の米大統領選挙では、反クリントン・キャンペーンに成功した。アフリカやベネズエラ等の協力も確認されている。この問題は、ソフトパワーの悪質版「シャープパワー」としても理解可能である。その他欧米諸国での政治介入、選挙介入の事例が多くある。また、コロナ禍においても多くのサイバー攻撃や情報戦が展開された。昨年12月には米国史上最悪レベルのサイバー攻撃も発覚した。

ロシアの大規模なサイバー攻撃の性格には、①国家支援型であること、②高いスキルを有すること、③防衛力が弱いこと、④攻撃の内容が目的や相手により変わること、⑤軍事面のみならず外交的手段として位置づけられているといった要素が挙げられる。ただし、最近は犯罪組織による金銭目的のサイバー攻撃(ランサム攻撃)も大規模化が目立つようになっている。

当然、これに対しては様々な対応が必要である。特に2015年にはロシアによるサイバー攻撃が大きく変容し、昨年発覚した米への攻撃は長期にわたり気付かれてすらいなかったなど、対応側の変革も求められる。攻撃対象も、政府機関のみならず社会全体に広がり、2010年以降は概して攻撃範囲と深刻度が大きく拡大した。動向分析に加え、従来的な専守防衛ではなく、ホワイトハッカー等による対策など、臨機応変な対応が必要だろう。

(3)ロシア外交のバックボーン:地政学

こうしたロシア戦略の背後には、地政学がある。地政学は広大なロシアにとって歴史的に極めて重要で、冷戦期には影を潜めたものの、2000年のプーチンの大統領就任により再びロシア外交の支柱となった。ロシア地政学をリードしてきたドゥーギンはプーチンのブレーンでもある地政学者・政治家で、ドイツ地政学者ハウスホーファーの影響を受けている。ドゥーギンは主に、ユーラシアにおける米や西洋主義の影響力を失わせ、ユーラシア帝国の構築必要性を主張した。これを達成するにはロシアの特務機関による破壊、不安定化、誤報・偽情報等、さらに天然資源の有効活用などの点が大きな役割を果たすと主張した。

プーチンはこうした地政学に影響を受けたグランドストラテジーを構築している。その要点は、ロシアの勢力圏の維持である。勢力圏とは第一義的には旧ソ連諸国であり、第二義的には旧共産圏と新領域(北極圏など)である。勢力圏の維持は、国際政治におけるロシアの基本戦略である「多極的世界」の実現のためにも重要と考えられている。

ロシアは勢力圏維持のため、①政治、②経済、③エネルギー、④未承認国家という4つのカードを利用し、「近い外国」に接近してきた。ロシアとしてはまず、最低でも旧ソ連諸国のNATO加盟は避けたいため、バルト三国や東欧がEU・NATOの拡大に飲み込まれていくことが許しがたかった。また他の重点領域としては、シリアや、反米の南米諸国、アフリカ、アジア・太平洋などがある。これらに対して経済援助、軍事援助、武器供与・販売、軍事演習等を通じてプレゼンスを高めてきた。地政学的に重要なシリアには旧ソ連圏以外で唯一のロシア軍基地があるため重要視されている。また近年の南米では反米国家を取り込むための資金・軍事援助により関係が緊密化している(キューバ、ベネズエラ等)。さらに最近は北極圏も注目されている。温暖化による北極海航路の可能性が注目され、資源アクセスが容易化したことで、天然資源の利権争奪戦が起こっており、これに伴うインフラ整備や軍備拡大がみられる。また北極海航路の終点には北方領土があり、その軍事基地化や最新装備の展開が進行している。加えて近年注目されているアフリカでは「安全保障の輸出」が活発化している。PMCを利用して現地の反乱・テロ対策を担うことで、各地の権威主義体制を懐柔し、勢力圏化が進行している。

(4)まとめ

コロナ禍でのロシアのマスク外交やワクチン外交も、欧米目線では、情報収集、制裁解除・緩和、EUやNATOの分断を狙ったハイブリッド戦争の一環として見られている。このように、ハイブリッド戦争は多岐にわたり、全容の把握は難しい。また、その成否の判断も難しく、基準によっては成功とも失敗ともみなせる場合がある。とはいえ、NATOにウクライナを入れさせない点については間違いなく成功しており、2016年の米大統領選において世界を席巻する印象を残したことも事実である。

こうしたハイブリッド戦争にどう対抗すべきか。まず重要なのは、一国レベルでの対応は困難かつ不十分という点である。例えばエストニアでは、サイバー教育徹底を通じた「サイバー衛生」により、国民全体がサイバー攻撃に利する習慣を改めようとしている。またジム・スキアットの提示する解決策では、①敵を知る、②レッド・ライン(超えてはいけない一線)を設ける、③敵が負担すべきコストを引き上げる、④防衛を強化する、⑤攻撃、⑥結果を警告する、⑦サイバー領域と宇宙のための新たな条約の締結、⑧同盟を維持して強化する、⑨適切なリーダーシップを設ける、といった点が挙げられている。これらはすべて重要だろう。特に日本はサイバー攻撃に脆弱であり、その検知能力も12か国中最低で、リテラシー能力も低い。優秀な人材の確保と教育拡充、また専守防衛ではなくホワイトハッカー等を通じて「攻撃しながら防衛する」姿勢を強化し、国民全体の意識強化が重要と思われる。日米同盟をもとに米に頼り切りになるのではなく、日本側からも多面的かつ積極的に関与していく必要があるだろう。

(文責、在事務局)

ハイブリッド戦争(ハイブリッドせんそう、英語: hybrid warfare)とは、軍事戦略の一つ。 正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせていることが特徴である。 ハイブリッド戦略とも呼ばれる。
ハイブリッド戦争 - Wikipediahttps://ja.wikipedia.org › wiki › ハイブリッド戦争

ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略 (講談社現代新書) 新書 – 2021/2/17
廣瀬 陽子移設するか、
>戦争は戦場だけではない!
いかに低コストで最大限のダメージを敵国に与えるか。執拗なサイバー攻撃、SNSを利用したプロパガンダ、暗躍する民間軍事会社――世界を脅かすプーチン流「現代戦」と日本の安全保障のリスクとは?
ウクライナ、シリアでの民間軍事会社の暗躍、米大統領選でのプロパガンダ工作、ジョージアとの情報戦、アフリカ発のロシア製フェイクニュース、そして東京五輪へのサイバー攻撃――、正規と非正規を組み合わせた21世紀型戦争の実態と、ロシアの外交・軍事戦略の全貌に迫る決定版!


ハイブリッド戦争 (hybrid war/warfare)」という言葉が注目 ...https://www2.jiia.or.jp › kokusaimondai_archive › n...PDF
また、ロシアによる「ハイブリ. ッド戦争」はウクライナ南東部ドンバス地方への介入では失敗に終わっており、クリミアは. ごく稀な成功例であったとする見方(2)も存在 ...

現代ロシアの軍事戦略 (ちくま新書) 新書 – 2021/5/8
小泉 悠
>冷戦後、軍事的にも経済的にも超大国の座から滑り落ちたロシアは、なぜ世界的な大国であり続けられるのか。NATO、旧ソ連諸国、中国、米国を向こうに回し、宇宙、ドローン、サイバー攻撃などの最新の戦略を駆使するロシア。劣勢下の旧超大国は、戦争と平和の隙間を衝くハイブリッドな戦争観を磨き上げて返り咲いた。メディアでも活躍する気鋭の研究者が、ウクライナ、中東での紛争から極東での軍事演習まで、ロシアの「新しい戦争」を読み解き、未来の世界情勢を占う。

「軍事バランスでは劣勢にあるはずのロシアがこのような振る舞いに及び、実際に成果を収めることができたのはなぜなのか。そこには古典的な軍事力の指標では測りきれない要素が働いているのではないか。これが本書における中心的な問いであり、以下ではこれを様々な角度から検証していくことにしたい。」(本文より)
現代ロシアの軍事戦略【目次】
はじめに ―― 不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
「ポスト冷戦」時代の終わり ―― 揺らぐ国際秩序/軍事力の「効用」/非軍事的闘争論/テクノロジーは戦争を変えるか/本書を理解するための基礎知識
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
1 NATO拡大 ―― 東欧でのオセロ・ゲーム
リガ空港の「バックファイア」/倉敷に人民解放軍の基地ができたら/後退する「戦略縦深」/小さな軍事大国/「アフガニスタンのことを考えて眠る」/「勢力圏」と「大国」
2 ウクライナで起きたこと
瞬く間に失われたクリミアとドンバス/人間の「認識」をめぐる戦い/ドローン戦争/米兵隊も舌を巻くロシアの電磁波作戦能力/ウクライナのインフラを麻痺させたサイバー攻撃
3 「ハイブリッド戦争」をめぐって
非クラウゼヴィッツ戦争?/「360度同盟」へ/「ハイブリッド戦争」論の起源/戦争の「特徴」と「性質」/古くて新しいハイブリッド戦争/ハイブリッド戦争に関する3つの論点
第2章 現代ロシアの軍事思想 ―― 「ハイブリッド戦争」論を再検討する
1 非軍事的闘争論の系譜
ロシア軍参謀総長が語る21世紀の戦争/レーニンとクラウゼヴィッツの戦争理解/スリプチェンコの「非接触戦争」論/情報の力 ―― メッスネルの「非線形戦争」論/パナーリンの「情報地政学」理論/ロシアの疑心暗鬼/軍隊は役立たずに?
2 「永続戦争」の下にあるロシア
「カラー革命」への脅威認識/戦場としての言論空間/NGOを「外国の手先」と認定/若者の心を摑め/プーチンの市民社会論/ロシアはなぜ米国大統領選に介入したか
3 「カラー革命」に備えて ―― ロシア国内を睨む軍事力
プーチンの「親衛隊」/国家親衛軍をめぐる権力関係/ゲラシモフ演説に見る脅威認識/コロナ危機とプーチン政権
4それでも戦争の中心に留まる軍事力
思想と実践の間/ゲラシモフ演説を読み直す/ドクトリンではなくハッパ/予測の困難性を超えて
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
1 ウクライナ紛争に見る軍事力行使の実際
クリミア半島での電撃戦/二転三転するドンバス紛争/軍隊は強い/親露派武装勢力の「戦う理由」/「ハイブリッド戦争」と「ハイブリッドな戦争」
2 中東での「限定行動戦略」
シリア紛争を一変させたロシアの介入/愛国者公園にて/「第6世代戦争」の入り口/「精密攻撃」と残虐性の価値/介入戦争を可能にした限定行動戦略
3 特殊作戦部隊と民間軍事会社
シリアに送り込まれたロシアの秘密部隊/平時と有事の間で戦う特殊作戦部隊/砂漠に咲くひまわり/民間軍事会社「ワグネル」の誕生/ワルキューレの騎行 ―― ドンバス紛争とワグネル/ワグネルの「事業モデル」/リビアでの敗北/「ワグネルって何ですか?」
4 「状況」を作り出すための軍事力
「勝たないように戦う」/「解凍」されたナゴルノ・カラバフ紛争/ドローンは「ゲーム・チェンジャー」か?/「意志のせめぎ合い」としての戦争/アゼルバイジャンの「読み勝ち」/エスカレーションを抑止する/暴力の行使という溝
第4章 ロシアが備える未来の戦争
1 大演習を見る視角
秋は演習の季節/そもそも演習とは/演習の読み解き方
2 対テロ戦争、大規模戦争、「カラー革命」
変貌するロシア軍/対テロ戦争の時代 ―― 「カフカス」と「ツェントル」/「第6世代戦争」に備える/兵士のブーツ/ウィキリークスが暴いたロシアの核戦争訓練/対「カラー革命」演習?
3 「新しい戦争」と総力戦
ロシアから見た「アラブの春」/総力戦の復活/巻き戻されるセルジュコフ改革とウクライナ危機の影/「新しい戦争」
4 国家に支援された非国家勢力との戦い
ミサイルを駆使する「テロリスト」?/「北方連邦」vs「西方連合」/「偶然の一致」 ――大演習に続く核戦争演習/史上最大規模の「マニョーブル」/4つの戦争モデル
5 演習をめぐるポリティクス
演習規模をめぐる狂騒曲/極東演習と日本/及び腰の日本政府/中露合同演習の虚実
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
1 劣勢下での戦い方
大陸国家ロシアの宿命/「損害限定戦略」/疑惑のミサイル9M729/「鏡面的措置」で対抗するロシア
2 戦場化する宇宙
凋落する宇宙大国/「宇宙優勢」を目指して/人工衛星に対する「ソフトな」攻撃/ロシアの宇宙状況監視能力
3 ロシアの核戦略 ―― 「エスカレーション抑止」をめぐって
破滅を避けながら核戦争を戦う/「エスカレーション抑止」論の浮上/公開された機密文書の中身/通常兵器によるエスカレーション抑止/極超音速兵器とレーザー兵器
おわりに ―― 2020年代を見通す
ロシア流の戦争方法/プーチン・システムの今後/「永続戦争」はどこまで続くか?/「西側」としての日本の対露戦略

あとがき ―― オタクと研究者の間で
参考文献
小泉悠(こいずみ・ゆう)

1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『軍事大国ロシア── 新たな世界戦略と行動原理』(作品社、2016年)、『プーチンの国家戦略──岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版、2016年)、『「帝国」ロシアの地政学──「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)等。


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