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文化の語義

2013-10-06 | 日本語百科
文化の語義は既によく見るひとつに、文徳により教化すると見える。

16世紀、1534年、清原宣賢式目抄の端書に、

>天下は一人の天下に非ず、天下の天下也。有道の者保之。故文化を先にし、刑罰を後にして、人民心を一つにして、上下永可保ために此書を作

とあり、文化と刑罰を対比する。

これは漢語としての文化を、文治教化、刑罰や威力を用いないで導き教えるという意味で説明する。

この用例には、中国の儒家書、説苑ぜいえん 二〇巻、前漢の劉向りゅうきょう 撰、先秦および漢代の書物から、天子を戒めるに足る遺聞逸事を採録したもので、この古代の説話集を挙げているので、これを参照する。

*説苑‐指武「凡武之興、為不服也、文化不改、然後加誅」

以上は、日本国語大辞典の意味項目【一】(1)および日本大百科全書ニッポニカの説苑の項による。

辞書の項目では、この用例に、Enlightenment の翻訳語を、19世紀、1884年、改訂増補哲学字彙より引いている。そこには、 大覚、文化、と見える。

哲学字彙の翻訳語は、哲学における啓蒙運動を指すとすれば、18 世紀ヨーロッパ、フランスでの合理主義的運動である。

日本語WordNet(英和)
enlightenment

>伝統と確立した主義に代えて理論と個人主義の使用を奨励した1650年から1800年までのヨーロッパの活動
(a movement in Europe from about 1650 until 1800 that advocated the use of reason and individualism instead of tradition and established doctrine)

項目によれば、日本国語大辞典の意味項目【一】(2)文明開化を意義に上げる。次いで、語誌には解説がある

【語誌】(1)漢籍に見られる語であるが、明治時代に「文明」とともにcivilization の訳語として使用され、当初は「文明」とほぼ同じ意味であった。「文明」が「文明開化」という成語の流行によって明治時代初期から一般的に使用されていたのに対して、「文化」が定着したのは遅れて明治二〇年前後である。
(2)明治三〇年代後半になると、ドイツ哲学が日本社会に浸透し始め、それに伴い「文化」はドイツ語のKultur (英語のculture )の訳語へと転じた。そのことによって、次第に「文化」と「文明」の違いが強調されるようになった。大正時代になると、「文化」が多用されるようになり、「文明」の意味をも包括するようになってきた。

この説明によれば、文化は文明とともに、civilization の訳語であるとしている。その後、明治20年代の、文化の語の定着を言う。
文明開化の語が影響したとする、その用例には、文明開化の項に次のようである。

*西洋事情〔1866~70〕〈福沢諭吉〉外・一「人々徳を修め法を畏て世の文明開化を助けざる可んや」

*新聞雑誌‐二号・明治四年〔1871〕五月「じゃんぎり頭をたたいてみれば文明開化(カイカ)の音がすると」

そして明治30年代には、ドイツ語のKultur、英語のculture を訳したものとなったとある。
翻訳語の背景に哲学の学問の移入があり、その概念の変遷がうかがえる。

文化は漢語であった。明治期になって、英語の翻訳として、当初は文明とともに、文化、文明が訳され、それを文化として文明をも包括するようになったとある。また、文明開化による語への社会的影響があって、文化そのものが、現代へと連なる。



日本国語大辞典
ぶん‐か[:クヮ] 【文化】
【一】〔名〕
(1)権力や刑罰を用いないで導き教えること。文徳により教化すること。
*清原宣賢式目抄〔1534〕端書「天下は一人の天下に非ず、天下の天下也。有道の者保〓之。故文化を先にし、刑罰を後にして、人民心を一つにして、上下永可保ために此書を作」
*改訂増補哲学字彙〔1884〕「Enlightenment 大覚、文化」
*説苑‐指武「凡武之興、為不服也、文化不改、然後加誅」
(2)世の中が開け進んで、生活内容が高まること。文明開化。
*滑稽本・古朽木〔1780〕一「目出たい御代故、文化も盛にひらけて」
*西国立志編〔1870~71〕〈中村正直訳〉一・七「次第に工夫を積めるもの、合湊して盛大の文化を開けるなり」
*開化新題歌集〔1878〕〈大久保忠保編〉「文化日新 時は今日いつる国の名もしるくほからほからと明るしののめ」
*黒船前後〔1935〕〈服部之総〉生殖器感動論「トックヴヰルによるとアメリカ土人の運命は、戦争して欧人をみなごろしにするか、それとも自ら文化して欧人と平行するか、二つに一つだといふ」
(3)自然に対して、学問・芸術・道徳・宗教など、人間の精神の働きによってつくり出され、人間生活を高めてゆく上の新しい価値を生み出してゆくもの。
*百学連環〔1870~71頃〕〈西周〉一「其国々の経界及び政体を論し、其他風俗、人種、教法、文化、人口、〈略〉財政等の如きを悉く論し」
*かのやうに〔1912〕〈森鴎外〉「それだからドイツの政治は、旧教の南ドイツを逆はないやうに抑へてゐて、北ドイツの新教の精神で、文化(ブンクヮ)の進歩を謀って行かなくてはならない」
*日本楽器の名称〔1928〕〈寺田寅彦〉「これは楽器に限らずあらゆる人間の文化の産物について共通な事であって」
(4)(他の語の上に付いて)便利である、ハイカラ・モダンである、新式であるの意を表わす語。「文化竈」「文化住宅」「文化村」など。



研究社 新英和中辞典
enlightenment
アクセント・音節en・líght・en・ment 発音記号/‐mənt/
【名詞】
1【不可算名詞】
a教化(すること), 啓発.
b【仏教】 悟り.
2[the E[N16-A12A]] 【哲学】 (18 世紀のヨーロッパ,特にフランスでの合理主義的)啓蒙運動.
[ENLIGHTEN+‐MENT]


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