現代日本語百科   けふも  お元気ですか

gooブログはじめました!日本語百科です。
現代日本語百科 ⓒ2013gooksky

初心不可忘

2017-09-01 | 思い遥かに

初心の初を初々しさと読んだ。
初々しさは芸における粗削りである。

その動きは不器用そのまま、見るからに、初心であるが、是非にも見る芸のはじまりから、これをおいてのほかはない動きである。
その初心とは果敢でさえある。

その果断心がよい。能の舞を見ていて、いつも思っていた。舞がうまいのはねむっているから、ねむらせることのない動きが感じられれば素晴らしい。

いわば、鬼気せまる、妖気あふれる、初心のものである。

さてそれが、老後の初心にもとめられるのは老後の風体にあるというのだから、年寄ること、それなりに年寄りの動きを持つということである。
わがあこがれの、つえをついての自然なふるまいである動きとは、まさに老後である。

それも50歳余りであれば、これは平均寿命で考えるか、どうするか。
気づけば、つまずくし、階段に足が上がらない。

老後の初心である。これを知れば、それまでの動きなどはどこへやら、秘めたる思いに動きをすることになるから、老後の初心はおなじく、壊れんばかりの迫力満点になる、と、思うのだけれども、初心のままに動けばよいのである。

命の燃え続ける限りは、老後の初心を知るとは、果てのないことである。


初心不可忘   花鏡  世阿弥

是非初心不可忘。
時々初心不可忘。
老後初心不可忘。

是非の初心忘るべからず、時々の初心忘るべからず
老後の初心忘るべからず、命に終わりあり、
能には果てあるべからず。


時々の初心を忘るべからずとは、これは、初心より年盛りの頃、老後に至るまで、その時分時分の芸曲の、似合ひたる風体を嗜みしは、時々の初心なり。されば、その時々の風儀を為捨て為捨て忘るれば、今の当体の風儀をならでは見に持たず。過ぎし方の一体一体を、今、当芸に、皆一能曲に持てば、十体にわたりで能数尽きず。その時々にありし風体は、時々の初心なり。それを当芸に一度に持つは、時々の初心を忘れぬにてはなしや。さてこそ、わたりたる為手にてはあるべけれ。しかれば時々の初心を忘るべからず。

老後の初心を忘るべからずとは、命には終はりあり、能には果てあるべからず。その時分時分の一体一体を習ひわたりて、また老後の風体に似合ふことを習ふは、老後の初心なり。老後、初心なれば、前能を後心とす。五十有余よりは、「せぬならでは手立てなし」といへり。せぬならでは手立てなきほどの大事を老後にせんこと、初心にてはなしや。

さるほどに、一期初心を忘れずして過ぐれば、上がる位を入舞にして、つひに能下がらず。しかれば、能の奥を見せずして、生涯を暮らすを、当流の奥義、子孫庭訓の秘伝とす。ことの心底を伝ふるを、初心重代相伝の芸案とす。初心を忘るれば、初心、子孫に伝はるべからず。初心を忘れずして、初心を重代すべし。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。