失笑についての解説はとらえやすくなった。
笑ってはいけないところで、笑いをこらえていて、つい笑ってしまうことであるとする。
ニコニコ大百科の説明である。
失笑の失字の理解ができていないところを、解説ではわかりやすく言う。
失笑を買う この慣用句が場面においてわかりにくくなって、失笑を買う方の行為だけが強調されるようなことになってしまっているようである。
その行為に向けた笑いの捉え方の違いで、笑う側が笑いをこらえるだけになってしまったかのようである。
http://prmagazine.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2013_03/series_10/series_10.html
連載 「言葉のQ&A」
「失笑する」人は笑っているか 国語課
>では,「笑いも出ないくらいあきれる」と回答した人の割合が高くなっているのはなぜでしょうか。まず,先にも触れたように,「失」を「失う」と捉えて,「笑いを失う」様子だと受け取ってしまうということが考えられるでしょう。加えて,この言葉が「失笑を買う」という形でよく用いられる点も関係がありそうです。「失笑を買う」は「愚かな言行をして笑われる」という意味ですから,「あきれて笑われる」様子とも言えます。ほかにも「失笑が広がる」「失笑が漏れる」など,失笑は「あきれる」様子と結びついて使われることが多く,そのために,「笑いも出ないくらいあきれる」という意味の方を選んだ人が多くなっているのかもしれません。
同様の理由で,「失笑」を「愚かな言行に対する笑い」と受け取って,「冷笑」や「軽蔑の笑い」というような意味で使用する傾向もあるようです。
http://dic.nicovideo.jp/a/%E5%A4%B1%E7%AC%91
>
失笑とは、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の企画である、「笑ってはいけない」シリーズにおいてアウトとなる行為のことである。
概要
自身の意思に反し、思わず噴き出して笑ってしまう、堪えきれず笑ってしまうということである。
「失」という漢字には「不随意的に、意思に反して」というような、"意図せずに"という意味がある。同様な用法としては、「失禁」、「過失」などが挙げられる。
しばしば「失笑を買う」という表現がなされるが、これは何らかの行為が期待されるべき結果とは異なる結果が生じたことによって笑われてしまい、恥ずかしい思いをするということを意味する。ここからか派生してか、現在では「失笑」単体でも、嘲笑や冷笑といった意味合いが強くなっている。誤用とされることも多いが、笑ってしまったのには違いないのだから、これを誤用と言い切ってしまうのはいささか大人気ない。
一方「失」という漢字を「うしなう、なくす」と解釈し、「(ウケを狙っても)笑いがとれない」、「座が冷める、呆れて水を打ったように静かになる」など、"笑うという行為が発生しない状況"を指すことも多い。2011年の文化庁の「国語に関する世論調査」ではおよそ6割の人がこちらの意味を支持しているが、誤用とされることも多く、完全に受け入れられるにはもう少し時間がかかりそうである。
デジタル大辞泉
しっ‐しょう〔‐セウ〕【失笑】
[名](スル)思わず笑い出してしまうこと。おかしさのあまり噴き出すこと。「場違いな発言に―する」
[補説]文化庁が発表した平成23年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「こらえ切れず吹き出して笑う」で使う人が27.7パーセント、本来の意味ではない「笑いも出ないくらいあきれる」で使う人が60.4パーセントという逆転した結果が出ている。
失笑を買う
愚かな言動のために笑われる。「的外れな発言をして―・う」
しっ‐しょう〔‐セウ〕【失笑】 例文一覧 19件
・・・ が、その生徒が席に復して、先生がそこを訳読し始めると、再び自分たちの間には、そこここから失笑の声が起り始めた。と云うのは、あれほど発音の妙を極めた先生も、いざ翻訳をするとなると、ほとんど日本人とは思われないくらい、日本語の数を知ってい・・・<芥川竜之介「毛利先生」 青空文庫>
・・・僕は他意なく失笑した。翌る朝、青扇夫婦はたくさんの世帯道具をトラックで二度も運ばせて引越して来たのであるが、五十円の敷金はついにそのままになった。よこすものか。 引越してその日のひるすぎ、青扇は細君と一緒に僕の家へ挨拶しに来た。彼は黄色・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」 青空文庫>
・・・酒の瓶に十五等分の目盛を附し、毎日、きっちり一目盛ずつ飲み、たまに度を過して二目盛飲んだ時には、すなわち一目盛分の水を埋合せ、瓶を横ざまに抱えて震動を与え、酒と水、両者の化合醗酵を企てるなど、まことに失笑を禁じ得ない。また配給の三合の焼酎に・・・<太宰治「禁酒の心」 青空文庫>
・・・かつて叡智に輝やける眉間には、短剣で切り込まれたような無慙に深い立皺がきざまれ、細く小さい二つの眼には狐疑の焔が青く燃え、侍女たちのそよ風ほどの失笑にも、将卒たちの高すぎる廊下の足音にも、許すことなく苛酷の刑罰を課した。陰鬱の冷括、吠えずし・・・<太宰治「古典風」 青空文庫>
・・・、腹をかかえて大笑いしたのであるが、この雑誌の読者もまた、明日の鴎外、漱石、ゲエテをさえ志しているにちがいないのだから、このちっとも有名でないし、偉くもない作家の、おそろしく下等な叫び声には、さだめし失笑なされたことであろう。それでいいのだ・・・<太宰治「困惑の弁」 青空文庫>
・・・ など言って相擁して泣く芝居は、もはやいまの観客の失笑をかうくらいなものであろう。 さいきん私は、からだ具合いを悪くして、実に久しぶりで、小さい盃でちびちび一級酒なるものを飲み、その変転のはげしさを思い、呆然として、わが身の下落の取・・・<太宰治「酒の追憶」 青空文庫>
・・・ はじめこの家にやってきたころは、まだ子供で、地べたの蟻を不審そうに観察したり、蝦蟇を恐れて悲鳴を挙げたり、その様には私も思わず失笑することがあって、憎いやつであるが、これも神様の御心によってこの家へ迷いこんでくることになったのかもしれ・・・<太宰治「畜犬談」 青空文庫>
・・・れひとり得意でたまらず、文壇の片隅にいて、一部の物好きのひとから愛されるくらいが関の山であるのに、いつの間にやら、ひさしを借りて、図々しくも母屋に乗り込み、何やら巨匠のような構えをつくって来たのだから失笑せざるを得ない。 今月は、この男・・・<太宰治「如是我聞」 青空文庫>
男と女は、ちがうものである。あたりまえではないか、と失笑し給うかも知れぬが、それでいながら、くるしくなると、わが身を女に置きかえて、さまざまの女のひとの心を推察してみたりしているのだから、あまり笑えまい。男と女はちがうもの・・・<太宰治「女人創造」 青空文庫>
・・・生徒たちは顔を見合せて、失笑しました。私の老いたロマンチシズムが可笑しかったのかも知れません。 正門前で自動車から降りて、見ると、学校は渋柿色の木造建築で、低く、砂丘の陰に潜んでいる兵舎のようでありました。玄関傍の窓から、女の人の笑顔が・・・<太宰治「みみずく通信」 青空文庫>
・・・乗客の自分も失笑したが、とにかくこの流行言葉にはどこか若干の「俳諧」がある。 五 盲や聾から考えると普通の人間は二重人格のように思われるかもしれない。性格分裂者のように見えるかもしれない。時によって「眼の人」・・・<寺田寅彦「KからQまで」 青空文庫>
・・・彼の歿後ほとんど十年になろうとする今日、彼のわざわざ余のために描いた一輪の東菊の中に、確にこの一拙字を認める事のできたのは、その結果が余をして失笑せしむると、感服せしむるとに論なく、余にとっては多大の興味がある。ただ画がいかにも淋しい。でき・・・<夏目漱石「子規の画」 青空文庫>
・・・彼女は良人の仕うちが癪にさわり、憤りたいのだけれども、話されることが可笑しいので、笑うまい笑うまいとしてつい失笑するのであった。 昼餐の時は其でよかった。けれども、もっと皿数の多い、従ってもっと楽しかるべき晩食になると、彼は殆ど精神的な・・・<宮本百合子「或る日」 青空文庫>
・・・ ベルトンが、激しい彼女の誘惑に打勝とうとして苦しむのが、却って見物を失笑させるのは、一つは、イサベルの魅力が見物の心を誘惑するのに余り遠いからではないか。常識では、まあ何と云う風だろう、と呟きながらも、心が自ら眼を誘うような独特な魅惑・・・<宮本百合子「印象」 青空文庫>
・・・意志の不明瞭な林之助を、あきらめ切れないお絹の切な情が満ち溢れてこそ、最後の幕も引立ったのだが、肝心の処で見物を失笑させたのは惜しい。 勿論、宗十郎の林之助も甚だカサカサで、情味もなければ消極的な臆病さも充分出ていず、頻りにスースー息を・・・<宮本百合子「気むずかしやの見物」 青空文庫>
・・・ 二人は、女将が直ぐは笑いもせず、黒目をよせるような顔をして猶しげしげ自分の掌を見ているので、二重におかしく失笑した。女将は、彼等に身上話をきかせ、その中で、十九年前仲居をしていたとき一人の男を世話され、間もなくその男の児と二人放られて・・・<宮本百合子「高台寺」 青空文庫>
・・・虫はちゃんとそれを心得、必死の勢いで丹念に早業を繰返すのだ――私は終に失笑した。そして、その滑稽で熱烈な虫を団扇にのせ、庭先の蚊帳つり草の央にすててやった。「ずるや! だました気だな!」 きのうきょうは秋口らしい豪雨が降りつづい・・・<宮本百合子「この夏」 青空文庫>
・・・ 私は失笑しそうになったのを辛うやっと知らん顔をする。 だまって顔を見合わせた二人はそそくさと出て行って庭の中で雨にぬれながら押し出された様な声で笑って居た。 又私の居る処へ来て玄関の土間へ声をかける、「どうにかして、も・・・<宮本百合子「通り雨」 青空文庫>
・・・ 仲平は覚えず失笑した。そして孫右衛門の無遠慮なような世辞を面白がって、得意の笊棋の相手をさせて帰した。 お佐代さんが国から出た年、仲平は小川町に移り、翌年また牛込見附外の家を買った。値段はわずか十両である。八畳の間に床の間と廻・・・<森鴎外「安井夫人」 青空文庫>
笑ってはいけないところで、笑いをこらえていて、つい笑ってしまうことであるとする。
ニコニコ大百科の説明である。
失笑の失字の理解ができていないところを、解説ではわかりやすく言う。
失笑を買う この慣用句が場面においてわかりにくくなって、失笑を買う方の行為だけが強調されるようなことになってしまっているようである。
その行為に向けた笑いの捉え方の違いで、笑う側が笑いをこらえるだけになってしまったかのようである。
http://prmagazine.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2013_03/series_10/series_10.html
連載 「言葉のQ&A」
「失笑する」人は笑っているか 国語課
>では,「笑いも出ないくらいあきれる」と回答した人の割合が高くなっているのはなぜでしょうか。まず,先にも触れたように,「失」を「失う」と捉えて,「笑いを失う」様子だと受け取ってしまうということが考えられるでしょう。加えて,この言葉が「失笑を買う」という形でよく用いられる点も関係がありそうです。「失笑を買う」は「愚かな言行をして笑われる」という意味ですから,「あきれて笑われる」様子とも言えます。ほかにも「失笑が広がる」「失笑が漏れる」など,失笑は「あきれる」様子と結びついて使われることが多く,そのために,「笑いも出ないくらいあきれる」という意味の方を選んだ人が多くなっているのかもしれません。
同様の理由で,「失笑」を「愚かな言行に対する笑い」と受け取って,「冷笑」や「軽蔑の笑い」というような意味で使用する傾向もあるようです。
http://dic.nicovideo.jp/a/%E5%A4%B1%E7%AC%91
>
失笑とは、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の企画である、「笑ってはいけない」シリーズにおいてアウトとなる行為のことである。
概要
自身の意思に反し、思わず噴き出して笑ってしまう、堪えきれず笑ってしまうということである。
「失」という漢字には「不随意的に、意思に反して」というような、"意図せずに"という意味がある。同様な用法としては、「失禁」、「過失」などが挙げられる。
しばしば「失笑を買う」という表現がなされるが、これは何らかの行為が期待されるべき結果とは異なる結果が生じたことによって笑われてしまい、恥ずかしい思いをするということを意味する。ここからか派生してか、現在では「失笑」単体でも、嘲笑や冷笑といった意味合いが強くなっている。誤用とされることも多いが、笑ってしまったのには違いないのだから、これを誤用と言い切ってしまうのはいささか大人気ない。
一方「失」という漢字を「うしなう、なくす」と解釈し、「(ウケを狙っても)笑いがとれない」、「座が冷める、呆れて水を打ったように静かになる」など、"笑うという行為が発生しない状況"を指すことも多い。2011年の文化庁の「国語に関する世論調査」ではおよそ6割の人がこちらの意味を支持しているが、誤用とされることも多く、完全に受け入れられるにはもう少し時間がかかりそうである。
デジタル大辞泉
しっ‐しょう〔‐セウ〕【失笑】
[名](スル)思わず笑い出してしまうこと。おかしさのあまり噴き出すこと。「場違いな発言に―する」
[補説]文化庁が発表した平成23年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「こらえ切れず吹き出して笑う」で使う人が27.7パーセント、本来の意味ではない「笑いも出ないくらいあきれる」で使う人が60.4パーセントという逆転した結果が出ている。
失笑を買う
愚かな言動のために笑われる。「的外れな発言をして―・う」
しっ‐しょう〔‐セウ〕【失笑】 例文一覧 19件
・・・ が、その生徒が席に復して、先生がそこを訳読し始めると、再び自分たちの間には、そこここから失笑の声が起り始めた。と云うのは、あれほど発音の妙を極めた先生も、いざ翻訳をするとなると、ほとんど日本人とは思われないくらい、日本語の数を知ってい・・・<芥川竜之介「毛利先生」 青空文庫>
・・・僕は他意なく失笑した。翌る朝、青扇夫婦はたくさんの世帯道具をトラックで二度も運ばせて引越して来たのであるが、五十円の敷金はついにそのままになった。よこすものか。 引越してその日のひるすぎ、青扇は細君と一緒に僕の家へ挨拶しに来た。彼は黄色・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」 青空文庫>
・・・酒の瓶に十五等分の目盛を附し、毎日、きっちり一目盛ずつ飲み、たまに度を過して二目盛飲んだ時には、すなわち一目盛分の水を埋合せ、瓶を横ざまに抱えて震動を与え、酒と水、両者の化合醗酵を企てるなど、まことに失笑を禁じ得ない。また配給の三合の焼酎に・・・<太宰治「禁酒の心」 青空文庫>
・・・かつて叡智に輝やける眉間には、短剣で切り込まれたような無慙に深い立皺がきざまれ、細く小さい二つの眼には狐疑の焔が青く燃え、侍女たちのそよ風ほどの失笑にも、将卒たちの高すぎる廊下の足音にも、許すことなく苛酷の刑罰を課した。陰鬱の冷括、吠えずし・・・<太宰治「古典風」 青空文庫>
・・・、腹をかかえて大笑いしたのであるが、この雑誌の読者もまた、明日の鴎外、漱石、ゲエテをさえ志しているにちがいないのだから、このちっとも有名でないし、偉くもない作家の、おそろしく下等な叫び声には、さだめし失笑なされたことであろう。それでいいのだ・・・<太宰治「困惑の弁」 青空文庫>
・・・ など言って相擁して泣く芝居は、もはやいまの観客の失笑をかうくらいなものであろう。 さいきん私は、からだ具合いを悪くして、実に久しぶりで、小さい盃でちびちび一級酒なるものを飲み、その変転のはげしさを思い、呆然として、わが身の下落の取・・・<太宰治「酒の追憶」 青空文庫>
・・・ はじめこの家にやってきたころは、まだ子供で、地べたの蟻を不審そうに観察したり、蝦蟇を恐れて悲鳴を挙げたり、その様には私も思わず失笑することがあって、憎いやつであるが、これも神様の御心によってこの家へ迷いこんでくることになったのかもしれ・・・<太宰治「畜犬談」 青空文庫>
・・・れひとり得意でたまらず、文壇の片隅にいて、一部の物好きのひとから愛されるくらいが関の山であるのに、いつの間にやら、ひさしを借りて、図々しくも母屋に乗り込み、何やら巨匠のような構えをつくって来たのだから失笑せざるを得ない。 今月は、この男・・・<太宰治「如是我聞」 青空文庫>
男と女は、ちがうものである。あたりまえではないか、と失笑し給うかも知れぬが、それでいながら、くるしくなると、わが身を女に置きかえて、さまざまの女のひとの心を推察してみたりしているのだから、あまり笑えまい。男と女はちがうもの・・・<太宰治「女人創造」 青空文庫>
・・・生徒たちは顔を見合せて、失笑しました。私の老いたロマンチシズムが可笑しかったのかも知れません。 正門前で自動車から降りて、見ると、学校は渋柿色の木造建築で、低く、砂丘の陰に潜んでいる兵舎のようでありました。玄関傍の窓から、女の人の笑顔が・・・<太宰治「みみずく通信」 青空文庫>
・・・乗客の自分も失笑したが、とにかくこの流行言葉にはどこか若干の「俳諧」がある。 五 盲や聾から考えると普通の人間は二重人格のように思われるかもしれない。性格分裂者のように見えるかもしれない。時によって「眼の人」・・・<寺田寅彦「KからQまで」 青空文庫>
・・・彼の歿後ほとんど十年になろうとする今日、彼のわざわざ余のために描いた一輪の東菊の中に、確にこの一拙字を認める事のできたのは、その結果が余をして失笑せしむると、感服せしむるとに論なく、余にとっては多大の興味がある。ただ画がいかにも淋しい。でき・・・<夏目漱石「子規の画」 青空文庫>
・・・彼女は良人の仕うちが癪にさわり、憤りたいのだけれども、話されることが可笑しいので、笑うまい笑うまいとしてつい失笑するのであった。 昼餐の時は其でよかった。けれども、もっと皿数の多い、従ってもっと楽しかるべき晩食になると、彼は殆ど精神的な・・・<宮本百合子「或る日」 青空文庫>
・・・ ベルトンが、激しい彼女の誘惑に打勝とうとして苦しむのが、却って見物を失笑させるのは、一つは、イサベルの魅力が見物の心を誘惑するのに余り遠いからではないか。常識では、まあ何と云う風だろう、と呟きながらも、心が自ら眼を誘うような独特な魅惑・・・<宮本百合子「印象」 青空文庫>
・・・意志の不明瞭な林之助を、あきらめ切れないお絹の切な情が満ち溢れてこそ、最後の幕も引立ったのだが、肝心の処で見物を失笑させたのは惜しい。 勿論、宗十郎の林之助も甚だカサカサで、情味もなければ消極的な臆病さも充分出ていず、頻りにスースー息を・・・<宮本百合子「気むずかしやの見物」 青空文庫>
・・・ 二人は、女将が直ぐは笑いもせず、黒目をよせるような顔をして猶しげしげ自分の掌を見ているので、二重におかしく失笑した。女将は、彼等に身上話をきかせ、その中で、十九年前仲居をしていたとき一人の男を世話され、間もなくその男の児と二人放られて・・・<宮本百合子「高台寺」 青空文庫>
・・・虫はちゃんとそれを心得、必死の勢いで丹念に早業を繰返すのだ――私は終に失笑した。そして、その滑稽で熱烈な虫を団扇にのせ、庭先の蚊帳つり草の央にすててやった。「ずるや! だました気だな!」 きのうきょうは秋口らしい豪雨が降りつづい・・・<宮本百合子「この夏」 青空文庫>
・・・ 私は失笑しそうになったのを辛うやっと知らん顔をする。 だまって顔を見合わせた二人はそそくさと出て行って庭の中で雨にぬれながら押し出された様な声で笑って居た。 又私の居る処へ来て玄関の土間へ声をかける、「どうにかして、も・・・<宮本百合子「通り雨」 青空文庫>
・・・ 仲平は覚えず失笑した。そして孫右衛門の無遠慮なような世辞を面白がって、得意の笊棋の相手をさせて帰した。 お佐代さんが国から出た年、仲平は小川町に移り、翌年また牛込見附外の家を買った。値段はわずか十両である。八畳の間に床の間と廻・・・<森鴎外「安井夫人」 青空文庫>