日本語文法議論2384
日本語の文例を抽出し分析する。その場合に、文章は次のようである。日本語文章の文単位に見る文法は、その文例を形式に捉え、意味内容を情報の単位にする。その文の構造には係り受けのまとまりが繰り返し現れているので、単純化する例文の引用には注意がいるだろう。たとえれば組木細工を分解するようである。
>1930〜40年代ごろの日本では、親しみやすい管弦楽曲がたくさん生まれた。戦後難しい前衛音楽に押されたこともあり、長らく日の目を見ていない作品は多い。オーケストラで長年コントラバスを弾いてきた私は、管弦楽曲を中心に埋もれた楽譜を発掘、浄書してパート譜を作り、蘇演する手助けをしている。 2023 0804付け日経新聞文化面より 戦前の管弦楽曲に光を 埋もれた楽譜を発掘し蘇演へ
区切り符号で3つの文がある。冒頭の段落で次を述べている。
管弦楽曲が 生まれた 1930〜40年代ごろの日本
前衛音楽に押された 戦後
作品は多い 日の目を見ていない
コントラバスを弾いてきた オーケストラで長年
私は
楽譜を発掘 浄書し 譜を作り
蘇演する手助けをしている
蘇演という語はよみがえらせる演奏を意味する用語である。タイトルに文章の内容があらわされている。
引用した文章の中に、-は―が構文の形をとるパターンが見える。
さて、文例に創作があってそれを議論することが行われる。用例を採取して文例を帰納するという方法と、こういう文例があるだろうと資料から捜索して文例をつくり出す。議論はその先にあるのでその文例の妥当性が議論内容を左右する。とくに例文として採用するときには論者の思惑が働く。そのうえで論理が作られている。
例文をあげてみる。
象は 動物である
←長い鼻が特徴である
←鼻が長いのである
象は鼻が長い動物である
この例文を操作すれば、次の文が産出する。
象は鼻が長いのである ということができる
象は 鼻が長い
形容詞で言い切る文は感動の用法で、言い話す、言い放つことはできなかったのであるから、
象は鼻が長いのよ
象は鼻が長いこと
この言葉を聞けば、文末に感嘆をつけるか、体言止めのように表現することになる。
象は鼻が長いです
という言い方は、
象は鼻が長いのです
となるべきで、口頭語での、ですます調に合わせた言い方は1952年に注意されている。
文化庁、これからの敬語において、パンフレットで表現法を認めている。
象は鼻が長い といえば、これはこと足らずであった。
この部屋は暑いよ (なぜ、どう、なに)
このラーメンはおいしいよ (なぜ、どう、なに)
この象は長いよ (なぜ どう、なに)
というような表現法である。
この部屋が暑い
このラーメンがおいしい
*この象が長い
象さん象さん お鼻が長いのね と、歌っていれば、そうよ かあさんも長いのよと聞こえて、そこからもし、象は鼻が長い と言ってしまえば、1950年代で漸く、象は鼻が長いですね というような言い方が時代の推移で一般的なのである。