個人、また、一個人である。個字を、箇とすれば、一箇人の意味も現れる。大衆と個人、そこで、個人主義の語が連想できる。それは、個人と集団の対比であったかのようであるが、それは集団主義としての対である。しかし、その主義の対立はない。西洋に個人主義があり、日本には集団主義があるとするのは時代もイデオロジーも異なる。個人主義が西欧思想の神と人との対比であること、ニーチェによるが、個人主義を唱えたわけではない。個人そのものの目覚めであるから、近代市民社会の原理となる。この個人主義で思い合わせることが、夏目漱石の個人主義、私の、とついた講演である。思いでのうちに、ふれてきたが、文芸春秋社が文学全集を編んで出した夏目漱石にはこの、私の個人主義がおさめられた。編集者に江藤淳がなっていたので、その選による。わたしの思い出には、則天去私が、漱石が揮毫した、即天夫私、かと、その思いを知る高校時代までさかのぼるから、その個人主義におどろいたことがある、漱石の個性であった。
こ‐じん【個人】の意味
出典:デジタル大辞泉(小学館)
1 国家や社会、また、ある集団に対して、それを構成する個々の人。一個人。「個人の意思を尊重する」
2 所属する団体や地位などとは無関係な立場に立った人間としての一人。私人。「私個人としての意見」
[補説]英語 individuale の訳語は「一個の人」から「一個人」を経て明治中期、「個人」に定まったらしい。
日本国語大辞典
こじん‐しゅぎ 【個人主義】
解説・用例
〔名〕
(1)({英}individualism の訳語)
個人の意義と価値を重視し、個人の権利や自由を尊重する考え方。ルネサンスや宗教改革を経て、個人の価値が自覚され、さらに近代の資本主義の発達により個人の自由競争を重んずることから、広く定着するようになった。
*春迺屋漫筆〔1891〕〈坪内逍遙〉壱円紙幣の履歴ばなし・六「要するに個人主義(コジンシュギ)は危険なる事あり、殊に地球の何処にか螺旋根(タブルート)をもたぬ愛情は油断のならぬ者なり。私欲の骨頂なればなりと」
*文明批評家としての文学者〔1901〕〈高山樗牛〉一「而かも最も純粋なる個人主義の本色を発揮し来りたるを見る」
*吾輩は猫である〔1905〜06〕〈夏目漱石〉九「いくら個人主義が流行る世の中だってかう町々に我儘を尽くされては持主の迷惑は左こそと思ひやられる」
(2)教育で、各人の個性をのばすことを主眼とする教え方。個性尊重の教育方針。
(3)経済活動で、個人の自由競争が経済を発展させるために最も有効なものとし、国家の干渉や統制などを否定する考え方。
(4)他人のことを考えないで、自分個人のことだけのために行動する考え方。利己主義。
*女工哀史〔1925〕〈細井和喜蔵〉一九・六五「彼女達を取り残して我れ独り先へ進まふとする同胞があったら、それは己れよがりの憎むべき個人主義者であってブルジョアヂーと何等選を異にするところがない」
個
自分と他人と、個と個とが対立する。個人とは他人である。その個と他とはお上の前のコとコとである。おかみ、御上と言った場合、その意味には、デジタル大辞泉より、まず天皇の敬称であるし、次......
2017-10-21 16:16:26 | 日本・日本人
自分と他人と、個と個とが対立する。個人とは他人である。その個と他とはお上の前のコとコとである。おかみ、御上と言った場合、その意味には、デジタル大辞泉より、まず天皇の敬称であるし、次に朝廷、幕府や政府など、時の政治を執り行う機関となる。古代の天皇によるか、また、為政者をさすのは、律令制度の長官をそう呼んだことにある。
日本人の個性
2016-10-20 07:53:16 | 日本・日本人
日本人を語るのにその性質は何か。ま本質を問うことがある。そのひとつに、個性をとらえる。個は集と対比される。あるいはほかの個との対比である。それを個として自覚するのはたやすいことではない。個は自らにあって、それを知ることは、たとえば鏡に移る姿を見てあれこれと思うほかはない。そこに写る自己はそのままである。個性を書くブログに自らを知ろうとして他をまね、近づこうとする努力に限界をもって、ふと気づきがあったことを述べている。その日本人の個性と思い至ることはなんであったか。