そつのない 慣用句になるが、現代語で、そつがない と用いると、その そつ とはなにか、あること、ないこと、という言意味内容であるが、慣用の言い回しには、そつが出る そつをする というのが見える。そつなる人 と言いう用例が16世紀に見える。それから、現代語の使い方には、慣用的な言い方となって、話ことばであったか。損失を意味する意味合いが庶民にあったか。そつがあるのは、果たしてどういう意味になるか、打消しとなる言い方の、表に返すような意味になるようなことではない。
以下、日本国語大辞典の用例による。
言継卿記‐大永八年〔1528〕正月一九日至二一日紙背(女房消息)「くちがかうそつなる人にて候」
雑俳・西国船〔1702〕「うちつけて・猟師の鉄炮そつがない」
談義本・教訓雑長持〔1752〕四・遍参僧精霊に出会し事「なる程。親仁様のいわしゃる所に、少もそつは御座らぬ」
和訓栞〔1777〜1862〕「そつ 俗に費の事に云ふは、損墜の音成べし」
和英語林集成(初版)〔1867〕「Sotsz (ソツ)ガ デル」
打消しを伴って用いるのは、次である。
言動にておちがない。ぬけめがない。むだがない
腕くらべ〔1916〜17〕〈永井荷風〉一一「土地の老妓を呼集めてよろしく頼むぜと云ったやうなソツのない仕方」
*春泥〔1928〕〈久保田万太郎〉三羽烏・三「何をさせても決してソツがなかったから」
*夢の浮橋〔1970〕〈倉橋由美子〉華燭「宮沢は媒酌人としてそつのないことをしゃべり」
デジタル大辞泉
そつ
1 手抜かり。手落ち。「―のない答え」
2 むだ。むだな費用。
「―ガ出ル」〈和英語林集成〉