日本文法文章論 好雨

日本語文章の解析である。20140412コラム天声人語である。
桜を話題にしている。

引用は、～とは、～では、～は、というふうに、説明が加わる。
散る桜について、古歌を引き、次いで、涙に及ぶ。

起筆には、空知らぬ雪のように散る桜と、空知らぬ雨のたとえである涙であって、承筆に至ると、それを承けたのは、空の仕業ならぬ人工衛星である。
空の観測が降雨の予報へと展開する。

転筆であるが、雨が降る地域と降らないそれと、それは温暖化のせいであるか、結筆には人間への技に結ぶ。
人の営みにに思いをはせるのであろう。

降雨は、好い雨のこと、詩人の句をひき、名文句を乱調の空に訴えようとする。

文字数640字余り、全6文段構成、22文のうちに、は助辞についての出現は、15である。主題主語の表現法に、主格主語が際立つ働きをしている。



第1文段　4文
「落花（らっか）の雪」とは
東京では
〈桜散る木の下風は寒からで空に知られぬ雪ぞ降りける〉は

第2文段　3文
これは
〈空しらぬ雨にも濡るるわが身かな三笠の山をよそに聞きつつ〉は
人の営みは

第3文段　3文
雨や雪は
時は
「全球降水観測衛星」は

第4文段　4文
さまは
空は
予報は

第5文段　3文
世界は
地域は

第6文段　5文　引用1含む
よい雨は



天声人語
2014年4月12日（土）付

　「落花（らっか）の雪」とはよくぞ言ったものと、桜の樹下を歩いて思った。東京ではここ数日しきりに降った。「空知らぬ雪」「空に知られぬ雪」という雅（みやび）やかな言葉もあり、これも散る桜をいう。〈桜散る木の下風は寒からで空に知られぬ雪ぞ降りける〉は平安歌人、紀貫之の一首である

「空知らぬ雨」という言葉もあって、これは涙のこと。後撰集の〈空しらぬ雨にも濡るるわが身かな三笠の山をよそに聞きつつ〉は恋歌の項にある。花にくらべて人の営みは人くさい

ほんものの雨や雪は、空が降らす。十二単（じゅうにひとえ）の昔から時は流れ、降雨の様子を立体的にとらえた詳細な画像が人工衛星から送られてきた。新しい「全球降水観測衛星」は２月に打ち上げられ、精度が自慢という

発達した低気圧が強い雨を降らすさまは、万の蛇口がいっせいに開いたようだ。近年の空は乱調が目立つ。降れば大雪、豪雨で、予報は難しい。欧米の衛星と国際観測網を敷いて、天気予報の精度向上や防災への貢献が期待されている

世界は均（なら）すと年に千ミリ弱の降水があるが、豪雨と干ばつが偏（かたよ）る。強い雨がより狭い地域で降る一方で、降らない地域は広がる傾向が進む。温暖化の影響が無視できないらしい

「好雨」という言葉が杜甫の詩にある。〈好雨時節を知り、春に当たりて乃（すなわ）ち発生す……〉。よい雨は時をこころえ、春になると降りだして万物を潤す。乱調の空に読んで聞かせたくなる名文句である。温暖化を防ぐべく、人間がかみしめるべきか。