タイトルからして、唐突な感じを持たれた方もおられることと思います。
実は遠藤周作氏晩年の大作「深い河」には、「玉ねぎ」という言葉が何回もでてきます。
数年前、インド理解の一助にと、この本を読んだことでした。
キリスト教信者だった遠藤氏。氏自身の宗教観が凝縮された小説。
小説の最終舞台はガンジス川。キリスト教も含めた、もろもろを呑み込んでしまう深い河。
宗教については恥ずかしき限りの自分が、宗教論を展開する資格などありません。
たまたまこの小説と“玉ねぎ”のことが、読売新聞の「食べものがたり」
という特集欄(ネット版)で紹介されていました。
記者さんが、玉ねぎの生産地、南あわじ市を訪ねたリポートのなかでです。
ご一読いただければ幸いです。 以下、コピーします。(写真は略)
タマネギ(兵庫・南あわじ市) 文豪も うなる球体
<ガンジス河を見るたび、ぼくは玉ねぎを考えます>
どういう意味だ。何か悪い冗談か? と、首をひねる人が多かろう。
映画化もされた遠藤周作の小説「深い河」に感動した人なら別だが。
ぶざまなまでに愚直な落ちこぼれ神学生「大津」は、ガンジス川で死体を運ぶ仕事をしている。
かつて彼を誘惑しもてあそんだ「美津子」は、それぞれに悩みを抱える人々とインドツアーに参加して大津と再会。
そこで彼が口にするのが冒頭の言葉だ。
どんな死者の灰をも、分け隔てなくのみこんで流れる大河に彼が感じる「玉ねぎ」は「神」の代名詞。
この符丁が生まれた時、トマトでも何でもいいと言う大津に対して美津子(というより作者)はタマネギを選んだ。
かくて「深い河」は文学史上、タマネギの登場回数で群を抜く。しかしなぜタマネギなのか。
ドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラスが第2次世界大戦末期、ナチスの武装親衛隊員だったことを告白して波紋を投げたのは3年前。
自伝の題名は「玉ねぎの皮をむきながら」だ。
1枚むくごとに露呈する己の過去……どうも、他の野菜とは違う何かがタマネギにはありそうだ。
「今年は、不作いうわけやないが少~しコンマイ(小さい)な」と、南あわじ市でタマネギを栽培する野口節子さん(79)。
夫の計彦(かずひこ)さん(83)が古い写真を見せてくれた。
昭和30年代、佐賀県の農業研修団に栽培を指導する自分の姿に「こん時から佐賀の農家は頑張りよってなァ」。
南あわじ市は4年前、淡路島南部の4町が合併して生まれた。
兵庫県のタマネギ生産量は北海道、佐賀県に次ぐ3位だが、味に定評がある南あわじ産は東京のスーパーでもよく目にする。
皮をむく人に内省を促し、最後までむき続けると「無」が現れるタマネギ。切れば、泣きたくなくても涙が止まらなくなるタマネギ。
黄金色の球体には、確かにどこか神秘的な気配が感じられなくもない。
うまくいくかどうか、この不思議な野菜の本質を考えてみようと思う。
(文・永井一顕)
(2009年9月24日 読売新聞)
(コピー終わり)
実は遠藤周作氏晩年の大作「深い河」には、「玉ねぎ」という言葉が何回もでてきます。
数年前、インド理解の一助にと、この本を読んだことでした。
キリスト教信者だった遠藤氏。氏自身の宗教観が凝縮された小説。
小説の最終舞台はガンジス川。キリスト教も含めた、もろもろを呑み込んでしまう深い河。
宗教については恥ずかしき限りの自分が、宗教論を展開する資格などありません。
たまたまこの小説と“玉ねぎ”のことが、読売新聞の「食べものがたり」
という特集欄(ネット版)で紹介されていました。
記者さんが、玉ねぎの生産地、南あわじ市を訪ねたリポートのなかでです。
ご一読いただければ幸いです。 以下、コピーします。(写真は略)
タマネギ(兵庫・南あわじ市) 文豪も うなる球体
<ガンジス河を見るたび、ぼくは玉ねぎを考えます>
どういう意味だ。何か悪い冗談か? と、首をひねる人が多かろう。
映画化もされた遠藤周作の小説「深い河」に感動した人なら別だが。
ぶざまなまでに愚直な落ちこぼれ神学生「大津」は、ガンジス川で死体を運ぶ仕事をしている。
かつて彼を誘惑しもてあそんだ「美津子」は、それぞれに悩みを抱える人々とインドツアーに参加して大津と再会。
そこで彼が口にするのが冒頭の言葉だ。
どんな死者の灰をも、分け隔てなくのみこんで流れる大河に彼が感じる「玉ねぎ」は「神」の代名詞。
この符丁が生まれた時、トマトでも何でもいいと言う大津に対して美津子(というより作者)はタマネギを選んだ。
かくて「深い河」は文学史上、タマネギの登場回数で群を抜く。しかしなぜタマネギなのか。
ドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラスが第2次世界大戦末期、ナチスの武装親衛隊員だったことを告白して波紋を投げたのは3年前。
自伝の題名は「玉ねぎの皮をむきながら」だ。
1枚むくごとに露呈する己の過去……どうも、他の野菜とは違う何かがタマネギにはありそうだ。
「今年は、不作いうわけやないが少~しコンマイ(小さい)な」と、南あわじ市でタマネギを栽培する野口節子さん(79)。
夫の計彦(かずひこ)さん(83)が古い写真を見せてくれた。
昭和30年代、佐賀県の農業研修団に栽培を指導する自分の姿に「こん時から佐賀の農家は頑張りよってなァ」。
南あわじ市は4年前、淡路島南部の4町が合併して生まれた。
兵庫県のタマネギ生産量は北海道、佐賀県に次ぐ3位だが、味に定評がある南あわじ産は東京のスーパーでもよく目にする。
皮をむく人に内省を促し、最後までむき続けると「無」が現れるタマネギ。切れば、泣きたくなくても涙が止まらなくなるタマネギ。
黄金色の球体には、確かにどこか神秘的な気配が感じられなくもない。
うまくいくかどうか、この不思議な野菜の本質を考えてみようと思う。
(文・永井一顕)
(2009年9月24日 読売新聞)
(コピー終わり)
おそらく歴史に残る日に「玉ねぎ論」拝読。
人間の欲望はどこから来るのでしょかねー。
「無」に帰れないところが「原罪」か。
我 ワカラン。 庭の草むしり 臭い 根で居住権を主張している「ゲンノショコ」と無信に
格闘中。